アクションだけじゃない!『マッドマックス』シリーズが凄いワケ(dmenu映画) - Yahoo!ニュース https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190308-00010001-dmenueiga-movi @YahooNewsTopics
>2015年に公開され、世界的なヒット作となっただけでなく、日本でも映画ファンを中心に絶賛を超える“熱狂”が吹き荒れた『マッドマックス 怒りのデス・ロード』。
御年70歳を超えるジョージ・ミラー監督が描く独特の世界観と激しいバイオレンス描写、そして想像を絶するカーアクションは、数あるハリウッド大作の中でも異彩を放っている。
なぜ本作は絶賛されただけでなく、これほど熱狂的に支持されたのか。映画の枠を超えて様々なメディアに影響を与え続ける、メル・ギブソン版マックス3部作とともに、『怒りのデス・ロード』の熱狂を振り返る。
【あらすじ】
政府が弱体化し、無法者がのさばる近未来。特殊警察のエース隊員であるマックス(メル・ギブソン)は、凶悪犯である暴走族を死に追いこむが、仲間を殺された彼らはすぐさま彼に報復し、マックスの相棒が再起不能にされてしまう。その被害に恐怖を感じたマックスは愛する妻子のために辞職を申し出るが、上司に引き留められ、家族で長期休暇をとって旅に出ることに。そんな中、マックスをつけ狙っていた暴走族が妻子を襲撃し、息子は殺され、妻は重体となってしまう。復讐の鬼と化したマックスは、暴走族を壊滅させるべく行動を開始する――
日本にオーストラリア映画の存在を大きく知らしめた作品が、1979年公開のシリーズ1作目『マッドマックス』だ。
ジョージ・ミラー監督の長編デビュー作でもある本作は、斬新な近未来設定と激しいバイオレンス、そして激しいカーアクションが話題となり、オーストラリア国内で大ヒットを記録。続く日本でのヒットを皮切りに、世界的大ヒット作品となった。
主人公のマックスを演じたのは、当時まだ無名の俳優だったメル・ギブソン。オーディション前日に乱闘騒ぎを起こし、そのままの姿で会場に現れたことで、その荒々しい風貌が監督の目に留まり主演に抜擢されたという逸話がある。 本作は“予算と興行収入の差が最も大きい映画”としてギネスブックに載ったほどの低予算作品。しかし、そんな中でもミラー監督のこだわりは随所にあふれており、決して低予算だから偶然ヒットしたというわけではないことが、次作で証明されることになる。
【あらすじ】
世界大戦により、文明と秩序だけでなく地球環境も破壊され、暴力が支配する世界。貴重な石油資源を巡って略奪が繰り返される中、マックスは愛車で荒野をさすらう日々を送っていた。そんななか、マックスはガソリンを狙う残忍な暴走族集団と攻防を繰り広げる製油所の一団と知り合う。彼らは遠く離れた“緑の地”を目指しており、大量のガソリンを持ち出すための大型トレーラーを必要としていた。そんな彼らと取引をしたマックスは、危険を冒してトレーラーを持ち帰ることに成功。報酬としてガソリンを手にしたマックスはその場を離れるが、暴走族の襲撃に遭い死にかけたところを、製油所の一団によって救われる。やがてマックスは、暴走族に追い詰められた彼らを製油所から脱出させるために協力していく――
前作のヒットを受け、製作費が10倍に増加した『マッドマックス2』(1981年)。前作からの世界観や設定は飛躍的に発展を遂げ、続編というよりも、これこそミラー監督が描きたかった『マッドマックス』と言える作品に仕上がっている。
ちなみにアメリカでは前作の知名度が高くなく、公開時は『MADMAX2』ではなく、『The Road Warrior』というタイトルで公開された。しかし、本作はアメリカでもヒット。寡黙なヒーローをワイルドに演じたメル・ギブソンは一躍スター俳優の仲間入りを果たす。
本作の素晴らしい点を列挙すればキリがないのだが、荒廃した世界、圧倒的な暴力描写や凄まじいカーアクション、個性的すぎるキャラクターたちは後発の作品に多大なる影響を与え、日本でも『北斗の拳』が影響を受けたとされているのは有名な話。まさに映画史に残る傑作となった。
【あらすじ】
ラクダの馬車で砂漠をさすらうマックスは、突然現れた親子にラクダと乗り物を奪われてしまう。なんとか徒歩で近くの町の入り口にたどり着くが、そこは物々交換の町で、タダでは入れてもらえなかった。そこにマックスの能力の高さを見抜いた町の女支配者アウンティ(ティナ・ターナー)が現れ、彼女が対立するもう一人の支配者マスター(アンジェロ・ロシット)/ブラスター(ポール・ラーソン)を殺せば、旅に必要な物資を渡すとマックスに提案する。それを受けた彼は、サンダードームでの殺し合いでマスター/ブラスターを追い詰めるが、とどめを刺さなかったことで街を追放され、砂漠に放り出されてしまう。マックスが砂漠で力尽きそうになった時、オアシスに隠れて暮らす子どもたちの集団が彼の命を救う――
