第75話:「表出」と「表現」について
ー『評価の対象(表現)』と共に『評価の対象外(表出)』の承認を!ー

①個人の承認・社会の承認
 退任特別最終講義で特に伝えたいこと。
個人の承認としての「表出」と、
社会の承認としての「表現」についてお話ししましょう。

精神保健の単元=ライフサイクルにおける心の発達過程を考える時。
人生の10のステージのすべてのライフサイクルにおいて、
「表出」と「表現」は相容れない矛盾が発生するものです。
「表出」は、絶対評価であり個人的には承認されても、
      社会的には否定されがちです。
「表現」は、相対評価であり社会的には承認されますが、
      能力に応じて「勝ち組」と「負け組」が発生し、
      格差が生じ人間関係の平等が崩れがちです。

そこで、
この矛盾する問題をどう乗り越えるか先に結論を述べておきます。
ライフサイクルにおける心の発達過程にとって、
「表出」も50%承認されるべきであり、
「表現」も50%承認されることが大切だという結論です。
人生の10のステージのすべてのライフサイクルにおいて、
「個人の承認」も「社会の承認」も共に必要なのです。
それゆえに、
分量的にトータルして半々の人生が健全であると言う結論です。



 

 

 

 



【写真1】【写真2】【写真3】をご覧ください。
看護師となり地域医療に貢献する教え子1000余名。
富士市立看護専門学校の第1期生から第29期生まで、
29年間の最後の教え子となる第2学年生に、
お別れの退任特別最終講義(2022.5.26)をするじゅっぺ教授

②「表現」とは何か
 文字を教えて文章力を身につける。
 英語で話せる・書ける。
 陸上競技や体操競技の大会で優勝する。
 医学や法学等の国家資格に合格する。
 建築や土木や宇宙工学等の国家資格に合格する。
 コンピュータープログラミングの高度技術をマスターする、等々。

 以上のことから「表現」は、
・建設的で ・道徳的で ・汚れたりしない ・評価される ・好かれる
・受験競争の役に立つ ・お金儲けになる ・褒められる ・認められる、等々。

 それは良いことで大いに『評価の対象』『奨励される』『褒められる』。
・能力主義 ・ナンバーワン主義 ・競わせて順位をつける
・偏差値教育 ・無理に能力を引き出そうとする
・能力の下位の人を切り捨てる、等々『相対評価の価値』があります。

 しかしながら過剰な競争からライフサイクルにおける「心の発達に異変」が
発生し社会問題になっています。
 また、大人も子どもも過剰な競争のために精神的・肉体的な障害、
・無気力 ・精神障害 ・ひきこもり ・いじめ ・自殺、等々
も起こり社会問題となっています。






【写真4】をご覧ください。
一つ一つの輪の中に正確に「ケン=片足」「パア=両足」と跳ねる競技を行う。
失敗したらやり直し。上手下手の評価が記録されます。


 

 

 

 

 



【写真5・6】をご覧ください。
一本橋の上での美しい表現の演技です。
上手にできた人は高い評価を得ることができます。

 

 



【写真7】をご覧ください。
3点倒立の演技種目で5分経過で1名達成。
チャンピオンの誕生、ナンバーワンの評価です。
オリンピックなら金メダルです。
その他の園児たちは5分間以下の成績でした。
能力によりはっきりとした格差が出ます。




【写真8】をご覧ください。
運動会の応援セレモニーです。
みんなで楽しくお神輿ワッショイの表現です。
平等に担いで一致団結の応援の姿には1チームならば評価の問題はありません。
しかしながら複数のチームならば団体表現の採点があります。
応援合戦の場合でも「相対評価の結果」最優秀チームが表彰されます。

③「表出」とは何か
 感情の発散。欲求不満のガス抜き。大声で放吟する。泥だらけになる。
水いたずら。泣きわめく。地面をのたうちまわって暴れる。看板などを蹴飛ばして壊
す、等々。

 以上のことから「表出」は、
・破壊的で ・汚くて ・不道徳で ・評価されない ・嫌われる ・叱られる
・受験競争の役に立たない ・お金儲けにならない、等々。

それは悪いことで『評価の対象外』『禁止される』『罰を与えられる』。
 しかし安全で無害な方法があります。
・どろんこ遊び ・水遊び ・野原で1人マラソン ・誰もいない海辺で絶叫する
・ボディーペインティング ・ぬたくりで自由奔放な絵を描く
・名のない遊び ・個室のカラオケで歌いまくる ・誰もいない海辺で絶叫する

等々で受容的にストレスが解放され、発散され、
・オンリーワンである ・計れない ・点数をつけられない 
・評価できないから恥ずかしくない ・恥ずかしくないから夢中になれる、
等々で『絶対評価の価値』があるのです。
それゆえに『かけがえのないあなた』
     『世界に1人しかいない尊いわが子』
     『ありのままの君でいい』等々の
自尊心や自己肯定感情や承認水準を満足させることができます。




 

 



【写真9~10】をご覧ください。
どろんこ遊びです。遊び方が決まっていません。
採点の方法がありません、ですから点数がつきません。
上手下手もなく。優劣もなく。一人一人楽しく遊べます。



 

 


【写真11 ~12】をご覧ください。
季節限定のいちょうのプールの遊びです。
発散です。カタルシス効果(心の浄化作用)です。



 

 

 

 

 


【写真13・ 14・ 15・16】をご覧ください。
名前のない遊びです。
電気屋さんがくれた段ボールがたまたまありました。
見つけた子どもたちが奪い合って、
ビリビリに破壊され段ボールがバラバラになりました。
壊す喜び・破壊する喜び・奪い合う喜び、等々の遊びになりました。
子どもたちは面白くて大笑いで戦っていました。
『スッカとした』『楽しかった』と、
大満足したと話してくれました。

④「表出」も「表現」も50%と50%が理想的です。
 世間では一般的に『表現』は高い評価を受けます。
『表出』は評価されません。

 しかしそれは誤りです。両者ともに必要なのです。
長い人生の10のステージ「ライフサイクル」を考えると、
「表出50%」と「表現55%」が理想的だと考えます。
評価の視点で言い換えれば、
「絶対評価50%」と「相対評価50%」が理想的だと考えます。