「清須会議」をようやく見ました。
三谷幸喜作品ですから、そりゃもちろんおもしろいのです。
配役にもソツがなく、俳優女優のの皆様それぞれ役に入り込んで、コミカルな台詞を的確な演技の元に回しておりました。
でもさ~、な~んかアタシ、見ている内にどんどん冷めていったのよね~~~。
だああってさああ~、スクリーンの中にぜんっぜん
華がないんだもん。
この映画、主役は役所広司さんが演じる柴田勝家。勇猛な武将として知られる勝家ですが、「清須会議」の中での彼は実直で正直で惚れたおなごの前では子どものようで……という「可愛い」男として描かれております、男の目で見ればね。
まーそのー「男の目で見た男の可愛さ」というのが女の目にどう映るかというのは映画の中でもお市様の目を通して描かれてはいるんですが、空気が読めず他人の気持ちを全くはかれない猪突猛進型の初老のおっさんが美人の前でだけデレデレしてるというのは……滑稽というより不愉快に近いものがありましたね。あんた他にここでやるべき仕事あるのに何やってんのよ、と。
むろん、それも三谷さんの狙った通りで、そういう勝家だから最終的に盟友の丹羽長秀に見限られるという流れにもっていくためではあるのですが……見ていても美しくないのよ、その展開も、勝家と長秀のお二人も! むさ苦しい衣装で何をしてても常に汗ばんでるような勝家も、渋い趣味の衣装でいっつも梅干ししゃぶってるような顔した長秀も、見てても全く嬉しくない! 彼らを見てる内に気分が沈んでいくのを感じましたわ。
彼らに比べると秀吉は目を見張る派手な衣装で心を楽しませてはくれますが、どんなに大泉洋が適役だとしても、その顔に目を楽しませる要素はほとんどないのよね。
なんとゆーかまー、一事が万事その調子で、どの顔見ても美しいと思えないまま時間ばかりが過ぎてゆく映画だったんですよね~。これは一体どうしたことか。
女優さん達も、鈴木京香のお市様も剛力彩芽の松姫も当時のお化粧の白塗りお歯黒まろ眉だと全然美人に見えなくて……。ねね役の中谷美紀さんだけがそういう化粧をしてないので一番マシに見えたんですが、これはこれで美人に見せないためのメイクを施してたりするんですよね~。それでも美人に見えたというのが、周囲にそれ以上の美貌の者がいなかったことを如実に語っておりますな。
男優でマシだったのが、やはりほぼ素顔の印象で出ていた浅野忠信と松山ケンイチ。それぞれ活躍する場面も貰ってましたが、いかんせん出番が少なすぎ! 暑苦しく汗臭い男達の根回しドラマの中で一服の清涼剤とはなったものの、息抜き程度にしかならないもんね。
それにこのお二人にしたところで、格好はいいしハンサムとはいえるかもしれないけれど、「美男」ではないでしょ、やっぱり。それにまあ、もうそれほど若くもないわよね。
日本で若くて「美男」というと、佐藤健とか三浦春馬とか水島ヒロあたりだと私は思っているわけですが、こういう方達はそれぞれが主役となって映画に出演しております(三人とも予告編で見たわ)。それはいいんですが、でも大体こう、マンガが原作とか、ライトノベルが原作とか……あんまり大人向きな作品には出てくれないのよね。特に「清須会議」みたいな、中高年のおじさま達がわさわさ登場する映画には。
なんで?
もーちょっと女性の目を楽しませる若くて美しい男優をそのまま出してちょうだいよ! サービスカットでいーんだからさ!
「そのまま」と書いたのは、「清須会議」には一応妻夫木聡とか伊勢谷友介とか若くてハンサムな俳優が出てるというのに、作品中の彼らは若くもハンサムにも見えなかったから! 髷と髭が悪いのか? いや、なんちゅーか、撮る側に彼らを「美しく撮る」という意識がなかったって感じよね。コミカルには撮れていたけれど。
彼らだけじゃなく、全体的に「人を美しく撮る」という視点に欠けてる映画だったような気がします、「清須会議」。 衣装とふすま絵は際だって美しかったけれど、私は映画には「美しい人」を期待して行くのでね、そういう意味では完全な期待はずれ。
内容というか、台詞はもちろんおもしろいんですよ。
でも、これ、歴史上のできごとだから、次にどうなるか大体全部知ってるワケじゃない。話の展開に意外性は期待できないんだから、もうちょっとこう、人の美しさで見せ場を作って欲しかったな~。まあ、無駄な汚しがない分、某大河ドラマよりは見やすかったけれどね。
というわけで、日本の中高年のおっさん向けの映画は、例えそれが三谷幸喜作品であろうともう見に行くもんかと心に誓った私なのでした。まだ「パシフィック・リム」のカイジュー見てる方が楽しいわ。