『風立ちぬ』謎のドイツ人・カストルプに隠された宮崎駿と元ジブリ取締役の友情とは?(シネマトゥデイ) - Y!ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130811-00000004-flix-movi
映画『風立ちぬ』に登場する謎のドイツ人、カストルプに隠された宮崎駿監督と元スタジオジブリ海外事業部取締役部長スティーブン・アルパートさんの友情に迫った。本作はゼロ戦の設計者・堀越二郎と文学者の堀辰雄という二人の実在した人物をモデルに、飛行機作りに情熱を傾けた青年の姿を描いた作品。カストルプは主人公・二郎とヒロイン・菜穂子を結ぶキューピッド役を担い、当時の世情を語る重要な人物だ。
映画『風立ちぬ』場面写真
1950年、アメリカ・コネティカット州で生まれたアルパートさんは1985年に来日し、シティバンクなどを経て、ウォルト・ディズニー・カンパニーに入社。1996年、ディズニーと当時スタジオジブリの親会社だった徳間書店との間で、ジブリ作品の海外配給やビデオソフト販売に関する事業提携に尽力したのをきっかけに同社へ移り、それ以来スタジオジブリ作品の海外ビジネスを一貫して担当し、ジブリ作品を世界に広めてきた。また、宮崎監督が海外に行く際には必ずアテンドし、二人はいつしか仕事を超えた友人となったという。
2011年、家庭の事情によりアルパートさんはジブリを退社し、アメリカへ帰ることに。寂しい思いを抱きながらも、「何か記念になるものをプレゼントしたい」と似顔絵を描き始めた宮崎監督だったが、満足のいくものを完成させることのできないままアルパートさん帰国の日となってしまう……。しかし翌年、『風立ちぬ』の絵コンテの中にはアルパートさんの姿が。宮崎監督は完成させることのできなかった似顔絵をカストルプというキャラクターにして、5年ぶりの新作に登場させたのだ。そして、アルパートさんは監督からのオファーを受け、そのキャラクターに声を吹き込むためだけに来日を果たした。
当時の心境をアルパートさんは「何とも言えないくらいうれしかったです。本当に自分の声が映画の中に入れるなんてあり得ない経験だと思うんですよね」と述懐。初めてキャラクタースケッチを見たときについては、「『えっ! 僕の鼻はそんなに大きいですか? まさか悪人の役じゃないですよね?』と思いました。でも、脚本を読んで、いい人なので安心しました」と笑いながら明かした。
こうして生まれたカストルプは、長年宮崎監督とコンビを組んできた鈴木敏夫プロデューサーも「アルちゃん(アルパートさんの愛称)のことがなかったら、あの外国人が物語に登場したかどうかわからない」と自身がパーソナリティーを務めるラジオ番組で語っている通り、まさに二人の友情あってのキャラクター。宮崎監督の思いに応えるかのように、アニメーション映画の声優初挑戦でありながら日本語での演技はもちろん、苦手だという歌まで披露したアルパートさんにぜひ注目してみてほしい。(編集部・中山雄一朗)
映画『風立ちぬ』は公開中