前作から4年後、1985年に公開されたシリーズ3作目の『マッドマックス/サンダードーム』。前作のヒットを受け、満を持しての公開であったが、評価は前作より芳しくないものとなった。前2作品の特徴でもあったカーアクションは激減、過激なバイオレンスへの期待とは裏腹に、後半は子どもたちを救うファンタジーテイストにシフトしている。観客が期待した内容と隔離していたことがあまり評価されなかった大きな要因だろう。
さらに追い打ちをかけるできごととして、本作のロケハン中、ミラー監督の盟友で前2作のプロデューサーでもあったバイロン・ケネディが事故により急逝。シリーズを共に支えてきた盟友の死は、ミラー監督にとって計り知れないダメージだったようで、本作は唯一の共同監督作となっている。
不遇の作品となった本作でシリーズは終わったかに思われたが、30年の長い時を経て、ジョージ・ミラー自身の手により渾身の最新作が登場する。それが『マッドマックス 怒りのデス・ロード』だ。
2015年、紆余曲折を経たシリーズの新作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』が公開されたが、その構想は15年にも及び、撮影が開始されるまでも困難を極めた。
2001年にオーストラリアで行われるはずだった撮影は、同年に起きたアメリカ同時多発テロの影響で延期。さらにイラク戦争による世界情勢やオーストラリアの経済不安も重なって、制作そのものが一度は中止となってしまう。
10年の時を経て、2011年になってようやくオーストラリアの荒野で撮影準備に入り、スタントのリハーサルまで済ませたところで、まさかの大雨に遭遇。荒野だった場所に花が咲いてしまうというアクシデントまで発生した。結局2012年にアフリカのナミビアに撮影地が変更され、ようやく撮影開始となる。
度重なる延期を経て、シリーズの主演を務めてきたメル・ギブソンは降板。前作から長い時間が経過したなかで、映像技術は格段に進化し、ハリウッド大作はCGを多用する時代へと変わっていた。70歳のミラー監督が今の時代に勝てる面白い作品を撮れるのかという不安はファンの間にも少なからず存在し、公開前は新作への期待は懐疑的なものが少なくなかった。
【あらすじ】
荒廃した砂漠の世界を愛車でさすらうマックス(トム・ハーディ)は、神と崇められる独裁者イモータン・ジョー(ヒュー・キース・バーン)率いる武装集団に拉致され、彼らの砦に連行されてしまう。そんな中、武装集団の女隊長であるフュリオサ(シャーリーズ・セロン)は、ジョーの子どもを産むために幽閉された女性たちを解放するため、密かに女たちをトレーラーに乗せ、幼少時代を過ごした“緑の地”を目指す。しかし、背後には裏切りに気付いたジョー率いる大軍が迫っていた――
難産の末に生まれた新作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』。それは、紛れもない“本物”だった。
ジョージ・ミラー監督が現代に描き出す終末世界は、“独特の世界観”などという言葉では言い表せない代物。砂漠にロックが鳴り響き、敵の返り血を母乳で洗い流す世界。そこにふさわしい表現があるとすれば、「狂っている」が最もしっくりくるだろう。
ストーリーは“行って帰ってくるだけ”のシンプル構成にも関わらず、猛烈なスピードのアクションと圧倒的なバイオレンスを盛り込み、観客の興味を引くドラマが語られている。作品の世界観を言葉で説明せず、圧倒的な情報量のビジュアルにそれを盛り込み、「アイツはきっとこういうやつに違いない!」と、バックストーリーを観客に想像させる余地さえも残している。
キャストについても、新マックスに抜擢されたトム・ハーディは、メル・ギブソンと同じ“危うさ”を秘めており、さらに1作目で暴走族のボスだったヒュー・キース・バーンがイモータン・ジョーを演じたこともファンは嬉しいポイントだった。 特筆すべきは、同作の真の主人公ともいえるフュリオサを演じたシャーリーズ・セロン。髪を丸坊主に刈り上げ、油で顔を黒く塗ってもなお美しい姿もさることながら、強い信念を持つ隻腕の女性を見事に演じているのはさすがの一言。
本シリーズは、どの作品も世界観は同じだが、ストーリーが続いているわけではない。どれから観ても問題ないので、興味がある人はぜひ今からでも『マッドマックス』の世界に飛び込んでほしい。そこには暴力と野心にあふれ、荒廃した、美しい世界が待っている。
疾走感あふれる音楽、徹底した美意識で統一された圧倒的な世界観、超個性的なキャラクター、猛スピードのアクションとバイオレンス、それらをより際立たせるために使われる最新の映像技術。決して錆びついてなどいない、やはりジョージ・ミラーは唯一無二の存在だった。