「ワイルド・スピード EURO MISSION」(公式サイト
)
「ハリウッドの神話」って、いろいろあるでしょ、映画やTVドラマの中でのみ通用する約束事が。最近目立って台頭している「神話」には「高い所から落ちても車の上なら平気♪」ってのがあります。車、突き破っちゃったら、それはさすがにアウトーーすなわち御臨終みたいですが、車体上部に体が乗っかっている限りは命に別状ないーーということになっております。落下の衝撃を車体とタイヤが受け止めてくれるってことらしく当然車はめちゃめちゃになってますが、落ちた人間の方はケガ一つせず、車のカケラを払いのけるや否や再び走り出しちゃうような場面もチラホラ。車の安全神話の方もここまできたか……という感じですね。これ、ちょっと前までなら大きなゴミ箱とかゴミ袋の山がその役目を担ってました。その前は確か山積みの段ボール箱。さらにその前は……干し草? まあその時代は高い建物といってもたかが知れてましたからね。落下する距離、すなわち高さが上がるにつれて「この上なら落ちても平気、生きてられる♪」というポイントも変化を余儀なくされているようです。
はい、この「神話」は今まではビルの上から止まっている車の上に飛び降りるといった、単に「落下」の場合だったのですよ。しかしそんなもんじゃ物足りんと思ったんですな、「ワイルド・スピード EURO MISSION」。そもそも「落下」は上下の動きなので「走行」という横の動きにはあてはまらないわけで。やってくれたのが、「猛スピードで走ってる車から飛び出しても、別の車の上に着地(?)できればセーフ!」という新神話。
んなわけあるかいっ!! それがセーフだったら死亡事故激減しとるわっっっ!!
と思うのは映画見てから二日後ぐらい。見てる間はあまり気になりません。だってぶっちぎりでおもしろいんだもん、「ワイルド・スピード EURO MISSION」!
なにしろ出てるのがヴィン・ディーゼルですから、「ピッチ・ブラック」の「リディック」ですから、SFなんだもん、もう♪ 物理法則が「トムとジェリー」の世界で暮らす人々の話だと思えば納得です(←SFというよりすでにマンガ)。
それに前作から最強の助っ人としてドウェイン・ジョンソンが投入されてますからね。見るたびウルトラセブンのフィギュアですから、この方。光の国から余分な命の三つや四つ持ってきてても不思議はないわ。
というわけで、この時点で観客は薄々気づいてるんですよ、「この映画、何でもアリだ」って。常識にも物理法則にも、たぶんそしてアメリカの法律にも縛られない、最強のエンターテインメントだって。シリーズ最初の頃はそういう「縛り」にがんじがらめにされてたポール・ウォーカーも今ではすっかりそんなの吹っ切ってヴィンちゃんファミリーにどっぷりだもんね。足を引っ張るしがらみはもはや残されておりません。あるのは、ただ、愛だけ♪ だから女性が見ててもぐっとくるのよ~~~♪
しかも、今回の悪役はシリーズきっての美丈夫、ルーク・エヴァンズときたもんだ。歴代悪役の中だけでなく、これまで全ての登場人物の中でも群を抜いた美貌の持ち主ですから、画面上の平均美がまるで違う! 前作までは悪役達がメインで出ているシーンではスクリーンのあちらこちらを所在なく彷徨っていた私の視線が、今作ではひたとルークのご尊顔の上に据えられて動きませんでしたからね!! いやん、彼の顔の他に何を見ろと言うのよ~~~♪(車?)
「ワイルド・スピード EURO MISSION」では短髪に粗い髭で凄みをつけ、渋い声音で荒っぽさを表現してましたが、ルーク・エヴァンズといえば「タイタンの戦い」ではアポロン、「インモータルズ 神々の戦い」ではゼウスと端正で美しい神様を演じた方でございます。どっちにしても、一族郎党を率いて戦い(正邪は問わず)に赴くのがやたら似合う! もうきたる「ホビット スマウグの荒らし場」におけるバルド役の成功も見えたといって過言ではないかも?!
このルーク演じるオーウェン・ショーの非道っぷりが見事なので、ほんっと作品を生かしてくれてましたね! やってることの無茶さ加減は「ダイ・ハード5」といい勝負なんですが、あれよりずっとおもしろいです。ルークの悪役としての魅力は「ダイ・ハード」シリーズだったら3のジェレミー・アイアンズに匹敵するかな?
「ダイ・ハード」といえば、ここまできた「ワイルド・スピード」に次に出演させてさらなるバージョンアップをはかるための俳優といえばブルース・ウィリスぐらいしか残ってないだろうと思いながら見てたんですよね、私。でも違いました。まだまだイキのいいのが残っておりました。最後の最後に手を叩いて大喜びさせていただきました。もう、次回作が楽しみでなりません。
「ワイルド・スピード」シリーズ内では当たり前になった、とにかく「落ちたのが車の上ならセーフ」神話、このままどこまでいくでしょう?
それにしても、そんな中で「落ちる前に拾う!」を堂々とやってのけた「アイアンマン3」はやっぱりエライな~と思うのでありました。「ワイルド・スピード EURO MISSION」が「アイアンマン3」に一歩及ばないのは、この赤の他人を救うために必死になるシーンがないところかな?
ま、猛暑のひとときに涼を求め、何もかも忘れて楽しむためにはもってこいの映画です、「ワイルド・スピード EURO MISSION」。ぜひスクリーンでご覧ください!