現在放送中のTBS系火曜ドラマ『カルテット』で、元地下アイドルなのに目が笑っていないライブレストランのアルバイト店員・来杉有朱を演じている女優・吉岡里帆。4クール連続ドラマ出演と、まさにブレイク真っ只中な彼女の今作への思い、そしてプライベートについて話を聞いてきた。
 
 
# 家森のような男性は「全然だめです(笑)」
 
ーー吉岡さん演じる来杉有朱は、謎が多い魔性の女という役柄です。演じてみていかがですか?
 
吉岡:よくいる男性をたぶらかすような魔性な女とは違って、有朱は破壊的な方の魔性の女。どこにも馴染めないで孤立してきた子なので、同じようにはみ出し者だったカルテットの4人が仲良くやっているのを見て、破壊したいと思っているんです。"小学校のときはいつも学級崩壊させていた"という過去のエピソードには、「カルテットを崩壊させるぞ」みたいな暗示も含まれていたり…。
有朱が担っているキャラクターの役割自体が、面白いなと感じています。
 
 
ーー目が笑っていない表情を演じるのは難しいのでは?
 
吉岡:他の人のセリフを聞き入っちゃうと、興味が湧いてきて自然と目が生きてしまうんですよね。だから、本当に興味を持たないように、どこか上の空で聞きながら演じています。
 
 
ーーなるほど。撮影現場の雰囲気はいかがですか?
 
吉岡:本当に和やかです。私は役柄も役柄ですし、距離感ができちゃうんだろうなと思っていたんですけど、みなさん仲間にいれてくださって。プロデューサーの方も、マイペースで各々が独立している人たちだからすごく素敵な現場だって話していました。
 
 
ーー共演者の方々とはどんなことを話されましたか?
 
吉岡:いろいろ話しましたよ!高橋一生さんが豆知識を教えてくれたり、満島さんとは兄弟の話、松さんとは娘さんの話…本当にいろいろ話しますね。差し入れのお菓子の話とか、たわいないことも(笑)。
 
 
ーーなんだか『カルテット』っぽいですね(笑)。印象に残っているシーンやセリフはありますか?
 
吉岡:「人生には3つの坂があって、上り坂、下り坂、まさか」や、「夫婦は離れられる家族だ」などのちょっと悲しくて切ない巻さんのセリフが印象的でした。
 
 
ーーセリフといえば、「みぞみぞする」がドラマのキーワードにもなっていると思うのですが、吉岡さんが最近"みぞみぞ"したことは?
 
吉岡:う〜ん、みぞみぞの感情って聞かれると難しいですね(笑)。
でも、松さんと満島さんと3人で長ゼリフのシーンをさせていただいたときは、半月前くらいからみぞみぞしていました。皆さんが抱えている悩みや葛藤に突きつけるような、核心を突くセリフだったので、こんな凄い役者さんたちとこの言葉を交わすのかと思うと、武者震いというか…うん、みぞみぞしましたね(笑)!
 
 
ーーみぞみぞシーン、楽しみにしています(笑)。ドラマでは恋愛についても描かれていますが、吉岡さんは有朱のような恋愛テクニックはお持ちですか?
 
吉岡:テクニックが使えたらいいんですけど、実際はそうはいかない(笑)。ただ、好きになったらその人がどういうことが嬉しいと思うのか、なにが嫌なのかはちゃんと知りたいなと思います。好きになった人にたいしては誠実でいたいですね。
 
 
ーーちなみに、別府さんと家森さんだったら?
 
吉岡:絶対に別府さん派!家森さんは全然だめです(笑)。有朱ほど分かりやすくはなくても、適度に距離を置いたりしちゃいますね。
 
 
ーー少し不器用で真面目な人のほうが好みなんですね。
 
吉岡:はい。思いやりがあって優しくて懐の広い人、どっしりと構えている人のほうが好きです。
 
 
 
# 仕事が増えたことには、戸惑いも
 
 
ーー吉岡さんは、女優さんを目指す前は書家になりたかったと伺いました。
 
吉岡:そうですね。幼い頃はテニスをやっていたんですけど、体が弱くてドクターストップがかかってしまって…そのときに出会ったのが書道だったんです。本当に楽しんで続けていたので、ずっと書道にまつわる仕事をしたいなと思っていました。
 
 
ーーそれが何故、女優さんに?
 
吉岡:18歳のときにつかこうへいさんの『銀ちゃんが逝く』という舞台を観たのがきっかけです。同い年の子たちの体と心がよじれるくらいにパワフルな演技に感動して、今までの生活がすごくぬるく感じたんです。もっと必死になにかをやってみたいって。
そこからは、養成所に入って友達が作る映画に出させてもらったり、映画にMVに朝ドラに…なんでもかんでもオーディションを受けて、少しずつ少しずつセリフが増えていったという感じです。
 
 
ーー4クール連続でドラマ出演とブレイク真っ只中ですが、いかがですか?
 
