有楽町の映画館、丸の内ルーブルがその27年続いた歴史を閉じるというので行われている「閉館イベント」。ラインナップの1本に「トロイ」(2004年)があったので、オーランド・ブルームファンの私としては見逃すわけには行きません!


というわけで約10年ぶりに劇場で見てきたのですが、やっぱりいいですわ~♪ このスケールの作品は劇場で見るに限りますね! 自宅のテレビでDVDで見るのとじゃあ迫力が大違い! 細かい部分まではっきり見えるし、オーランド演じるパリスの美貌はクリアだし、大満足して帰ってきたのでした。


「トロイ」の監督は名匠ウォルフガング・ペーターゼンなのですが、脚本はデイヴィッド・ベニオフが手がけております。そうなんですよ、目下テレビシリーズの「ゲーム・オブ・スローンズ」で気を吐いてるあの方なのです。今「トロイ」を見ると「ゲーム~」のあの世界の萌芽はすでにこの時からあったということがよくわかりますね。


何しろ血腥い!

今は映画だけじゃなくテレビでも当たり前のようにばしゃばしゃ飛んでる血しぶきですが、それを大作の映画でCG使ってリアルにはっきり表現させたのって、私は確か「トロイ」で見たのが初めてだったと思います。最初に鑑賞した時びっくりしたのを覚えてますから。傷口の、特殊メイクとは違うなまなましさもね。とにかく剣さばきと同時に傷口が開いて動脈血が派手にほとばしる映画というのは、「トロイ」が嚆矢でした(私の知る限りですが)。


この殺戮のリアルさが「トロイ」のおもしろいところなんですよね。人の死は綺麗事じゃないと、はっきり語っているところが。人体はもろく、破壊されれば命はすぐに失われる。人の人生など短くはかないものだが、その中でどう生きたかが重要なのだ、と。


もちろんそれだけではなく、家族のつながりの深さというか肉親間の愛情も細やかに描かれております。意外とね、男女でも恋人同士というより夫婦愛の方に重点がおかれていたりして。もちろん男女の恋など「感傷にすぎぬ」という味方をする傲慢な支配者もおりますが。


こういう人間関係の描き方と、血腥い描写をもっと増やしていくと、「トロイ」そのまま「ゲーム・オブ・スローンズ」につながるな、としみじみ思いました。


「トロイ」の場合は原作が古典だし、「トロイの木馬」だの「パリスの審判」だの有名なエピソードも多いし、神話もからんでくるし、で映画としての作品である「トロイ」として素直に評価を受けることが難しかったといういきさつがあります。「オレのアタシの知ってるトロイの話はこうじゃない!」みたいな不満が絶対出てくるのですね。


その点、「ゲーム・オブ・スローンズ」はそこまで有名ではないわけで、その点やりやすい部分があったのではないかと思います。「トロイ」も実はそうなんですが、「ゲーム~」もキリスト教の影響下にないところで話を進められますので、その点の自由度も高いんですよね。思う存分、「神は人間のことなど知ったこっちゃない」と書けますからね。運命に翻弄される登場人物達に救いを与える必要もないわけです。だから、将来何かをキッカケにいきなりキャラ全員の物わかりがよくなって、それまでのことを反省し改心し許しを請うて仲直りして平和のうちにめでたしめでたしで幕を閉じるという心配は、「ゲーム・オブ・スローンズ」に限ってないと言っていいでしょう。最後まで「そんなああああ!!!!!」で終わってくれるものと……それはそれでキャラに感情移入してると厳しいものがあるけど……ま、私は信じてます。原作次第ではありますけどね。


「トロイ」の中にもこんなセリフがありました。

「(敵同士、互いが互いの仇をうちあう)こんな戦いはいつ終わるの?」

「終わりはない。この戦いに終わりはないんだ」


「ゲーム・オブ・スローンズ」も視聴率とれている限り、果てしなく戦いが続くのでしょう。まるで現実の世界のように。


とにもかくにも、「トロイ」で注目していたデイヴィッド・ベニオフの才能が今やしっかり世に認められ、ちょっと嬉しい私です。