「スティーラーズ」公式サイト

ま、破綻してるんですけどね。ええ、物語としては。
しかしまあ、コメディとして大目に見ればなんとか……という範疇にはかろうじて収まっています。笑えるかどうかは別問題ですが。

あ~、私はそこそこ笑えました。意外性があるので退屈しない分、結構楽しめたと言ってもいいです。

というのも今年はもう3本も自分にとってこれよりつまらない映画見ちゃったので。


今年はあまりスクリーンで映画を見てないので(その代わり毎日家で「パシフィック・リム」を見ている)
下から4番目ならそう悪くはないです。

ちなみに
ぶっちぎりでおもしろかったのは「ターミ ネーター」! テレビで何度も見てるというのに、それでも圧倒的におもしろかった! その後「マイティ・ソー ダークワールド」「ラッシュ プライドと友情」 「キャプテン・フィリップス」「大脱出」試写で見た「キック・アス ジャスティス・フォーエバー」と続き、「スティーラーズ」はその次ね。それ以下が「エン ダーのゲーム」「47RONIN」。この二つは一応予算がかかってる分、映像的にはそれなりの見応えはありました。自分にとって本当におもしろくなくて頭に来たのが「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライブ」。これに比べれば「スティーラーズ」の方がよっぽどマシだわ。


とはいえ、もしこれがポール・ウォーカーの遺作だったら、ガッカリしたし腹も立ったでしょうね。ポール、ちっともかっこよくないんだもん。

もっともそれを言うなら、この作品に出てくる俳優さん、結構有名どころを揃えているのに、誰一人かっこよくないんですよね。むしろ敢えて普段の自分の役どころと違うかっこ悪くて情けなくてダメな男を演じてたって感じです。それも血道を上げて。なんでそんな役演じるのにムダに演技力使うよ?

一応、そのギャップがおもしろいっちゃおもしろいのですが、私も女ですのでね、クズ男のオンパレード見てたらやっぱり次第にボルテージは下がりますよね。ポール・ウォーカーとかブレンダン・フレイザーとかルーカス・ハースとかイライジャ・ウッドとかトーマス・ジェーンとかハンサム&美男俳優揃えてるのに、彼らの魅力を決して前面に出さないように最新の注意を払って撮影したとしか思えませんわ。お目当ての一人だったノーマン・リーダスなんか、顔でなかったわよ?!
髪もヒゲも皆ダサイし、衣装はどれも埃っぽいし、やることはバカだし、どうしようもない男どもの一日の顛末を、彼らが関わった質屋を軸に見せただけの物語なんですが、それでも最後までなんとか見られたのは、どんなに汚しを入れても上記の俳優達が美しかったから! これが「ジャッキー・コーガン」の冒頭みたいに汚い上に平均的なご面相と平均以下の知能ぶりだったら見るに堪えなかったことでしょう。豪華キャストを集めた意味はあったというものです。ノーマン・リーダスは顔だけじゃなくプロポーションも抜群だし。

さて、これは一応コメディですが、万人が抱腹絶倒という類のものではありません。はっきりいって、対象は男。これだけ美男俳優集めといて女性客に受けるようなシーンが一切ないってのもある意味スゴイですわ。いや、作ってる側はあれで女性にも受けるシーンも入ってると思ってるのかもしれないけど、それは大いなる考え違いです。男が誰も脱いでないからとか、そういう意味じゃなくて、徹頭徹尾男の視点で描かれた作品だからですね。

男目線の映画でも、女性が見ても感情移入できるものはあります。それは、男が一方的に「こうすれば女が喜ぶだろ」と決めつけて、とってつけたように入れるラブシーンにではなく、作り手側の男性が女性を尊重していることが感じ取れる時です。端的に言うと「愛する女性を幸せにすることが自分の幸せ」だと男性が思っているかどうかですね。「ターミネーター」なんかね、サラ・コナーのためにカイル・リースは命がけでタイムトラベルしてくるわけですからね、最たるものでしょ?  女性である私にとっては、スクリーン上にそういう男性の姿を見る方が楽しいわけです。

ひるがえって「スティーラーズ」。ここに出てくる男どもは自分が幸せになることしか考えてませんから。

ポール・ウォーカー達が演じたのは、男のダチとつるんでる方が楽しいというタイプ。ドラッグ仲間という後ろ暗さを共有しているため結束は固いが、しかしその結束もドラッグの前にはちりあくたになるという、まあ、人間として最低のタイプ。

マット・ディロンは、愛のための行動だと自分では思いつつ、実の所それをたまった鬱憤を晴らすための言い訳にしているタイプ

イライジャ・ウッドは、自分が幸せになるために女性の奉仕が必要なタイプ。

ブレンダン・フレイザーは、自分が幸せならツレの女も当然幸せだと信じて疑わないタイプ。

その他諸々、「スティーラーズ」に出てくる男で女性を幸せにしようと心を尽くすタイプは一人もいないんですな。とことん男のための男の映画で、程度の低いバチェラーパーティーみたいな作品なんです。ヤツらは自分が幸せになるためなら何をやってもいいと思っている。そのバカさ加減が青天井につり上がっていくのがこの作品のコメディの主な要素なんですが……あんまりバカすぎると笑えないのね、エスカレートすると殺伐としてくるから。しかも何故か描写はリアルなので残虐なシーンは酸鼻を極めてますからな。エピソードの冒頭部分をアメコミ調のイラストにしてるのに、過激なばっかりで絵としてのおもしろみにも芸術性にも欠けるから、単なる「これ、精々コミックレベルの話なんで、真剣にとらないでやってつかーさい」というしらじらしい言い訳
以外の何の効果も得られてないのよね。

実はこれは「キック・アス ジャスティス・フォーエバー」でもちょっと感じたことで、それで「スティーラーズ」と並べてあるんだけど、でも「キック・アス」の方が数段よいできなので安心して見に行って下さい、2月28日公開だけど。

「スティーラーズ」に話を戻しますが、劇中エルビス・プレスリーに扮している人物が年配の人に頻繁にリベラーチェと間違われるシーンが出て参ります。「恋するリベラーチェ」を見てたので、まあなんとなくそのイメージが分かったのは儲けものでした♪

この作品、キャラ全員最低男だから、見終わったあとスッとするためにはメインキャラ全員が劇中でなんらかの罰をうけるべきなんですが、そうでもないんですよね。人生の辛酸をなめ尽くした後の一発逆転というシーンがあって、そこは確かにコメディらしくテンポ良く進みおもしろいっちゃおもしろいんですが……見終わってもやっぱり全然スッキリできないんですよね。それでいいのか! みたいな終わり方で……最後まで意外性で引っ張ってくれるのはいいんですが、しかし意外性をとったら何にも残らない作品ではあります。たぶん、二度見には耐えないでしょう。

故ポール・ウォーカーの思い出のためには、こんな映画見ない方が良かったかも!

イライジャのファンの方にもキビシイものがありそう……。しかし俳優のみなさん「自分のイメージ」とされている役 を演じるのに飽き飽きしてたと見えて、全然違うイメージの役を嬉々として演じてらっし ゃるのが印象的でしたわ。、だからといって映画が傑作になるわけでもファンが満足や納得するわけで もないんですが。ノーマン・リーダスのファンの場合は、たぶん見るだけムダです。