高額ギャラ、大スター競演…「エクスペンダブルズ3」にみる“映画の敵”(産経新聞) - Y!ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141101-00000537-san-movi
誰でも大スターを大挙動員して映画を作ればヒットすると考えるだろう。分かっていても実行しないのは、数々の問題が起こるからだ。ハリウッドを代表するアクション俳優たちが競演するシリーズ最新作「エクスペンダブルズ3 ワールドミッション」(11月1日公開)も例外ではなかった。
このシリーズは、「エクスペンダブルズ(消耗品軍団)」と呼ばれる傭兵(ようへい)チームの活躍を描いたアクション。脚本も務める主演のシルベスター・スタローンをはじめ、アーノルド・シュワルツェネッガー、ジェイソン・ステイサム、ジェット・リーといったアクション俳優たちが大挙出演している。今回はハリソン・フォードやウェズリー・スナイプス、アントニオ・バンデラス、敵役にメル・ギブソンを新たに迎えた。
「君の人生で一番過酷な撮影になるよ」
本作が長編2作目となる新人のパトリック・ヒューズ監督は、撮影前にスタローンからこう言われた。「でもウソじゃなかった。悪夢のようだったよ」と来日した監督は苦笑する。
なにせ、出演者はみな主役級のアクションスターばかり。「これだけたくさんの大スターが出ているので、みんなに見せ場を作らねばならない。だから最後のクライマックスは1時間ぐらいの長さになってしまいカットを余儀なくされた。それに脚本作りや撮影は各人のスケジュールに合わせる。ジェット・リーは3日間ほどしか撮影期間がなくて困ったよ」
さらに高額なギャラも発生した。「映画ってものは俳優に払ったギャラの残額で作っている。巨額の製作費がかかった大作とうたっても、ほとんどはスターのギャラなんだ」。ハリウッド映画とはいえ今回のギャラは破格だったようで、「スライ(スタローンの愛称)はもともとアナログ志向だが、これだけのキャストにギャラを払うので、なるべく高価なCGは使わないようにしようと話していた」と明かす。完成にこぎ着けたのは大物プロデューサーのアヴィ・ラーナーが果たした役割が大きい。「アヴィは直接スターに電話して交渉していた。彼のオフィスの壁には有名スターと一緒に撮った写真がいっぱい飾られているよ」
また、完成してホッとしたのもつかの間、8月15日の全米公開前に思わぬ問題が持ち上がった。インターネットのファイル共有サイトに海賊版がアップされ、多くの人々が視聴したのだ。いざ公開してみると初登場第4位という不本意な結果に。ヒューズ監督は「ものすごく影響したよ!」と憤慨した。「ネットに出回った2日後にロサンゼルスのカフェで並んでいたら、隣の若者がiPhoneで公開前の『エクスペンダブルズ3』を見ていた。あ、こりゃ駄目だと思ったね。そういうやつらにはエクスペンダブルズのお仕置きだ!」
オーストラリア出身のヒューズ監督は、長編デビュー作「レッド・ヒル」(2010年)にほれ込んだスタローンの鶴の一声で抜擢(ばってき)された。寂れた元炭鉱町を舞台に脱獄犯が警察へ復讐(ふくしゅう)する西部劇調の作品で、これも過酷な製作環境だった。「家を担保に4週間で撮った。配給会社もなくもだえながら作った。ベルリン国際映画祭のワールドプレミアで上映されハリウッドへの扉が開いた。2週間後にスタローンから『この映画の大ファンだ』とオファーの電話があったんだ」
「エクスペンダブルズ3」では、若者を集めた新生チームを組織するのが新趣向。世界を回って才能ある若者をスカウトするスタローンは、「七人の侍」の志村喬(たかし)のようだ。確かにシリーズ第1作の公開時に彼に話を聞いたら、「『七人の侍』をまた見直した」と言っていた。今年68歳のスタローンには、次世代への継承という思いがあったのだろう。
ヒューズ監督に本作を任せたのも、いわば“武者修行”。そこで、「エクスペンダブルズ4」の監督もやりたい?と聞くと「やらない!」と即答した。「この映画に携われて光栄だけど本当に大変だったんだ」とウンザリした表情を見せた。