吉岡:いまの状況はとっても嬉しいです。でも、浮つくのが怖いタイプなので素直に受け止められてないのが本音(笑)。それこそ、ドラマの中で「悲しいより悲しいことってなにか分かりますか?」「ぬかよろこびです」という巻さんのセリフがあるんですけど、本当にそうだなって。
どんなときも突発的に上手くいくわけがなくて、小さなことの積み重ねと努力の結晶こそが結果だと思うんです。だから、仕事が増えたことにたいしては戸惑いと、「あんまり喜んじゃいけないぞ」という気持ちがありますね(笑)。
 
 
ーーお休みの日はなにをして過ごしていますか?
 
吉岡:映画か舞台かライブか美術館か、なにか表現している人たちに触れるようにしています。そこにヒントがある気がしているので。
 
 
ーーお休みの日まで、お仕事のことを考えているなんてすごく真面目ですね。
 
吉岡:いやいやいや、違うんです!びびりなんです、私(笑)。私生活でも仕事にプラスになることをしていないと怖いだけで、バカ騒ぎみたいなことができないんですよ。
一度「芸能人なんだから遊んだら?」って言われたことがあったんですけど、必死にやっていかなきゃいけないのに、なんでそんな風に言うんだろう?ってイラッとしちゃったり。難しいです、遊ぶって…(笑)。
 
 
ーー真面目なのはいいことだと思いますよ(笑)!芸能人で仲の良い方はいらっしゃいますか?
 
吉岡:朝ドラで共演した波留さんや小芝風花ちゃんとは食事に行ったりしますね。こないだは、レディダヴィの女医たちでも集まりましたし…共演した縁で仲良くさせていただいています。
 
あとは、同じく朝ドラで共演した辰巳琢郎さんには毎月15人くらいでやる演劇鑑賞会に呼んでいただいたり、元宝塚の愛原実花さんも仲良くしてくださって、よく食事に誘っていただきます。やっぱり強烈なところで戦っている人と話すと刺激を受けるんですよね。
 
 
ーー女優人生で影響を受けた作品や、人の言葉などはありますか?
 
吉岡:『ゆとりですがなにか』でタチの悪い女子大生役を演じたときに、自分の役にたいして「この子やだな」「人としてどうなのコレ?」と思っていたんです。そしたら、水田監督に「絶対そんな風に思っちゃダメ。見た人がどんなに嫌ったとしても、吉岡だけはその役を好きであげた方がいい」って言われて。確かに自分が好きになってあげなきゃ湧き上がるものも湧き上がらないなぁって、ハッとしました。
それからはクセのある役でも、その人物の背景を深読みして理解するようにしています。気づかせてくれた水田監督には今でも感謝していますね。
 
 
 
# 挑戦したいのは葛藤と戦う役
 
 
ーーこれから挑戦したい役はありますか?
 
吉岡:子どもの頃、体が弱くてみんなと同じようにできないことがたくさんあって「なんでみんなみたいに走れないんだろう」「なんでみんなみたいに体力がもたないんだろう」と、納得いかない部分が多かったんです。
だから、葛藤と戦っている役はいつかやりたいなぁって。自分のためにもやらなきゃいけないなぁって感じています。
 
 
ーー一緒にお仕事をしてみたい人はいますか?
 
吉岡:私、是枝さんのファンで、大学生のときに潜りで授業を受けに行ったこともあるんです(笑)。でも、是枝さんに挨拶して「やったー!授業が受けれる!」と思っていた矢先、オーディションに受かるようになって結局授業は受けられず。すごく後悔しているので、いつか是枝さんとはご一緒したいです。
 
 
ーー10年後はどんな女優さんになっていたい?
 
吉岡:初めて小劇場をみて感動したときのあの感覚を全く忘れずに芝居していたいなと思います。まだ駆け出しのくせに、やればやるほどすり減っていくものがあることを、微妙に感じるときがあって。
だから、10年経ったときも必死さやハングリー精神を忘れずに、いつも恐怖を感じながらお芝居をしていたいですね。
 
 
ーー最後に『カルテット』をご覧の皆さんに、メッセージをお願いします!
 
吉岡:『カルテット』をご覧の皆さま、こんにちは、吉岡里帆です。今日はこのページを読んでいただいてありがとうございます!
『カルテット』は、坂元裕二さん脚本のとても巧みに作られている、大人の小説のようなドラマです。1ページ1ページめくるように噛み締めてご覧いただけると作り手としては嬉しいです。ぜひぜひ、これからもみぞみぞしながら『カルテット』を楽しんでください!
 
 
 
 
一言一言、ことばを丁寧に選びながら自分の思いを語る吉岡からは、女優という仕事への真剣さがひしひしと伝わってきた。「おかたくてごめんなさい〜」と真面目すぎるところをコンプレックスに思っている彼女だったが、その真面目な性格から生み出される演技こそが視聴者の心を掴んでいるのであろう。