「ごはん大好き!」 ~ NEO ~-ボクが守る



 

 ボクが はじめて このドッグランに あそびに来たのは


 生まれてから 7か月くらいたったときだ



 とびらをあけて 一歩 脚をふみいれたとたん


 たくさんの せんぱいワンコたちに


 いっせいに 追いかけられた


 ボクより 大きな ワンコたちに


 すごいスピードで 追いかけられた



 こわくて こわくて 


 しんぞうは とんでもなく ばくばく していた


 それはもう この世のものとは 思えない こわさだ


 だから ボクは しにものぐるいで にげまわった



 そんなとき ボクをたすけてくれたのが


 シナモンちゃんだった


 ボクとおなじ イングリッシュコッカー・スパニエル


 シナモンっていう名前の 小さくて きりりとした 女の子



 ボクを追いかけてきて ボクのしっぽや耳や背中を


 クンクンしている せんぱいワンコたちを


 かたっぱしから 遠くまで追いはらって くれた


 ボクは シナモンちゃんの やくどうかんにみちた走りに


 ただただ みとれていた



 それから ボクとシナモンちゃんは きりかぶの近くの


 囲いのあるばしょに 走って にげて


 もう だれも 追いかけてこないのを


 かくにんしてから ふーっと ためいきをついた



 何カ月かがすぎて せんぱいワンコたちが


 もうボクを追いかけなくなった


 ボクがビビリわんこで キケンじゃないことを


 かくにんできたし 


 このドッグランの仲間だって みとめて くれたんだ



 ボクたちは もう ドッグランの中の 囲いのある ひみつきちに


 にげこむこともなく どうどうと あそぶことが できた



 陽ざしが たっぷり あふれる中で


 どろんこになって 追いかけっこ したり

 

 プロレスごっこしたり


 じかんとか そんなの すっかり忘れて


 日ぐれまで あそびつかれるまで いっしょに いたね




 こわくて たまらなくて ばくばく ばくばく していた


 ボクのしんぞうは  いつしか


 楽しくて たまらない ばくばく ばくばく に


 かわって いたんだ




 それなのに


 いつのころからか シナモンちゃんは もう


 ここには あそびに こなくなった


 会えなくなって 3年半 もの つきひがながれた




 ドッグランの前の 道のむこうがわに ある


 広々した チューリップ畑のほうから


 ひょっこり シナモンちゃんが あらわれるんじゃないかって


 ボクは ときどき たちどまって 見ているんだ




 シナモンちゃんが たすけて くれたから


 ボクは ドッグランにも なじんで


 いまでは 楽しいばしょに かわったし


 こわかった 大きなワンコたちも


 へいきに なって 仲良しに なれた




 シナモンちゃんに ありがとうを 伝えられなかったことは


 ボクのこころのなかに 小さな ささくれをつくって


 ときどき しみて ズキズキする けど ・・・ 


 いたみが ボクを つよくしてくれるような 気がしている 




 いつか ボクも 


 だれかを 守ってあげられるように


 

 きっと なるからね


 





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