78年のオリジナルにリスペクトを捧げた新作が登場。『ハロウィン』でマイケル・マイヤーズ復活!(紀平照幸) - Y!ニュース https://news.yahoo.co.jp/byline/kihirateruyuki/20190410-00121853/
1978年のジョン・カーペンター監督作品『ハロウィン』と同じタイトルですが、リメイクやリブートではなく、続編。それも『ハロウィン2(劇場初公開時題名『ブギーマン』)』以降、数多く製作された続編をなかったことにしての、第1作に直結した正当な続編という位置付けです。
とはいえ、若干の設定変更がありますので、まずはそこからご説明しておきましょう。第1作のラスト、銃撃されてバルコニーから転落したマイケルはいずこかへ姿を消してしまいましたが、本作では精神病院に収監されているところから始まります。姿を消した後、何らかの形で逮捕され、病院に収容されたことになっているのです。予備知識なく観ると一瞬混乱しますが、ここだけ押さえておけば、あとは1作目の忠実な続きが語られます。
2018年、イリノイ州ハドンフィールドを襲った78年のハロウィンの惨劇から間もなく40年。二人のジャーナリストが事件の真相を探ろうと、精神病棟のマイケル・マイヤーズを訪ねます。主治医のサルテインによれば、マイケルはこの40年間、一言も話さず一切の感情を表に出さないということでした。二人は持参した、マイケルが事件当夜に被っていた白いマスクを彼に見せますが、やはり反応はなし。
二人は次に事件の唯一の生き残りであるローリー(ジェイミー・リー・カーティス)を訪ねます。しかし事件以来トラウマを抱え続けた彼女は気難しく攻撃的な人間に変わっていて、取材を拒否します。ローリーには娘のカレン(ジュディ・グリア)と孫のアリソン(アンディ・マティチャック)がいましたが、少女時代のカレンに戦闘訓練を強要したことが原因で母娘の仲は決裂、かろうじてアリソンだけが祖母を心配していました。
ハロウィン前夜、別の病院に移送されるマイケルを乗せた護送車が横転。彼は姿を消します。やがて二人のジャーナリストの遺体も発見され、そこにはあのマスクがありませんでした。ニュースを聞いたローリーはマイケルの仕業と直感。家族を守ろうと決意しますが、アリソンはそれを信じずハロウィン・パーティに出かけてしまいました。そしてハロウィンの夜、再び惨劇の幕が上がるのです…。
製作総指揮とキャラクター原案、そしておなじみの印象的な音楽はジョン・カーペンターが担当。その曲に乗せて登場するタイトルバックからして第1作への見事なオマージュになっています。マイケルに扮するのは1作目と同じニック・キャッスル。第1作で犠牲者となったPJ・ソールズが別の役で特別出演しているのもオリジナルに敬意を表したもの。少年時代のマイケルが姉のジュディスを殺害するシーンの映像は前作のものをそのまま使用、ルーミス医師(故人になっている設定)の声もドナルド・プレゼンスのものが流れます。
監督(兼製作総指揮、共同脚本)は『ボストン・ストロング ダメな僕だから英雄になれた』のデヴィッド・ゴードン・グリーン。ところどころに第1作を意識した(本歌取りと言っていいと思う)カットを散りばめてファンサービスにつとめています。とはいえ、単に前作を繰り返しただけのものにはせず、マイケルをめぐって人間サイドの思惑が絡み合ったりする新味もあるのです。何よりも注目なのがローリーの変貌。自宅を要塞化し、自らも完全武装。すっかり“闘う女”になっています。このあたり、襲われるヒロインが戦士に成長した『エイリアン2』や『ターミネーター2』に立ち位置が似ていると言えるでしょう。
さて、本作では以前にあった「マイケルとローリーが血縁関係」という設定は語られていません(これは2作目で初めて登場した設定だったので)。したがって、マイケルが連続殺人に至る動機はまったく不明のまま。何も語らず、感情を表さず、ただ淡々と殺戮を繰り返すマイケルは「絶対悪」「純粋なる邪悪」の象徴として描かれているのです(このあたりがロブ・ゾンビのリメイクと最も違う点)。
1作目の『ハロウィン』のファンで、その後の続編やリメイクにいまひとつの不満を感じていた人にも、きっと満足してもらえるだろう、待望の新作です。
(『ハロウィン』は4月12日から公開)
配給:パルコ