あ、ちなみに最近見て一番おもしろかったのは「ジョン・ウィック」ですよ。ま、それはおいといて。
「ミケランジェロ・プロジェクト」は、映画は正直言って散漫な印象でね、最初の内は特にビル・マーレイとヒュー・ボネヴィルの区別がつけられなかったりして苦労しました(あとから「ダウントン・アビー」の御当主だと気づいて見分けられるようになりましたが)。彼らのみならず、登場人物の誰もが語られるべきエピソードの一部しか紹介されてないという印象だったので、どうせだったら最初からテレビシリーズにして各キャラのエピソードを丹念に描いた方が感動が深まったんじゃないかと思いましたよ。
とはいえ、おもしろくないわけではなかったです。特に物語としては後半の「宝探し」的な部分に焦点が当たってから盛り上がりましたし、私としては出てくる絵画に見覚えがあるものがあると、「この絵にこんな過去があったとは!」とびっくりもするし、でね。
それにやはり作品のテーマは崇高なものですよ。世の中にはたとえ命と引き替えにしても後世に伝えるために残さなきゃいけない文化というのが……たぶんあるんです。人類滅亡とどっちを選ぶかだったら、まあ美術品は捨てても人類存続の方を選ぶでしょうが。
ただちょっと、映画の方ではナチスがユダヤ人から略奪した美術品を取り戻すという方向にばかり目が向けられているようで、そこがちょっと気になりはしましたが。
映画だけでは何か物足りなかったので、「ミケランジェロ・プロジェクト」の原作を読むことにしました(ラッキーにも懸賞で当たったのです♪)。するとこれが原作の文章が下手なのか訳がド下手なのか知りませんが、とにかくひどい文章でね! なんちゅーか味も素っ気もない文がただ連なってるだけなので、早く読めるのはいいんですがどうしても飽きてきて途中で放り投げたくなってくるというシロモノ。何かの報告書を読んでるつもりで読み進んでおりますが、文章はともかく、内容は映画より詳しい分それなりにおもしろいのですね。
特に映画では触れられていなかった第二次世界大戦の初期の部分とか、さらにそれより前のナチの台頭の時代の話とか、大戦が始まってからの戦線がどう進んで行ったとか、参考になる記述がたくさんあったのが嬉しかったです。ちなみにこの時代、日本は枢軸国としてドイツと同じ側で戦っていたので、本で描かれている側にとっては敵でした。
ここでまたとんでもなく話は飛ぶのですが、最近テレビシリーズの「HAWAII:FiVE-O (ハワイ ファイブオー)」にはまっておりまして昼に放送してるのを録画して暇な時に診てるのですが、このハワイというのが日本が真珠湾に奇襲をしかけて米国と戦争を始めるに至った州なわけで、結構その第二次大戦がらみのエピソードが出てくるのですよ。で、先日見たエピソードに戦下のハワイ州が当時のドル札に「HAWAII」というスタンプを押して、ハワイ州でしかそのドル札を流通できないようにした、という話がでてきたんです。何故かというと、奇襲後に日本軍がハワイを占領してドルを接収しても、そのドルをアメリカ本土で使えないようにするためなんだそうで……。実際には日本はハワイを占領しなかったのでスタンプ押すだけムダだったことになりますが、要するに戦争というのは他国の領地を分捕ってそこの金も人も全てを勝った側が好きに使えるって事なんだと、現代に生きる平和ボケの私はショックを受けたのでありました。
話は戻りますが、第二次世界大戦でナチスドイツがやってたのがまさにそれなわけですね。日本だってハワイこそ占領しなかったけれど他のあちこちの国で同様なことをしていたのですよ。何故か映画の「ミケランジェロ・プロジェクト」にはその辺の言及がないんですが……あれ、日本用の編集なんじゃないかな(だからおもしろくないとか)。本の方には日本も敵側であるとしっかり書かれております。
で、原作の大体そのあたりを読んだ頃に見に行ったのが「ヒトラー暗殺、13分の誤算」だったのですね。本で読んだばかりだったので時代背景などがよくわかり、おかげで大変おもしろく鑑賞することができました。
ついでに言いますと、11月3日に私の大好きな映画「ワルキューレ」をBSで放送してたので、それをちらっと見たあとのことです。この「ワルキューレ」もヒトラー暗殺計画の話なんですが、これが「ヒトラー暗殺~」にもちょっとばかり関わってくるんで見といてよかったと思ったりして♪
その「ヒトラー暗殺~」の本編上映の前に流れていたのが「黄金のアデーレ」の予告編でした。そう、これも大戦中ナチに収奪されたクリムトの名画の話なのでで、「ミケランジェロ・プロジェクト」を見ておくのが大変いい予習になるなと思った次第です。
「ヒトラー暗殺、13分の誤算」は、これも実話だそうです。
