カンバーバッチにファスベンダー…『それでも夜は明ける』名優に“圧巻”の声続々(cinemacafe.net) - Y!ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140317-00000013-cine-movi


苦痛に堪えながら、苦悶を飲み込みながら、ただ自由となることを渇望し続けた男がいる。彼は12年間を奴隷として過ごした。そしてその当時も、今現在に至ってなお、ただ自由であることを切に望みながら苦痛に耐える人々が数多く存在する。

【『それでも夜は明ける』プロデューサー兼キャストのブラッド・ピットほか/大きい写真】

そんな彼ら黒人奴隷という歴史の闇を克明に描き出した、映画『それでも夜は明ける』。本年度アカデミー賞で「作品賞」「助演女優賞」(ルピタ・ニョンゴ)に輝き、その壇上で監督のスティーブ・マックイーンは、「いま尚2,100万人の人々が奴隷生活を送っている、彼らにこの賞を捧げます」とトロフィーを掲げた。

決して能天気に観れる作品ではない。前述してその描写を「克明」と記したが、これは大仰な言葉ではなく紛れもない真実。1853年に発表された本作の主人公で実在した人物ソロモン・ノーサップの「Twelve Years a Slave」を原作に映画化されたものだ。白人社会の中で理不尽に虐げられ、背中をムチで打たれ、抗う心に目を背け、怯えながらその日を生き抜く…そんな目を伏せたくなるシーンも登場する。この重厚なテーマを扱う本作のメッセージに賛同し、ハリウッドきっての豪華な俳優陣が体当たりで役に身を投じている。

中でも実在の人物で本作の主人公となる、ソロモン・ノーサップを演じたキウェテル・イジョフォーの迫真の演技は鬼気迫るものがある。Twitter上では、「理不尽な状況に怒りを抱えながらも、感情を押し殺して必死に耐える引き算の演技が秀逸」「絶望から希望まで入り混じった演技は息が詰まりそうでした」との声が挙がっている。

そんな彼が12年間の間の奴隷生活をする中で、主となるのがベネディクト・カンバーバッチにマイケル・ファスベンダー。ベネディクト演じる良心をもった主・フォードとマイケル演じる奴隷を“所有物として飼う”横暴な主・エップス。一見すると正反対のキャラクターだが、奴隷を買う白人という点に違いはない。

ベネディクトに「一見すると人類皆平等な人当たりの良い傑物なように見えて、その実は根っからの南部の白人たらしめた役を見事に体現! 特に、ラストの台詞を真顔で言い放つ姿で、彼の差別主義の源流のような本質が垣間見えて恐怖すら覚えた」とコメントする人がいれば、マイケルに「あんな醜悪で残虐な役なのに、完全な悪じゃなく、もがき苦しむような役を演じられる人なんて中々いないと思う」「オスカー取っても良かったと思う」と狂気の演技で多くの人々から支持を得る。

そして彼ら2人を比較してこんなツイートも。「B・カンバーバッチの演技を見た後だと、M・ファスベンダーが冷徹な仕打ちをする極悪主人と謳われていても、人を愛する事には真っ直ぐで、そういう時代故に彼自身も翻弄されていた悲劇の人として、凄く人間臭く映って見えたから、可哀想な人、という印象が残る」。

一方、新人ながらアカデミー賞で「助演女優賞」を獲得し、本作が女優としての転機となったであろうルピタ・ニョンゴには、「受賞に恥じない真に迫る演技」とやはり絶賛の声。

さらに、ブラッド・ピットにはキャストとしては勿論だが、作品の秀逸さからプロデューサーとの手腕に賛辞を贈る声が目立った。「キャストの演技も良く、奴隷の労働歌が悲哀がありとても深い。製作のブラッド・ピットは良い仕事をした。映画としては問題作・秀作と言える」。

さらに作品自体にはこんなツイートも。「正直観る前までは、『どうせ良い映画なんでしょー。アカデミーは当たり障りのないの選ぶよねー。』くらいのテンションでした…。いや、本当すいません! まぎれもなく最高傑作です!」「傑作か駄作か、好きか嫌いかといった議論が何ら意味を持たず、とにかく打ちのめされるという意味で『圧巻』という言葉が相応しい一作」「『映画を観て泣いた』、実はこの言葉一番嫌いなんだけど、今しっくりくる表現がこれしかない」とその感動に胸を鷲掴みにされた人も続々と出てきている様子。

1863年にアメリカ合衆国大統領リンカーンが奴隷解放宣言を発し、2009年にはバラク・オバマが黒人初の大統領となり、近年映画界でも本作を始め“黒人差別”や“奴隷”を扱った作品が多く作られている。

本作は楽しむためのエンターテイメント作品ではなく、観ること・知ることで“意味をもつ”作品だ。長きにわたる歴史を経て、ようやく世界が闇を見つめる覚悟ができたのではないだろうか?

『それでも夜は明ける』は全国にて公開中。