今の時代に即した重いテーマを扱い、すべての"働く人"の涙を誘ったベストセラー小説を映画化した『ちょっと今から仕事やめてくる』は、ブラック企業で働くサラリーマン・青山(工藤阿須加)が、アロハシャツを羽織り、大阪弁を話す謎の男・ヤマモトと出会い、生きることの意味を再確認していく共感感動ストーリー。

 

多くの人の心に響くであろう作品の中で、キーパーソンとなるヤマモトを演じたのが俳優の福士蒼汰。今までにないほどハイテンションな役柄で新境地を開いた福士に、役者人生のターニングポイントとなった本作への思いを語ってもらった。

 

 

■自分は、ヤマモトと違って引っ張られて動くほう

 

ーーヤマモトを演じることが決まってから原作を読まれたということですが、原作を読んでどのような印象を受けましたか?

 

福士:青山と同じ目線でヤマモトのことを探りながら読ませていただきました。なんでこんなにテンションが高いんだろう?なんで青山を助けようとしているんだろう?と、その理由を探しつつ。

 

 

ーー真実を隠しながらも、常に笑顔でいるヤマモトは福士さんの目にどのように映りましたか?

 

福士:ヤマモトは複雑な過去があるのにも関わらず、それを青山に微塵も感じさせないようにしているところが印象的でした。監督にも「悲しい部分は、一切見せなくて良いから。逆に悲しいからこそ、もっと明るくして」と言われていたので、演じるときも常に意識していました。

 

 

ーー関西弁でハイテンションという役どころに、抵抗はありませんでしたか?

 

福士:僕とは結構違うタイプの人間なので、最初は自分でもどんなふうになるのか想像がつかなかったです。僕は、ヤマモトみたいなぐいぐい引っ張っていくような性格ではないですし。

 

 

ーー福士さんはどちらかというと、引っ張られるほう?

 

福士:引っ張られるほうだと思います。引っ張られても動かないか、引っ張られて動くかです(笑)。

 

 

ーーそうなんですね(笑)。関西弁の練習はいかがでしたか?

 

福士:お笑い芸人「烏龍パーク」の加藤康雄さんに方言指導をしていただいたのですが、僕が東京都出身なのもあって、とても難しかったです。芸人さんの勢いとかノリツッコミは独特で。

 

 

ーー劇中では、福士さんもかなりツッコミを入れてましたよね。お気に入りの関西弁はありますか?

 

福士:「なんやねん」です。東京の人が言うと、「なんや(↗︎)ねん」とアクセントがついてしまうんですが、本当は「な(↗︎)んやねん」と頭にアクセントがつくんです。僕も間違えて言っていたので、意外と気付かないものなんだなと。その違いを知っているだけでも、すごく関西弁らしくなるのでお気に入りです。

 

 

 

■監督に出会って役者としての軸ができた

 

ーー自分とは違ったタイプのキャラクターを演じるということで、役作りはいつも以上に難しかったのでは?

 

福士:難しそうだなというイメージだったのですが、監督がA4の紙5~6枚に、体重何グラムで生まれて、どこで、どんな環境で育ってきた…というヤマモトと青山の年表を書いてくださって。ヤマモトの人物像は小説では書かれていない部分も多かったので、それのおかげでヤマモトをしっかりと理解することができました。あとは、クランクインの5ヶ月前からワークショップとリハーサルをやらせていただいたことも大きかったです。

 

 

ーーワークショップでは、どんなことを?

 

福士:午前中はアクティングコーチの先生とリラックスから発声、自分の意志を伝えるゲームなどをしました。

 

 

ーーゲームですか?

 

福士:例えば、1つのケーキをめぐって、”自分が食べたい”ということを2人で伝え合うゲーム。自分がケーキを食べるために、相手を言葉で説得するんです。「お腹が空いているから食べたいんだ」と言うと、それに対して相手は「ご飯は食べたけど、デザートとしてケーキを食べたい。ご飯を食べていないなら、先にご飯を食べてくればいい」と返したり。そこで、先生が切り替えスイッチを押したら、今度は逆に”相手に食べさせる”ためにどうするかを考えるんです。

 

 

ーー面白いですね。ワークショップの中で、印象的だったことはありますか?

