ボクが 家族と暮らしはじめて 半年が過ぎたころ
ボクのこと ベランダ好きなんだと 思ったボクの家族は
おうちを買って来て ボクの名前を書いて ベランダに置いた
木で出来た 三角屋根の りっぱなおうち
これからは ボクだけ このおうちで
眠ることに なるんだろうか ・・・ ?
そんなの いやだ! ぜったい ぜったい いやだ!
不安になった・・・
ベランダに ボクのおうちが 届いた日から
ボクは ガジガジ ガジガジ ガジガジ
おうちを こわしはじめた
ボクの家族は くびをひねって
おもちゃと 勘違いしているのかな と
のんきに 笑って見ていたけれど
ボクは本気だった ものすごく本気だった
ひとりぼっちは いちばん にがてなんだ
ベランダのおうちを こっぱみじんに こわしたなら
そのことが 伝わるかも しれない
だから ボクは 次の日も その次の日も
根気よく すこしづつ おうちをこわしつづけた
とがった屋根が丸くなって おうちのあちこちがボロボロになった
ある日のこと
このおうちに入るの いやなんだね と
ボクの気持ちに 気づいてくれた
そして おもちゃにしても いいよ と いってくれた
ボクは おうちをガジガジ ガジガジ するのを やめた
ベランダは 好きだけど
ひとりで ボクだけのおうちに 入るのは 好きじゃない
みんなと いっしょに いたいんだ
いまでは いわなくても
甘ったれのボクのこと わかってくれている
5年前の ちょうど いまごろ
秋の風が みずみずしくて 空が美しく青く澄んでいたころ
あんなにも不安で ボクの頭の中は どんより曇ってたけど
ベランダのおうちは ボクをひとりぼっちにするためじゃなかった
暑い日や寒い日 ちょっと入るだけの おうちだった
必死で ガジガジしたことも
いまなら 笑って おもいだせる
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