『進撃の巨人』『ジョジョ』脚本家・小林靖子、アニメの実写映画化について語る(クランクイン!) - Y!ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140310-00029819-crankinn-movi

東映特撮ドラマ『仮面ライダー』シリーズやアニメ『進撃の巨人』『ジョジョの奇妙な冒険』、2005年にテレビ東京系の深夜枠で放送された『牙狼 <GARO>』など代表作が枚挙にいとまがない脚本家・小林靖子。そんな彼女に、2014年3月、『牙狼<GARO>』ファンの間でも、高い人気を誇って いたゼロこと魔戒騎士・涼邑零を主人公にした劇場版新シリーズ『絶狼 <ZERO> ‐BLACK BLOOD‐ 』の見どころや、アニメの「シリーズ構成」という仕事、そして人気アニメの実写化の現状などを聞いた。

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 2005年にテレビ東京系の深夜枠で放送された『牙狼<GARO>』は、テレビドラマの水準をはるかにしのぐクオリティーで、特撮ファンの間でも大きな 話題となった。その後、シリーズ化された『牙狼<GARO>』は、劇場公開版やゲームなどのメディアミックスを展開し、成功を収めている。

 小林と『牙狼<GARO>』シリーズの接点は、2011年から放送された『牙狼<GARO>~MAKAISENKI~』第5話の脚本を担当したところに さかのぼるが、「雨宮(慶太)監督から『もう一度やりませんか?』って声をかけていただいたんです。最初は1本の映画という企画だったのですが、紆余曲折 を経てテレビシリーズで6本、そしてそれを劇場公開するということになったんです」と本作を執筆した経緯を語る。

 本作で主人公を務めたのが『牙狼<GARO>』シリーズでも登場していた藤田玲演じる魔戒騎士・涼邑零。「雨宮さんが『とにかく格好いい零を見せたい。 牙狼シリーズでは出せなかった零を描きたい』と仰っていたんですね。(前シリーズの主役・冴島)鋼牙と比べると零は人間ぽい部分があったので、キャラ同士 の絡みでちょっと冗談を言えるような軽いテイストにすると零の魅力が出るのではないのかなという所は意識しました」。新たな一面を見せた零は、人間味あふ れる姿でスクリーンを躍動するが、「今回はキャラクターが転がっていくというよりも、ライブ感あるストーリーが物語を引っ張っていった感じですね。初めて の経験なのですが、プロットを作らず、いきなりシナリオを書いたんです。週刊連載みたいなノリですね」と小林は執筆秘話を明かした。

 『進撃の巨人』や『ジョジョの奇妙な冒険』など大人気アニメの「シリーズ構成」を担当している小林。一般的には聞きなれないポジションだが、いったいど んな役割を担っているのだろうか?「例えば原作ものがあると、テレビの尺(1話何分で、何話放映か)を考慮して、1話ごとにどのような場所で切ったらいい のかを考えて、各脚本家さんに発注するような仕事ですね。アニメの交通整理というか現場監督。基本的には、シリーズの方向性などを決めるために第1話はシ リーズ構成が脚本を書くんですね。余裕があればその後も自分で書くのですが、アニメの現場ってコンテマン(絵コンテライター)さんが5人いれば、5つの物 語が進行できるので、本を早く欲しがったりすることもあるんです。そうなると同時に何人かの脚本家さんにシナリオを頼まなくてはならないので」。


 さらに小林は、「どれだけ人気のある作品でも漫画とテレビアニメだと、見る人の数が全然違うと思うんです。テレビアニメって特に興味がない人でも、何と なく見る人も多いので、その作品のことが好きじゃない人が見ても面白いって継続してもらえるように、作品初心者も切り捨てないような切り口は監督と相談し ます」と人気アニメを手掛ける際に心掛けていることを明かすと、「基本的には原作を尊重します。もちろん漫画のコマとアニメは進行が全然違うので、間に何 かを入れないと繋がらないときは足したりします。ギャグ漫画とかは、色々なネタを入れたりすることによって、より魅力的になることもありますが『進撃の巨 人』のような作品は原作に忠実に描いた方がいいですね」と付け加えた。

 小林が手掛けている『進撃の巨人』をはじめ、人気漫画・アニメの実写映画化は近年のトレンドになっている。「『進撃の巨人』の実写化の話を聞いたときは 『えぇ~』って驚きましたよ。率直に大変だなって(笑)。少女漫画って日常を描いていることが多いので実写化しやすいじゃないですか。でも少年漫画って、 とんでもない設定が多いので、お金かかるだろうし、それに見合ったヒットってなかなか難しいのが現状だと思います。(『進撃の巨人』実写版の監督の)樋口 (真嗣)さんは特撮が大好きな監督さんなので、面識があるんですね。だから余計に大変だな~って思いましたね(笑)」。

 そんな小林に、「もしアニメの実写映画化の脚本を書きませんか?」という話があったらどうするかを聞いてみると、「作品によるかもしれませんね。大変す ぎるので(笑)。まあ、脚本は普通に書けばいいのですが、映像にしたときのことを考えると、あまり突拍子のないものを書いても……。お金もかかりますし ね。ただ、脚本段階であまり『こんなの無理だろう』ってブレーキをかけちゃうと、小さな本になってしまうので、あまり萎縮はせずには書くんでしょうけど (笑)」と苦笑いを浮かべながら胸の内を明かしてくれた。

 「主役の零と(武子直輝演じる)カイン、(梨里杏演じる)ユナとの絡み、これまでとは一風変わった敵である、セイン・カミュさん演じるリング、それにつ いている(野本かりあ演じる)イユなどキャラクターたちとのやり取りが、映画の一本のシーンになっている部分を見て欲しい」と本作アピールした小林。さら に「高野八誠さん演じる『仲井間』というキャラがいるのですが、いい人でもなく凄く悪い人でもない、極端に言うとネズミ男みたいなんです。お気に入りの キャラなのでぜひ注目してください」と脚本家ならではの視点で見どころを語った。(取材・文:才谷りょう)

 映画『絶狼 <ZERO> ‐BLACK BLOOD‐ 白ノ章』は絶賛公開中。『絶狼 <ZERO> ‐BLACK BLOOD‐ 黒ノ章』は3月22日より、シネ・リーブル池袋ほか、全国8館にて公開。