死んだ俳優がCGで“復活”した…最新デジタル技術は無敵なのか「ワイルド・スピード」(産経新聞) - Yahoo!ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150418-00000515-san-movi
米カーアクション映画「ワイルド・スピード」シリーズに出演していたポール・ウォーカーさんが自動車事故で亡くなったのは、2013年11月30日だった。知人が運転するポルシェに同乗し、速度超過のためカリフォルニア州内で沿道の街灯と木に激突・炎上したのだ。同シリーズで愛車の日産スカイラインGT-Rを乗り回していたウォーカーさんと会ったのはその4年前。日本車への愛を熱弁してくれたナイスガイの突然の死=享年(40)=は衝撃だった。17日公開の最新作「ワイルド・スピード SKY MISSION」には彼の最後の雄姿が収められている。
プロデューサーのニール・H・モリッツは「彼には一人の男、父、そして友達として深い尊敬がある。それを台無しにするものは、スクリーン上に一切描いてはならないと思った」と語る。ウォーカーさんは死去前に撮影の大半を終えていた。残りの出演場面には外見の似た弟のケレイブとコーディが代役として参加。彼らの体にウォーカーさんの顔をCG合成するという最新技術が使われた。この作業を請け負ったのは「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズなどのピーター・ジャクソン監督が1993年に設立した、ニュージーランドの視覚効果製作会社WETA(ウェタ)。人間の動作をデジタル化するモーションキャプチャー技術を得意としている。「過去の作品の未使用映像や最新技術のおかげで、最高の映画的な“見送り”ができた」(モリッツ)。
ウォーカーさんの役は元FBI捜査官の凄腕ドライバー、ブライアンで、ヴィン・ディーゼル演じるドミニクの相棒。前作で犯罪組織のボスだった弟を重体にした復讐を果たそうとする兄(ジェイソン・ステイサム)がドミニクらと対決する。さらにパワーアップしたアクションはもちろんだが、シリーズを通して仲間たちと家族のような絆で結ばれてきたブライアンがどうなるかが本作の最大の見どころだ。
映画の撮影中に出演者が死去し、代役を立てて完成させた映画は少なくない。日本では1953年に阪東妻三郎さんが「あばれ獅子」の撮影中に脳出血で亡くなり代役を使った。個人的には約40年前に見たブルース・リーさんの遺作「死亡遊戯」(78年)が忘れられない。73年に急逝したリーさんが前年に撮影していた迫力ある格闘アクション場面を使って完成させた作品。当然、CG技術が発達していない時代だ、ドラマ部分は代役が演じたり過去の出演作から抜粋した場面を使用したのだが、ある場面で生前のリーさんの顔写真を代役に合成したシーンが出てきて、そのあまりの違和感に興ざめしたものだ。
故人ではないが、「ターミネーター4」(2009年)では当時カリフォルニア州知事だったアーノルド・シュワルツェネッガーが公務のため出演できないため、ボディービルダーの体にシリーズ1作目のシュワルツェネッガーの顔を合成したロボットT-800を登場させた。米ハリウッド・リポーター誌の電子版によると、帝政ローマ時代を舞台にした史劇「グラディエーター」(00年)では撮影中に名優オリバー・リードさんが心臓発作で急死したため、代役の体に未使用の本人の顔を合成して再現したという。さらに、ハリウッドでは何人かの俳優を3D(立体)映像で取り込みアーカイブ化(記録保存)しており、20年後に亡くなっても再現できるだろうと報じている。
こうなるとデジタル技術で不可能なことはないように思えるが、そうでもない。前述の「死亡遊戯」の雪辱なのか、ブルース・リーさんは2013年にウイスキー「ジョニー・ウォーカー」のCMでCG再現され話題になった。容姿の似た男性にデジタル技術で再現したリーさんの顔を合成したものだが、やっぱりどこかしっくりこない。製作したミル社のCEO(最高経営責任者)が「目の再現が最も難しい。リアルに見えるためのポイントは目だ」と語っている通り、CMのリーさんの目はテレビゲームのキャラクターのようで作り物感が漂っていた。
このCMの発表当時は「現世に蘇ってくれて感激した」という意見があった一方、禁酒していたリーさんの起用や、母国語の広東語ではない中国語でセリフを話すことで批判され、賛否両論だった。CGでの復活は嬉しいが、役者のイメージを壊してほしくないという気持ちも分かる。それは思い出の国民的アニメのキャラクターが企業PRをするナンセンスなテレビCMを見たときのガッカリ感と似ている。