コリン・ファレルは、演技力はおいといて、役にハマった時とそうじゃない時の魅力の落差が激しいんですよね~~~。まあ、少なくとも私にアピールする部分では。彼が「スワット」なんかでまじめくさったヒーロー演じてても、ちっとも素敵に見えない。役柄的にはその映画でジェレミー・レナーが演じてた役の方が似合ったんじゃないかと思いました。ただしそれだと、悪いやつの方が主役に見えてしまうからダメだったのでしょうが。コリンがレナー君の役を演じるとしたら、元のコリンの役に入れるのはトム・クルーズぐらいしかいないでしょうからね。
というわけで、演技力は上手くても自分の魅力を発揮できる映画にあまり巡り会ってないんじゃないかというのが今までの私のコリン観だったのですよ。「トータル・リコール」も似合ってなかったもん。彼は、真面目なヒーローやってもぱっとしないのですわ。アントン君相手にセクシー吸血鬼演じた「フライト・ナイト」が最近では一番だろうと思ってました。
ところが、「ウォルト・ディズニーの約束」のコリンはとても素敵だったのです。ヒーローでもセクシーでもないのに、目を奪われてしまいましたよ、私。何を隠そう、実は最初はコリン・ファレルだとは思わなかったぐらいで。似てるけど違う人なんだなあと思ってました。全然今までのイメージと違うんだもん。娘を溺愛してるパパの姿が本当にかっこよくて……。
でも、見ている内に段々分かってくるんですよ。パパの心はとても傷ついていて、でも娘の前ではそれを見せないように気丈に振る舞っているんだって。娘を楽しませるために語っているお話は、実は自分のための現実逃避でもあるんだって。そういう部分をちょっとずつ、ちょっとずつ出してくる。この人の演技力って、底知れないんだわと初めて理解しました、私。
出番としては、コリンの方がトム・ハンクスより多いんじゃないかなあ? 本当はコリン・ファレルが主演といってもいいぐらいの登場ぶりで……ストーリー上では主役にはなりえないんですけどね、でも「主役」である娘の心をとらえて放さないパパが彼だから。
そういえばこの映画を見ながら思い出していたのは、ジェラード・バトラーが出ていた「幸せの1ページ」でした。ストーリーは全然違うんだけど、テーマが共通していると思ったので。児童文学の作家って、子どもの頃、自分が子ども故にできなかったこと(=パパを助ける)を作品に書くことで、その時傷ついた自分の心を癒してるんだなと思ったんですよ。子どもって親のために自分ができることがあるなら何でもしてあげたい、助けになりたいって思ってるもんなんですよね。「花子とアン」でもそういうシーンがあったけど。
でも、「ウォルト・ディズニーの約束」では、問題はお金だけのことではないのですよ。パパの心は日常をおくることにすり減らされて空っぽになっていて、それを埋めることは誰にもできない。そんなパパを世界で一番大切に思っている娘は、せめてパパのためにできることをしようと思うけれど、それは同時にママを怒らせることだとも知っていて……子どもだって大変なのよねということが実にリアルに描かれていたので本当に胸が痛くなりましたわ。
このコリンのパパが本当に魅力的だからこそ、娘ちゃんの気持ちがよくわかるんですよね~~~。娘視点で描かれているパパ像ですから人間的なイヤな部分が見えてないというのもあるのでしょうが、それでも演じているのはまるごとコリン・ファレルなわけですよ。それなのに、暴れん坊にもセクシーにも吸血鬼にも見えない。襟の高い古風な服のよく似合う、時に物悲しげだけど娘の前ではほほえみを絶やさないダンディーなパパなんです。
トム・ハンクスもエマ・トンプソンももちろん上手ですが、一番みるべきは物悲しげなコリン・ファレル。彼の新たな一面を発見できると思います。