監督が語る。キャプテン・アメリカを“現代”に描く意味とは?(ぴあ映画生活) - Y!ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140418-00000010-piaeiga-movi


アメリカで記録的なヒットを飛ばしている映画『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』が明日から日本で公開になる。本作は、強大な力を持つ主人公が孤立無援の状況下で陰謀に立ち向かうアクション大作だが、同時に現代社会が抱える問題や、政治の闇を描いた重厚なスリラー映画でもある。アンソニー&ジョー・ルッソ監督は、伝説のヒーローを現代を舞台に描くことに大きな意味を見出しているようだ。国際電話で話を聞いた。

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本作の主人公スティーヴ・ロジャースは、第二次大戦中に軍の極秘計画によって“キャプテン・アメリカ”として生まれ変わり、悪の組織ヒドラと戦ったが、長い眠りにつき現代で目をさました。そこではニック・フューリーが率いる国際平和維持組織S.H.I.E.L.D.(シールド)が犯罪を“発生前”に防ぐ手立てを考案しており、シールドの幹部アレクサンダー・ピアースと“インサイト計画”という巨大なプロジェクトを進めている。

ルッソ監督は本作を「1970年代の政治スリラーのように描きたかった」という。「制作中は『コンドル』や『マラソンマン』『大統領の陰謀』などの映画を参考にしたよ。9.11後の社会の中で人々が抱えている不安や、国家の安全のために人々がどこまで自由を犠牲にできるのか?という問題を“キャプテン・アメリカ”というシンボリックな存在を通して描くことが重要だと思ったんだ」。

政府内に潜む勢力の巨大な陰謀に巻き込まれ、スティーヴは自身が所属しているシールドからも命を狙われる。真の正義とは何か? 政府が語る正義を常に信用していいのか? カメラはかつてアメリカ政治を揺るがしたウォーターゲート・ビルを捉え、アメリカ同時多発テロ以降の安全保障問題が物語に組み込まれる。「僕たちはいつも知的な要素が入った物語に魅了されるんだ。だから制作中も新聞の見出しを見てはドローン(無人の航空機)などの技術がこの先、どうなっていくのか予想しながら制作を進めたよ。スノーデン事件(元CIA職員のエドワード・スノーデンが、米国安全保障局が極秘に大量の個人情報を収集していたことを告発した事件)が起こったのも制作中のことだ。この映画は一種の政治スリラーだから、映画を通して時代精神を切り取ったといっても過言じゃないと思うよ」。

現代を生きる我々の問題を描けるのは、キャプテン・アメリカがヒーローでありながら“普通の人間”だからだと監督は分析する。「彼はアイアンマンのように空を飛ぶこともできないし、ソーのように異世界の人物でもない。スーパーパワーを持ってはいるけど“ひとりの男”なんだ。だから、人間的なスケールを大切にしたいと思ったし、物語も語り口も“リアリズム”を重視した。手持ちカメラを使って地に足のついた撮影スタイルを目指したし、カメラアングルも“人間が撮影している”ことがわかる昔ながらスタイルを採用したんだ。彼のファイティングスタイルも同様に相手と接近して戦うスタイルを選択したよ」。

セキュリティが過剰に機能している社会で、私たちはどこまで安全のために自由を政府にゆだねて良いのか? もし、巨大な組織や国家が何らかの暴走を起こしたとき、私たちはどこまで自身の信じる正義を貫き、ひとりの人間として行動することができるのか? 本作で描かれる重厚なドラマは公開後、高く評価され、様々な議論を巻き起こすのではないだろうか。

『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』
4月19日(土) 2D/3D公開

※実際のインタビューではアンソニーとルッソが交互に回答したが「僕らふたりの意見として答えさせてほしい」という彼らの意思を尊重して本文では“ルッソ監督のコメント”として記載した。