根っからのデイヴィッド・クローネンバーグ監督ファンを自認するワタクシですが、この「ザ・ブルード/怒りのメタファー」は見た記憶がなかったのですね~。それが先週「コズモポリス」公開記念で新宿武蔵野館で上映中と知り、慌てて最終日に駆けつけました。文字通り、上映直前の駆け込み。劇場はほぼ満席。これは果たして熱意あふれるクローネンバーグか、それともうっかりその気になって(「コズモポリス」の半券提示すると千円で鑑賞できるので)入ってしまったロバート・パティンソンファンか、どっちなんでしょう? いや、意外と若い女性も多かったので。何も知らずにクローネンバーグ作品見て(初期作品は大抵相当グロいのよ)大丈夫なんかいな、といらぬ心配したりして。
ま、心配は無用でしたね!
だってこれ、女性なら誰もが心の底で思っていることを映像でハッキリと示してくれた作品でしたもの。女性が見て共感しないわけはない。
「ザ・ブルード/怒りのメタファー」が伝えていること、すなわち
「女が完全に頭にきている時は、男は全力をあげて謝れ! 自分(男)に落ち度があろうとなかろうと、そんなことは問題ではない。理非など説かずにただひたすら謝れ!! そうしない限り、女の怒りが収まることは決してない!!!」
でございました。
いや、男性の目からすると「怒り狂ってる女は手が付けられん……」と言ってるだけに思えるかもしれませんが、私はこの映画に真理を見ましたね。女が一度心の底から誰かに対して腹を立てたら、もはやその理由なんてどうでもよくて、怒りだけがただ心の中に渦巻いて出口を探して激しく葛藤するのですよ。「もはや理由なんてどうでもよくて」とにかく怒っているわけですから、男が「それは誤解だ」とか「怒っている理由が理不尽だ」とか説明したところで耳を貸すわけがない。女の怒りを静めたいなら、男は説得しようとなどせずただただ低姿勢に徹して謝るしかないのです。
でも男にはそれが理解できないから、男女の仲は壊れるのですわ。
で、その壊れ方がクローネンバーグだったのでした。でも彼の作品にしては大してグロくなかったですね。恐いことは真剣に恐かったですが。
作品の傾向としては「スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする」なんかに近いでしょうか。私が見ながら思い出していたのは「イグジズテンズ」でしたが、これは最近ジュード・ロウを見たせいだったかも……。
「ブルード」はある意味、女性にとっては小気味のいい作品でした。男性が見ると、女性が感じるよりもっとずっと恐く感じるのでしょうか? でもそれは作品の恐さではなく、女性に対する恐怖を覚えるからでしょうね。男性が女性に抱く根源的な畏れというものも表現されていたように思えます。
音楽はクローネンバーグ作品ではおなじみのハワード・ショア。「ブルード」ではヒッチコックの「サイコ」にインスパイアされたような曲調がメインですが、「ロード・オブ・ザ・リング」に代表されるような和音と不協和音の美しいオ―ケストレーションはこの頃からしっかり聞かせてくださってました♪
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