まあしかし、どれだけ胸周りにゆとりのあるシャツを仕立てて貰っても常に第二ボタンまで外してるんだから意味ないよね、ラーマ。君がボタンきっちりとめてるのは赤い制服の時だけだけど、ボタンやら肩やら二の腕やら随分きつそうだから、あれは支給品なのかな? どうせ費用は自分持ちだろうけど 

 

インド植民地の事情は知りませんが、もっと古い時代を舞台にした『シャープ』(陸軍)とか『マスターアンドコマンダー』(海軍)等を読むと制服は自費だったみたいなので。その頃なら入牢中でも金次第でまともな食事を届けて貰えるという記述もありました。ラーマもそれで栄養とれてたならいいのにな 

 

支給品にXL以上無いからあんなにパッツンパッツンなんでしょうね。有り難いです

 

ワタクシいつもあのギュウギユウ詰めの二の腕見てはさぞやキツいだろうと心配しているのです。もう、早く脱いで、と。
 
ラーマのワードローブ、シャツが何枚も重なっていたけれど、色調が全体的にパステルカラーだった。パーティで女性達が着てるドレスもほぼパステルだったけれどそれがその時代の流行だったからそうしたという記事を前に読んだ。つまり、ラーマが着ているシャツの色は当時の流行の最先端ってこと! 
 
きっと出入りの仕立屋の奥さんがラーマのファンで、季節事に新作の布地持ってやってくるのよ。 「ラーマさん、見本を作りたいのでサイズを計らせて」 と言って。できあがったシャツはラーマさんに差し上げますからと、メジャー持って採寸放題。私もしたい。ラーマの胸回りにメジャーを差し渡したい 
 
それで前のシーズンとほとんど変わってませんね、とかいって同じ型紙で新作のシャツを旦那に作らせる訳ね。
夫「おい、お前、これはまたタダでラーマにやるのか?」
妻「そうよ。ラーマがこのシャツ着て歩いてるだけで宣伝になるんだから。そうだ、第二ボタンまで外して着るように言っとかなきゃ」
夫「だけど最近来るのは奥様方ばかりじゃないのか?」
妻「そうよ。ラーマが着てたのと同じシャツをウチのダンナのサイズで、って注文が引きもきらないの」
夫「だけどこないだだってロバートさんちの奥さんが『なんか思ってたのと違った』って返品できるかどうか聞きに来てたじゃないか』
妻「思ってたの違ったのはシャツじゃなくて夫の方じゃん、図々しい。いいわ、これからは返品は受け付けませんって最初にはっきり言っとく」
夫「だけどお前、毎シーズン最新つ ってずっと同じデザインなんだぞ。まずくないか?」
妻「ラーマの美貌は日々最新を更新してるんだから全ッ然まずくない!」
 
みたいなことがあったかもしれません。 奥さんのサービスでズボンもダブルのスーツも手頃な値段で仕立ててもらってたかも。 奥さん、採寸する時、念には念をいれたことでしょう。
 

デリー市内で潜入捜査(?)中のラーマのシャツはどれも胸元ゆったりしてて全然きつそうじゃないし肩も腕もゆとりがあるから、たぶん専用の型紙で仕立てて貰ってるんですよね。パーティーに着ていったスーツも多分同じテイラーで作ってますよね。アニキ、実は服道楽で給料全部服に使ってたんじゃないかと…

 

ラーマが隙のない洋装してるのって、職業もあるしけど実は好きだったからじゃないかな~ってずっと思ってるんですよ。故郷を離れる時から同じ形のシャツを身につけてたし。自分達が虐げられるのは文化・文明において劣ってるからだという思いが逆に英国に対する憧れとなった面もあるのかな、と


そういう思いは実は日本が抱いていたものなんですけどね。幸い日本は植民地化はされなかったけれど、結構「英国の文化・文明」に対する激しい憧れってのは明治以来あったわけじゃないですか。夏目漱石の文学とか。 自分達を支配しているけれども、進んだ文化・文明を取り入れたいとラーマも思ってた 

 

映画に限定しての話ですけれど、ラーマが洋装してた時点で彼の「解放」っていうのはひょっとしたらインドが英国的文化を全面的に受け入れて先進国(当時そういう言い方はないと思うけれど)になることだったのかもしれない。でもその大英帝国の汚さ、卑劣さをその後ラーマは身を持って知ったわけです 

 

そうした時にビームが自分にラーマ神の如き装いをーー他に何もなかったからとはいえーーさせたのって、ラーマにとってのコペルニクス的転回だったんですよね。英国文明の象徴である小銃にばかり拘ってた自分の目を覚まさせてくれたというか。自分達が本気になったら弓矢と槍で充分相手斃せるんじゃん 

 

革装丁の英語の本もたくさん読んだけれど、結局ラーマの心に残り口ずさむぐらい焼き付いていたのはタゴールの詩句で英国の詩人の言葉ではなかったわけで。ラーマがシータを思う時の言葉がそれだったのでしょう。結局ラーマに自分の魂はインドの大地と共にあると気づかせてくれたのはビームだった。 

 

いや、そういう設定で映画作ってるんだからそうなんですけど、それにしても美しいな、と。上手い下手じゃなくて、美しいんですよ、ラージャマウリの映画は。そこに痛みを伴うから余計に。 彼ってシェークスピアの再来じゃないですか?
 
 
 

 

ラーマの着こなしポイントといえば黄丸で囲んだ部分ですね。シャツが透けてる! じゃな~く~て~、シャツの裾をブラウジングさせてるトコ。必ずこうやって綺麗なゆとりを見せて裾をズボンに入れてるの。でまたラーマの腰の位置が高いから、女性のウエストみたいに細く優美に見えるのだと思います。

 

 
それでまたこのシャツ(複数)が忠実でさ、ラーマが川に飛び込もうが人間ピラミッドに登ろうがナートゥを踊ろうがアクタル背負おうが、不屈の根性ではみ出してこないのよ(ビームの場合は平気ではみ出ます)。ほぼ常に同じ形にゆとりを保ったままラーマの姿をひきたててます。なんて凄いシャツなんだ!