第36話:へびが出た!
-いつもならへびさんと一緒に遊べるのに。残念!―
写真①
『キャー! 来てちょうだい!!』
じゅっぺちゃんの奥さんの大きな声がしました。
『来てちょうだい! 来てちょうだい!』
じゅっぺちゃんは声のする玄関へ大急ぎで・・・。
玄関先の植木鉢の間からヌウーと大きなへびが顔を出してます。
まぁ! なんと見覚えのある青大将君ではありませんか。
去年の秋、冬眠前に庭先でバイ バイしたへびさんと再会です。
じゅっぺちゃんは『こんにちは!』と挨拶しました。
そして、
へびさんも『お久しぶり!』と、
舌ベロをチョロ チョロっと 出してニッコリ笑いました。
写真②
お互いに挨拶がすむと。
へびさんは懐かしそうにあたりを眺めながらお庭のお散歩です。
昨年より『一回り大きくなったナァー!』とへびくんを見ながらじゅっぺちゃんは頼もしく思いました。
近くの田んぼでは田植えも終わって蛙さんの声も賑やかです。
草むらにはトカゲさんや昆虫もたくさん見かける5月ですから、
冬眠から覚めたへびさんはご馳走をいっぱい食べたのでしょう。
立派な体格です。
写真③
植木鉢をすり抜けてバックしながら、
きゅうりのネットを抜けて、
クネ クネ とお庭を見まわしながらお出かけです。
写真④
大地をゆっくりと這いながら、クローバーの茂みの中に消えていきました。
今日は、これでご挨拶の儀式も終わり。
バイ! バイ! です。
写真⑤
昨年の秋、冬眠前の身長1メートルほどの青大将君でした。
比べてみると一回り大きくなってますね。
身長1メートル50センチほど大きく成長したへびくんでした。
これからのお話は、昔の事です。
今から70年ほど前、じゅっぺちゃんが小学生だった頃。
我が家には米蔵がありました。
そこに住んでいた主(ヌシ)の青大将様は超太めで3メートル余もありました。
お米を食べに来るネズミを取ってくれるありがたいへびさんです。
米蔵の棟柱に現れた時など、
じゅっぺちゃんのお父さんに見習って、
子どもも大人もみんなで大急ぎで日の丸の小旗を作って、
こわごわでしたけれども、
パタ パタ と日の丸を振って感謝と歓迎の意を表しました。
この青大将様は米蔵を守る我が家の神様でした。
家族揃って日の丸の小旗をふると、
神様は舌ベロをチョロ チョロ とだしてこちらを見つめてウナズキながら、
屋根裏にゆっくりと去っていきました。
じゅっぺちゃんはその光景を今でもはっきりと覚えています。
(注:後にこの米蔵は改築されて1953年(昭和28年)開園の野中保育園の第1号園舎となりました。)
写真⑥
昨年の10月、最後に見かけた青大将君のしっぽです。
あれから半年ぶりのご対面です。
元気な姿を見せてくれてほっとしました。
写真⑦ & 写真⑧
コロナ感染症流行の時代でなかったら、
じゅっぺちゃんは立派に成長した青大将君を
抱っこしてこども園のお友達のところに遊びに行けたのです。
しかしながら、
コロナ感染症予防対策保育中の今ですから、
ワイ ワイ ガヤ ガヤ 集まって、
へびくんを順番に抱っこしたり、触ってみたり、
「ワァー!」とか、
「キャァー!」とか、
「可愛い目ネ!」なんて、
大騒ぎする密集保育はできません。
じゅっぺちゃんは大変残念に思いますが、
今年はへびくんとこども園で遊ぶことは諦めました。
さて、
へびさんを大地保育に取り入れた保育史をお話ししましょう。
野中保育園~野中こども園~の園歌の一節に、
・僕らは優しい野中の子
・お花の田圃で遊ぶのだ
・へびも蛙もどじょっこも・・・
と歌われています。
この園歌は1967年(昭和42年)の
野中保育園15周年記念記念事業で制定されました。
それ以来、大地保育の思想は、
『みんな生きているんだ友達なんだ』の思想のとおりです。
農家であった塩川家の田畑を起源とする「大地による保育」と、
幼稚園教育要領の幼児教育の理念「環境による教育」から、
塩川寿平著『大地保育環境論』(2007年)フレーベル館出版。
こども環境学会学術論文賞受賞書籍は生まれました。
大地保育の創始者塩川豊子(1915~1999)は、
野中保育園の実践を理論化して、
『汲みつくすことのできない宝庫である大自然の中で、
子どもたちが育てられていく保育』と定義しました。
そこに生きとし生きるもの全てが
園児と生活を共にするお友達なのですから、
『環境による教育』と言う認識で
大地保育は営まれてきました。
そこで、
すでに公開されている大地保育の書籍から、
『へびさんと共存する園児の遊びと生活』を紹介します。
①へびさんが住んでいる自然のある園だから普通にできること。
②へびさんとお友達の「保育(=遊びと生活)」があるからできること。
③自然体で生き物と共存する保育史が基礎にあること。
④生き物と共存する保育こそこれから目指す「未来につなぐSDGs保育」です。
⑤自然と共存することをモットーとする大地保育の哲学があるから、園児も保護者も教職員も普通の生活=自然体で継承できるわけです。
⑥「この恵まれた大地保育」「この価値ある大地保育」をこれからも大切にしたいのです。
⑦この「特色ある個性豊かなSDGs保育」を
創造的に未来につないでいきたいのです。
以上の願いを込めた保育実践の写真ですので、
じっくりと眺めて、
大地保育の哲学を深く読み取ってください。
なお、
この保育実践『へびとお友だち』の写真には、
次の言葉が添えられています。
①共存=『僕らはみんな生きているんだ友だちなんだ。』
②へび=『ねえ、おじょうさん、聞いてくださいな。
ぼくたちどうして人からきらわれるの?
悪いことしていないよ。』
③園児=『わかってるわ。私たちの園歌、聞いてね。』
『へびも かえるも どじょっこも
みんなで田植えだどろんこだ。
ぼくらは元気な野中の子 』
『私たち、と、も、だ、ち、よ!』