ここで引き合いに出すのもナンですが、ほぼ同時代の話である戦車大好き映画の「フューリー」でブラピが演じた軍人より、役者の男前度は半分でも「ヒトラー暗殺~」の主人公の方が数段男らしいし人間としても格が上だと思いましたわ。もっともたとえ相手がヒトラーだとしても、時限爆弾による暗殺計画というのは立派なテロ行為なわけでして……歴史が判断するというのは、こういうことなのですね。当然この主人公、ヒトラーが存命な間は重罪人でした(今では記念切手も出る程、その存在を認められているそうです)。
この作品でおもしろかったのは当時の人々がナチスの思想にのみこまれていく……というより熱狂的に加担していく様子の描写ですね。何かがおかしいと感じる人達がいても、その数が減るにつれて誰も彼らの声に耳を貸さなくなり、異端者扱いし、排斥し始めるという姿が非常に分かりやすく描かれていました。これは過去のドイツの話ではなく、今でも、どこの国でも、どの民族でも、人間である限り容易に起こる事態だと私は受け止めました。だからといってそれを食い止めるためにテロというのは困るわけで……。人間というのは、なかなか進歩できないものでございます。せめて過去の愚行をくりかえさないためにも、せめてこうやって映画でもドラマでも見て考察したり反省したりすることが大切なんじゃないかと思います。
ところで「ヒトラー暗殺、13分の誤算」は皆さんドイツ語を喋るドイツ映画でした。
ドイツ映画、劇場で見るのしばらくぶりだなあと思って、前に見たのを思いだそうとすると出てくるのは「ヒトラーの偽札」とか「ミケランジェロの暗号」とかやっぱり第二次大戦を背景にした作品ばかり……。どれも原題にはヒトラーもミケランジェロも出てこないんですが……。ヒトラーはともかく、何故ミケランジェロ? 日本人なら大抵の人は知ってる芸術家だから?
タイトルにヒトラーもミケランジェロも出てこないドイツ映画で最後に見たのは「アイガー北壁」だったかな? これに出てくる兄弟の兄役が「ミケランジェロの暗号」に出てたの見て衝撃受けたものだけど……(「~暗号」の方はドイツ語喋ってましたが実はオーストリア映画でした)。
などと「ヒトラー暗殺~」のあとでドイツ映画を思い出しながら「エベレスト3D」を見に行ったので、おかげですっかり「アイガー北壁」のデジャヴでした。
あ、どちらも高い山に登る話です。標高が高いので雪と氷と強風が行くてをはばみます。おまけに酸素も薄いです。なのになんでそんな所にのぼるんだといわれれば……山があったらのぼりたくなるのが人間だからなんですよ。何人も人が死んだ過去を学ぼうと何しようと、それをやめることはできない。月に行ってみたいと思うように、人間の山にのぼってみたいという気持ちをとめることはできないんです。
「アイガー北壁」は1936年(だからやっぱりナチスが影を落としてます)の話なので、3970メートルの登山ですが現代とは装備も何もかも違いますので、1996年にガイドやシェルパや酸素ボンベや防寒具完備でエベレストに登るのと大変さにおいて(見てる分には)どっこいどっこいな感じが致します。むしろ満足な防寒着もなく、ハーケンやら何やら装備は自分で作らねばならず、しかも資金もないため新しいロープも満足に買えないような「アイガー北壁」の兄弟の方が命がけな感じは強かったですね。
「エベレスト3D」は、商業登山というものができていて、会社にお金を払ってエベレストへの登頂をグループで行うというシステムだったというのが「アイガー北壁」との一番大きな違いでしょうか。
でも結局、雪に氷に強風に氷点下の気温と低酸素という過酷な状況に人間が立ち向かうというどうなるか……という部分は時代や装備が違っても全く同じだったです。最終的に本人の体力次第っていうか、それよりも血液次第かも。ほら、酸素を身体の隅々に届けるのは血液だからさ……。エベレストのぼる前は自己血輸血とかしてヘモグロビン量増やしとけばいいんじゃないかしら? どっちにしてもあたしゃのぼりませんが。
それにしても「エベレスト3D」の構成は「アイガー北壁」によく似ていました。映画としては「アイガー北壁」の方がよくできているけれど、見てるだけで死にそうになるのはさすが3Dだけあって「エベレスト3D」です。それより痛そうだったのが「ヒトラー暗殺、13分の誤算」だったんですが。
というわけで、今は「黄金のアデーレ」を見るのを楽しみにしているところです。それから「美術館を手玉にとった男」かな? こちらは「モネ・ゲーム」を思い出しちゃいそうですね♪
でもその前に、大戦後の冷戦を背景に描かれる「コードネーム U.N.C.L.E.」を見なくっちゃ♪
ついでですが、最近の駄作ナンバーワンは「ギャラクシー街道」でした。こんな、登場人物を誰一人美しく撮らない作品、二度と見たくないわ。最近の三谷監督の撮る中年男の肌って、どうしてどれもあんな色なの???