第65話:野中保育園創立70周年 初心に還って (園創立1953~2022)
—(その6)『私の大地保育』塩川豊子著(大地教育研究所1988発行)—
絵を描く子ども
(同書 72~73ページ)
野中の保育には「大地保育」と言う哲学があると自負しているが、創造美育教育の自由で高邁な精神から生まれたものだと思っている。
子どもたちは実によく絵を描く、絵を描くことが好きでしょうがないと言う他はない。
1年間に何百枚も描く子がいる。
描かない子をどうしたらよいかという悩みはそうない。
乳児時代の手や足、床にべたべた塗る頃からずっと、よく描く。
子どものアトリエは、自由に使える空間のプロムナードである。
(中略)ベニヤ板1枚大を画架に使っている。
そこに画用紙を好きなように鋲で止めて描く。
3歳以下では床の上で描くことの方が多い。
1日に10枚ぐらい描く子は珍しくないので、先生たちは顔料を解くのに嬉しい悲鳴をあげている。
先生の仕事は、時には暗くなるまで乳鉢で絵の具をつくることもある。
心をこめて絵の具づくりをする姿は、子どもたちの心にも通じるのではないか。
描き方を教えないと言われている指導で生まれた子どもの絵を見ると、乳児から就学まで成長する何年間かの膨大な作品の中に、
〇感情を真っすぐに紙に表現する力
〇感情を内に秘めて何かを訴える力
〇感情のこもった色の組み合わせ、色の作り方
〇余白の美しさを生かした空間の構成
〇説明的でなく、描きたいイメージを描く
というような事を、子ども自ら獲得していくのがよくわかる。
喜び、悲しさ、悔しさ、その他言い尽くせない心の葛藤を子どもの言葉である絵に表現できる。
自由で緊張に充ちた忙しい遊びの体験と、子どもの意識も無意識も「子どもの絵は子どもの心の言葉である」という、表現方法である絵をたくさん描きたいだけ描くことが肝要である。
特に子どもの絵によく出る線と面のぬたくり時代を充分経験すべきである。
乳幼児時代に情緒の安定をはかり人間らしい美しい感情を育て、その土台の上に分化された知的教科を積み重ねて行かなければ、知育はやがて人間の不幸の原因にすらなる。
絵を描くことで、便利な何かの手だてとすることなく、子どもそのものの心を育てたい。
それには、絵を描く子どもの毎日の生活を幸せにすることであり、保育者としてなすべき事は子どもたちが、いかに自己表現のチャンスを沢山経験できるか、そのための環境整備の努力をすべきである。
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『絵を描く子ども』の継承
今年も大中里こども園で絵画展が開催されました。
大地保育創始者の塩川豊子さんの『絵を描く子ども』の教えは、大中里こども園の京極桃子園長に継承されて 2022年2月12日(土)『絵画展』が開催されました。
(以下に園の保護者に配布されたお知らせを載せます)
保護者の皆様へ 令和3年度絵画展のお知らせ
大中里こども園 園長 京極桃子
今年度も新型コロナウィルス感染症の心配があり、またここ数週間は県内・市内とも感染者の増加もあり、保護者の皆さまには予防のご協力をお願いしたり、保育の変更のご理解をして頂いてきました。
コロナ感染予防をしながら例年のように絵を飾り子どもたちの1年を振り返って、お家の方々と共に子どもの成長を喜び合う絵画展を開催したいと思います。
コロナ禍であっても子どもたちはよく体を動かし、できることが増え、ちょっとの寒さは平気で外を走って過ごしています。
子どもたちの絵を広げてみるとどの子の絵にも変化があり、私たち大人が思うよりも子どもたちはしっかり大中里こども園での生活を楽しく過ごしてくれていたと感じています。
出来る限り子ども時代の「今して欲しい遊び体験」を大中里こども園の保育・教育で守っていきたいとの思いでいます。
大中里こども園では子どもの主体性を大切にし、自分で考え、自分で行動できる子を目指しています。
子どもの興味や好奇心、やる気を育てる環境を整え、導いたり見守っていくことが、大人の大きな役割だと思っています。
子どもをもっと知るために、子どもの絵と発達を見ていただきたいと思います。
開催日 :令和4年2月12日(土曜日)
会 場 :大中里こども園
面談時間:①9:00~12:00 ②12:45~15:15
クラス展示:各年齢のクラスの絵も見てくださると、「年齢の違い」と「発達の違い」がよくわかると思います。
各クラスも回って どうぞご覧ください。
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平成3年度 大中里こども園の絵画展
「年齢別・クラス別の全体展示」と
「絵を見ながら保護者と子育てについての交流会」
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