「モネ・ゲーム」公式サイト
コリン・ファースとキャメロン・ディアス、それにアラン・リックマンにスタンリー・トゥッチまで出ているというので行って参りました。当初はさほど興味があったわけじゃなかったのですが、予告やインタビュー動画でキャストの演技を見てたらこれは行かなきゃと思えて来ちゃって。
そしたらもう、大正解!
こんなに楽しい映画だったとは!
冒頭、序曲の如く「ピンクパンサー」を彷彿とさせるようなアニメがずっと流れてるのですが、これがまた超可愛いの! 取り澄ましたアゴを絶対崩さないコリン・ファースとか、目のアブないキャメロン・ディアスとか、見るからに横柄なアラン・リックマンとか、居るだけで怪しいスタンリー・トゥッチとか、もう俳優とキャラの特徴を見事にとらえたアニメーションにくすくす笑っている内にモノローグが始まって映画の開幕となるのですが、最初に笑ってキュッと上にあがった口角がそのまんまの形で映画が終わるまで続いてましたよ。
「モネ・ゲーム」は1967年の「泥棒貴族」という作品のリメイクなんだそうですが(ここに至るまでにすったもんだがあったらしい)、マイケル・ケインが主演を努めたというオリジナル、たぶんうんと昔にテレビで見てるんでしょうが内容は全く記憶になかったので、完全に新鮮な気持ちで見られたのもよかったんだと思います。
そんな半世紀も前の映画を元にしているせいか、はたまた英国で英国紳士が活躍する作品だからなのか、古典的というか古風といってもいいぐらいのコメディなのですが、この上品さが今は嬉しいのです。なにしろ「ジャッキー・コーガン」見たあとなので。ええ、この監督には「モネ・ゲーム」を見てコメディがなんたるかを勉強して欲しいですよ。そういえば脚本がコーエン兄弟なのでした、「モネ・ゲーム」。
この映画の中でひどい目にあって観客の笑いを誘うのは主にコリン・ファースの役目なのですが、彼の「内心ではパニックをおこすぐらい慌てふためいているのに、傍目には全くそうは見えないぐらいに外見を完璧に取り繕う」という演技が実に見事に生かされておりました。や、これぞコリン・ファースですわ。何が起こっても取り澄ました顔をしてその場をしのぐコリンを見ているだけでも笑えます。同じ演技をしているマイケル・ケインを想像しても笑えますが、コリンの方がより余裕がないイメージかな? 切羽詰まって背中に冷や汗かいて、それでも何事もなかったように表面は泰然自若と振る舞っている、そのギャップの激しさが笑いを呼ぶのですよ。いやコリン・ファース、好きだわあ♪
そしてキャメロン・ディアス! 天真爛漫だけど実は切れ者。ここぞという時に体を張れる、彼女の度胸と機転の速さがよいのですね♪ アニメーションでは不自然なくらい口を大きく描かれているんですが、でも本編を見ると彼女のその大きな口が魅力なんですよね~。笑うと顔全部が笑顔になるんだもの。あれには誰も勝てませんわ~~。
この二人のサボイホテルでのシークエンスが秀逸で! 古めかしいとも言えるほどのシチュエーションコメディなんですが、舞台がサボイだからこそ成立するんでしょうな。脇を固める俳優さん達もしっくりはまっていて、思い出すだけで笑えて来ちゃいます。
ところでこれも一応人間の尊厳に関わりがある物語となっております。コリン・ファース演じるハリー・ディーンが雇い主のシャバンダ―(アラン・リックマン)に一泡吹かせてやりたいと思うようになったのはそこに原因がありましたので。
アラン・リックマンは「ダイ・ハード」でも「ハリー・ポッター」でもそうでしたが、やたら尊大に偉そうにしてると似合うのですよね。だからもう、シャバンダ―を演じる彼はまさに水を得た魚。こんなに楽しそうに傲慢で横柄でイヤなヤツを演じられる俳優さんもそうはいませんね。
スタンリー・トゥッチはそのシャバンダ―に取り入るドイツ人の鑑定家マーティン。スタンリー・トゥッチは自分の醸し出す胡散臭さを自由自在に操れる人なのですが、今回もそれが絶妙なブレンドで、彼のそぶりを見ているだけでも笑いがこみ上げて参ります。
もう一人重要な登場人物がおりまして、それがモノローグを努める少佐。ハリーの友人なのですが、この二人は親子ほどもトシが離れているのですよ。だから少佐は時として父のような慈愛を目に浮かべつつハリーを見守り、彼に言われたとおり何でもやりつつ、言いたいことはちゃんと言ってるんですよね。この二人には「絵画」という共通の興味の対象があって、それを介して深くつながっているのでしょう。少佐を演じたのはキャメロン・ディアスがベタ惚れしたというトム・コートネイ。いや、ステキなお爺様でした♪
モネは日本人にも人気ですが、その事実が作品中に活用されてるんですよね。ここに出てくる「日本人」、いいですよ~~~。
「モネ・ゲーム」にはモネに限らず全編に渡って絵がたくさん出て参ります。絵画、特に印象派好きにとってはそれだけでも眼福もの。シャバンダ―のコレクションはなかなかのものなので、そのシーンが出てきたらカッと目を凝らしてご覧下さい。
上質なコメディを鑑賞するチャンス、お見逃しなく!