クリス・スネイク・プリスケン@paxomnibus
「Arc」には一般の人がインタビューを受けているようなシーンが２カ所ある。導入部では「何故プラスティネーションを希望するか」を遺族達に語らせているのがそれ。それまでの映画の流れをぶち切ってインタビュー映像がいきなり始まるように見えるのは、たぶんそれが狙いの演出なのだろう。
2021年07月14日 16:09
しかしこの遺族達、見るからにソレと分かるぐらい変なのだ。見かけはものすごく気を使って「ごく一般の人」風にしているのだが、セリフが変。劇中で一方的に自分の事情を話すよう仕向けられているとはいえ、理由をきちんと「説明」する態度が伺えない。ひたすら「お気持ち」の表明ばかり。
2021年07月14日 16:09
相手はプラスティネーション処理を承る側だから何を言われてもうんうんと慈母の如き表情を作って聴いているが、双方どうにも不自然なのだ。そこだけ映画じゃなくてマンガになった感じ。マンガならいかにもああいうキャラを何人か出してぽつんぽつんと語らせるだろう。同じ事を繰り返して。
2021年07月14日 16:09
そう考えると本作はマンガのセオリーにのっとって作られた映画なのかもしれない。映画として見ると妙な部分もマンガなんだと考えると腑に落ちる。ヒロインの髪や服に一貫性がないことも、そもそも内面がないことも、男性のマンガ家が描いたと思えば納得か。でも私、映画見に行ったんだけど。
2021年07月14日 16:09
マンガを映画にコンバートしただけではリアルさに欠けるとは監督も気づいていたのだろう。それを埋めるために後半に出てくるインタビューはロケ先で見つけた人物にその人の話を聴いたのをそのまま使ったような感じである。確かにリアルだけど、それ、芝居じゃないんじゃない？
2021年07月14日 16:09
そのインタビューシーンは映画「インターステラー」に出てくる「あの頃は世界全体がそんな感じで……」と記憶を頼りに語る御老人達の姿を映している場面によく似ている。「インター～」ではその際に感じた違和感がラスト辺りで解消されてカタルシスを得るのだが、「Arc」には当然そんなものはない
2021年07月14日 16:09
まあそんな現地調達のエキストラみたいなご老体方に混じって風吹ジュンとか小林薫とか重鎮が登場してきて、ふわふわしてた作品全体を文字通り地につける役目を果たすわけですが、前半の寺島しのぶも含めリアル感を俳優さんご本人達の個性や存在感に頼ってるだけって、作品としてどうなのと。
2021年07月14日 16:09
老人介護施設が舞台になってからも描写が綺麗事すぎるんですよね。そこで働いてるのは若くて美しい女性がほとんどで、いつもこざっぱりした制服に身を包んでニコニコしている。不治の病や認知症や老衰や死と常に向き合ってる現場がそんなわけなかろう。どこまでも「絵に描いた」世界観なんですわ。
2021年07月14日 16:09
マンガといえば「からくりサーカス」に似たシーンもありました。プラスティネーションの処置を受けた遺骸がたくさんの白い糸で枠の中に吊されてるんですが、その糸を操ることで様々な動きが可能になるんですね。まさに糸操りのからくり人形（マリオ… https://t.co/8pFDMXiw5z
2021年07月14日 16:09
死体につながる糸を駆使して最終的に生きてる姿のような形に留め置くワザというのを寺島しのぶと芳根京子が披露していて、その動きはバレエのように大胆で掛け値なしに美しかった。これをもっと見せてくれるのかと導入部では本当に期待したんですけどねえ……
2021年07月14日 16:09
ただし死体が実際に糸で動いているわけじゃありません。あの糸操りで動くのは不可能だから。死体役はプロのパントマイマーさんあたりが演じているんでしょう。 いつもピンとしてる所を見るとゴムかピアノ線なのかも（←ＣＧだろ） https://t.co/LNjx500sZ9
2021年07月14日 16:10
この映画、操り糸もそうですが、「線」の美しさに拘ってます。いろんな場面に「線分」で構成されたものが出てくる。不思議なんですよね、タイトルは「Arc」すなわち「円弧」なのに直線ばっかり出てきて。ま、地球上では「平面」も全て球体上にあるので直線だって「弧の一部」には違いないんですが。
2021年07月14日 16:10
作品上でよく語られる言葉に「私達の乗った船」というのがあって、それは「ノアの方舟」を暗にほのめかしてるのかなと思ってたんですが、方舟は「アーク」でも「Ark」なのでタイトルとは関係ないのでした。人類の先行き、行く末を考えてるようで、何もない作品でありました。
2021年07月14日 16:10
