台湾の俊英監督が語る役者・安藤政信のプロ意識(ぴあ映画生活) - Y!ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130430-00000005-piaeiga-movi
本国を皮切りに世界各国で大反響を呼んだ台湾の歴史大作『セデック・バレ』。台日の歴史を背景にした本作は、安藤政信ら日本人俳優が多数参加するなど、製作においても日本と深い関わりを持つ。「日本での公開は念願だった」と話すウェイ・ダーション監督が、その喜びと作品への想いを語ってくれた。
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2部構成、4時間36分というダーション監督のまさに“情熱”が伝わる本作は、1895年から50年間続いた日本統治時代の台湾で、原住民のセデック族が自らの誇りをかけて起こした武装蜂起「霧社事件」の映画化。第1部の『太陽旗』では、日本軍によりすべてを制圧されたセデック族の人々が尊厳をかけて決起するまでが、第2部『虹の橋』では、圧倒的な軍事力を誇る日本軍を前に、やがて迎える彼らの悲劇が描かれている。訊くと長年温めて企画だったそうだ。「この作品の出発点は事件に関する漫画を読んだ1997年のこと。構想から完成まで10年以上の月日がかかりました。2011年9月にヴェネチア国際映画祭でワールドプレミア上映されたときは感無量でしたね」。
そして迎えた今回の日本公開。これも深い意味を持つという。「台湾には日本統治時代があり、いまだに消えない“わだかまり”や“しこり”がどこかにある。前作『海角七号 君想う、国境の南』も今回も実はそうなのですが、作品を通して、日本と台湾の人々の相互理解が深まれば、これほどうれしいことはない。日本での公開は重要で感慨深いものがあります」。作品には日本の俳優も多数出演。その中のひとり、安藤政信の起用についてはこう語る。「安藤さんの演じた小島源治巡査は原住民を理解しながらも、事件で家族を殺され、そこから豹変していく。この二面性を演じ切れて、なおかつ単なる悪人ではなく同情の余地を残す人物になれる役者を私は求め、たどり着いたのが安藤さんでした。セデックの言葉をマスターする必要があったのですが、安藤さんは勉強熱心で。こちらが用意したテキストでは足りず、直接レッスンを受けられるよう日本留学中のセデック出身の若者を紹介しました。ストイックな役者さんで、その高いプロ意識には頭が下がりましたね」。
「これからも日本と台湾の人々の心と映画界をつなぐ役割を担えたらうれしい」と語るダーション監督。実は次回作も日本と台湾の関わりを描き、永瀬正敏、大沢たかおら多くの日本人俳優が出演する予定だ。世界が注目する台湾の若き俊英の渾身作に注目したい。
『セデック・バレ 第一部 太陽旗』
『セデック・バレ 第二部 虹の橋』
公開中
取材・文・写真:水上賢治