ゴジラ、ウルトラマン…「特撮」で学ぶ映像の魅力 大阪芸大 授業が人気上昇(産経新聞) - Y!ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130518-00000131-san-movi


「苦役列車」の山下敦弘監督、「舟を編む」の石井裕也監督を輩出した、大阪芸術大学(大阪府河南町)の映像学科が、今年度から「特撮」を授業のカリキュラムに組み込んでいる。学科長である大森一樹監督は「特撮を入り口に、映画への興味、さらに人間育成にもなれば」と話している。(橋本奈実)

 「まず映像の魅力を打ち出さないと、生徒は興味を持たない。今の学生に合わせて考え方を変えないと」と大森監督。思えば、自身も特撮映画を見て、映画に興味を持った。「いきなり黒澤明、小津安二郎を知らないのかと言っても、ハードルが高いですよね。間口を広げたかった」

 昨年開講した特撮の特別講義が好評で通年のカリキュラムに取り入れた。

 1~4回生を対象とした選択科目で、講座名は「映像美術論」。月2回、月曜の3、4限目に開講し、通年の15回を予定。2回生は必修科目が重なるため、履修していないが、1、3、4回生105人が登録しているという。

 担当教員は、客員教授の川北紘一さんと講師の満留浩昌さん。円谷英二さんを師に持つ川北さんは、ゴジラシリーズなどで特技監督を務め、91年に日本アカデミー賞特殊技術賞を受賞。満留さんは、ウルトラセブンやウルトラマンガイアなどの特殊技術を務めた人だ。

 生徒には、特撮の歴史や技術、アナログの利点を教え、実地体験をさせていく。CGには「重さと空気感が出ない」とも言われる。実際の爆破とCGで加工したものとでは破片の飛び方が違うように、計算できない偶発的な要素を映し出せることも強みだ。

 川北さんは「ミニチュアで作ったものにCGを足すなど、特撮の技術が、デジタル時代の映像作りに融合していければと思っています」と話す。

 4回生の高梠直矢さんは「将来、怪獣造形の仕事に就きたくて、特撮に興味を持っていたので履修しました。講義で古い映像を見ることができて勉強になります」。今後は、オープンキャンパスも開き、6月9日は大森監督のトークショー。7月14、15日はセットを使用した模擬撮影体験を行う。来年度は卒業制作も組み込む意向だ。

 映画のみならず、今の学生たちに、創意工夫する力をつけさせる狙いもある。

 特撮の祖、円谷さんの有名な逸話がある。飛行機をつったピアノ線を見えないようにするために、上下逆さまにつり、カメラを逆さにして撮った。人は下にある線はあまり見ないことを利用した方法だった。

 大森監督は「発想の転換ですよね。今は何でもすぐにネットで調べて、頭を使わない」。道具もそろっているため、なければ買おうとする。「工夫して作り上げることは、実社会に役立つ」

 また、「特撮」は、アニメーションや時代劇と並ぶ、日本が誇る技術でありながら、資料が保存されてきていないのが現状。川北さんが自身の倉庫に持つ多くの資料がある。実習室や、6月に一部オープンするあべのハルカス(大阪市阿倍野区)に入る大阪芸大のサテライトでの展示も企画している。