“感情”が伝わる映画を。J.J.エイブラムスが語る『スター・トレック』最新作(ぴあ映画生活) - Y!ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130822-00000000-piaeiga-movi
J.J.エイブラムス監督の最新作『スター・トレック イントゥ・ダークネス』が間もなく公開される。数々の映画、ドラマをヒットさせ、『スター・ウォーズ』の最新作の監督にも就任したエイブラムス監督はしばしば“気鋭のヒットメイカー”と称される。しかし、エイブラムス監督は本作で、ヒット作の定石をあえて踏まずに仲間たちと“新しい航海”に出たようだ。
映画は、様々な星の生命体が共存している未来世界を舞台に、ジェームズ・T・カーク(クリス・パイン)をはじめとする仲間たちがエンタープライズ号に乗り込み、危機に立ち向かう姿を描いたSFシリーズ。『…イントゥ・ダークネス』では地球を危機に陥れようとする冷酷な悪役ジョン・ハリソンの脅威にカークたちが立ち向かう姿が描かれる。
本作は、エイブラムス監督にとって初の3D映画だが本人は「3Dにするのはスタジオからの要求で、僕はどうしてもアナモフィック・レンズ(※注)が使いたかったから、3Dカメラを使わずに撮影後に変換したんだ」とそっけない。しかし映画に登場するキャラクターのことになると彼は饒舌になる。「このような大作映画で最も大事なことは、キャラクターに感情移入できるかどうかだ。僕はそのことを最も大事にしているんだ」というエイブラムス監督は、「ここ最近の大作ではいろんなものが破壊されるシーンが続いてきたけど、観客はそのことに少し疲れてるんじゃないかと思う。爆破とかばかりだしね」と言い切る。
そこでエイブラムス監督はスゴ腕の脚本家、プロデューサーを集めて納得いくまで脚本づくりを行った。ハリウッドの“ヒットの法則”を知り尽くしているメンバーたちは、あえて定石を踏まずに、新鮮なドラマ作りに挑んでいる。「まったく新しいストーリーを作ることは無理かもしれないけど、新しいアプローチで物語を語ることはできるし、キャラクターのニュアンスを変えたりしながら具体的な変化をつけていくことはできるはずだ。だから観客がキャラクターの心や魂の部分に触れることができて、その上で悪役に立ち向かうようにしたんだ。そうすることで忠誠心や正義感や自己犠牲など、みんなが知っていることを新鮮に感じてもらえるんじゃないかと思ったんだ」。
彼の映画作りに対する真摯さは演出にも表れている。「子供の頃にスーパー8(※注2)を使って映画を撮っていた頃と同じ方法で映画を撮っているんだ」と笑顔を見せるエイブラムス監督は、撮影現場ではつねに俳優の間近にいて、カメラの真後ろで演技を見守るという。「なるべく俳優の近くにいて、何が起こっているのか自分の目で見届けたいんだ。大作になると現場には色んな機材もあるし、スタッフも多いから僕も俳優も集中するのが難しい時がある。だから可能な限り俳優の近くにいて、彼らの演技をその場所で見ることが大事なんだ。この映画は大作だけど、まるで自主映画のような撮り方をしたよ。あまりハイテクを使い過ぎると機械的になってしまうから、できるだけアナログにして、感情が伝わるような方法で撮影したんだ」。
本作は壮大なスケールで物語が展開し、ド派手な場面や豪快なアクションが次々に登場するが、登場人物たちの感情の揺れ動きや、熱いドラマがしっかりと残る作品だ。エイブラムス監督と仲間たちの“心のこもった”語りに胸を躍らせてほしい。
『スター・トレック イントゥ・ダークネス』
8月23日(金)より、TOHOシネマズ日劇ほかで公開
(※注1)アナモフィック・レンズ……ワイドスクリーンの画角で撮影・映写するためのレンズ。ワイドスクリーンの映像をレンズで圧縮して35ミリフィルムに記録し、上映時にレンズを用いて元のサイズに拡大する。本作の画面比は1:2.25(スコープ)。
(※注2)スーパー8……1965年に登場した8ミリフィルムの規格。エイブラムス監督は幼少期よりスーパー8を用いて映画作りを始め、2011年には同名の映画『SUPER8/スーパーエイト』を発表した。