第26回英国科学実験講座 クリスマス・レクチャー 2016
『宇宙でいかに生き抜くか』
『宇宙でいかに生き抜くか』、ですよ、なんと心惹かれるタイトルでしょう!
ここ数年、宇宙にを舞台にした傑作映画が何本も公開されています。
今年だと「オデッセイ」。
マット・デイモンが一人取り残された火星で必死のサバイバルを繰り広げる作品です。宇宙というより「火星でいかに生き抜くか」の映画でしたが。
2014年だと「インターステラー」。
マシュー・マコノヒーが人類の存亡をかけて宇宙の深淵に飛び込んで行く映画でした。ここでもマット・デイモンが一人取り残されていましたね♪ この作品では人間が生存できる環境がいかに限られたものであるかが雄弁に語られていました。
そして2013年が「ゼロ・グラビティ」。
アカデミー賞をたくさんとった大傑作。サンドラ・ブロックが主演女優賞こそ逃したものの(前に一度とっているからに違いない)、その素晴らしい演技で宇宙空間に投げ出された絶望的な状況の恐怖を観客に印象づけました。
そう、宇宙に投げ出されたら、人間は生きてゆけない。
何故ならそこには空気がないから。
けれども空の高みに到達するのは太古からの人間の夢。
その夢を生きたままかなえるにはどうしたらいいのだろう。
それを考察するのが今回の英国科学実験講座 クリスマス・レクチャー 、 『宇宙でいかに生き抜くか』だったわけなのです。
ここで夏なのになんで「クリスマス・レクチャー」か、という疑問にお答えしましょう。私も先日まで知らなかったんですけどね。英国ではクリスマスシーズンに子ども達へのプレゼントとして行われているのでその名前がついたんだそうです。
実は私、「クリスマス・レクチャー」という言葉を見た時ピンとひらめいたものがあったんですね。これはファラデーの「ロウソクの科学」のアレだ、と。
「ロウソクの科学」というのは、ファラデー先生がクリスマスに子ども達を集めてあたかもマジックの如き科学実験を見せては、それが何故そうなるのかということを分かりやすく説明したのをまとめた本で、私の子どもの頃の愛読書でした。
ロウソクの科学 (角川文庫) 562円 Amazon |
この本があまりにおもしろかったおかげで私はすっかり科学好きになってしまった程です。
ちなみにこのファラデー先生というのは、昔電荷の単位にその名を使われていた有名な化学・物理学者であるあのマイケル・ファラデーその人でございます。
そんなに偉い学者先生が子ども達のためにこんなに楽しくおもしろく科学を解説してくれるなんて、なんて羨ましいんだろ、英国はと思ったものですよ。しかもうんと昔から。「ロウソクの科学」の元になったのは1860年のクリスマス・レクチャーの講義ですから。そもそもファラデーが始めたのが1825年というんですから、かれこれ190年に渡る歴史があるんですよ。
はい、だから私は正式な名前は知らなかったものの、英国ではクリスマスになると面白い科学の話が聞けるということはずっと覚えていたわけで、それが「クリスマス・レクチャー」という文字を目にした瞬間パチッと組み合わさったわけですね。そしてその「クリスマス・レクチャー」が日本でも行われているということを26年間も知らなかったということに大きな衝撃を受けたのです。なんだよ、そんな素晴らしい催し、日本でやってるんだったら誰かもっと早く教えてよ! と当たり散らしたくなったものです。
まあ、でも、今からでも遅くないや、と気を取り直し、今回の情報元である英国大使館の抽選枠に応募したところ幸いにも当選し、去る7月17日に東京公演の行われる東京工業大学レクチャーシアターにはるばる出かけていったのでございます。
東工大に来たのはこれが初めてだったのでワクワクしましたね♪
なんとなくキャンパスの雰囲気が我が母校に似ているので(植生全然違うけど)そこはかとない郷愁を覚えたりして。
広いキャンパスの中、迷いそうになりながらようやくたどり着きました。
なんと、ファラデー先生のお出迎え! 感激ですわ!!
レクチャーシアター。
内部は写真撮影禁止だったのですが、客席(?)がすり鉢状に段々に並んでどこからでも見やすくなっています。映画で見る昔のヨーロッパの大学の教室の雰囲気ですね。
もちろん正面にはスクリーンがあって、そこはきっちり最新式。
スクリーンと座席の間にはかなり広い空間があって、そこで実験が行えるようになっていました。
はい、「実験」というと、何かこう、大きな机の上に試験管とかフラスコとか一杯のってていろんな色の試薬が入ってたり白い煙がもくもく出てたりとか、そんなイメージだったりしません?
でもここで行われるのは「クリスマス・レクチャー」。子ども達に科学のおもしろさに目覚めて貰うための講義です。だから実験には身体を目一杯使うのです。そのための広い空間なんですね。
聴衆のほとんどは子ども連れのご家族で、そのお子様達に向かって主催者が頼みます。
「実験の時に手伝ってくれるボランティア募集といったら、みんな手を挙げてくれるかな?」
はーい! と一斉に大きな声があがるんですよ。ほんと、私も子どもだったらボランティアしたかったわよ。
準備も整い、いよいよ「クリスマス・レクチャー」の始まりです。
が、長くなるので続きはこの後で。
「英国アンバサダープログラム」でお招きを受けて参加しました。