 

福士:2~3ヶ月経ったあたりで、監督に「蒼汰はもう役が入っているから」と、サラッと言われたことです。そのときは「え、自分、役が入っていたの?」と驚きました。

 

 

ーー今までは意識的に入っていたのが、今回は自然と役に入っていたという?

 

福士:はい。今までは、台本を何度も読んで役に入ったり、クランクインしてからも自分が役を掴めているのか探りながらだったり…ということもあったのですが、今回は初めて自然と役に入っていく感覚というものを実感しました。

 

 

ーーこの現場で監督とご一緒したことで、役者として吸収したものがたくさんあったのですね。

 

福士:そうです。今までは自分のやり方でやっていたのが、監督と出会ったことで、プロのやり方を学ばせていただくことができました。自分にとっても、すごくハマった部分があったので、今後はそれを軸にしていろんな作品に挑んで試していきたいなと思います。

 

 

■工藤さんは、「予想以上に目力が強い方」

 

ーー福士さんにとっても大きなターニングポイントとなった作品ですが、ご自身で完成した作品をご覧になって改めていかがでしたか?

 

福士:冒頭とラストのシーンは、映画オリジナルのシーンなのですが、インパクトがあるものになったなと思いました。あとは、青山の会社のシーンを初めて見て、かわいそうだな…と(笑)。

 

 

ーー吉田鋼太郎さん演じる青山の上司・山上部長はかなり強烈なキャラクターでしたね(笑)。

 

福士:状況が違うから実際は分からないですが、自分だったら青山のようには謝れないです(笑)。

 

 

ーー工藤さんと一緒に坂道をカートで下るシーンなども印象的でした。

 

福士:あのシーン実は、監督にリハーサルの時「入れるか悩んでいるけど、やってみて」と言われたシーンなんです。でも、やって良かったなと思いました。2人の関係性がグッと縮まる瞬間ですし、青山から咄嗟に「死んだらどうするんだよ!」という言葉が出てヤマモトが喜ぶ、という物語を象徴している場面でもあるので。

 

 

 

ーー青山を演じた工藤さんの印象はいかがでしたか?

 

福士:想像通り、まっすぐな方でした。そして、予想以上に目力が強い方。監督の演出もあるかもしれないのですが、前を見据えているときや、人を見ているときの目が素敵だなと感じました。

 

 

ーー完成披露試写会では「人見知りをやめたい」とおっしゃっていましたが、工藤さんと初対面のときは?

 

福士:人見知りしました(笑)。人との距離をすごく測ってしまうんです。内側から変えていかなきゃいけないと思ってはいるのですが、やっぱり人見知りはしてしまいます…。

 

 

ーーでは、工藤さんとは徐々に打ち解けていって?

 

福士:ワークショップのおかげもあり、撮影が始まる頃には打ち解けていました。工藤さんの家で方言指導の加藤さんも一緒に、たこ焼きパーティをしたりも。

 

 

ーー楽しそうです。お酒を飲んだり?

 

福士:飲みました。普段はあまり飲まないのですが、みんなでご飯に行ったときは飲むんです。

 

 

 

■福士社長は「週1ミーティング必須」の自由な社風を提案

 

 

ーー福士さんが社長だったら社員が働きやすいようにどのようなルールを作りますか?

 

福士:何時に来てもいいから8時間働く。それで、週1のミーティングは必ず全員出席するというルールにします。みんなで集まる瞬間はやっぱりあったほうがいいと思うので。

 

 

ーーすごくリアルなルールですね。そしたら、福士社長は何時に出勤されるんですか?

 

福士:お昼頃に出勤します(笑)。

 

 

ーー朝は、ゆっくりしたい派なんですね(笑)。

 

福士:朝ゆっくりできれば、深夜に仕事をすることになっても全然大丈夫です。海外の人とやりとりする人も必要だと思うので、自分はその担当になります(笑)。

 

Photography=Mayuko Yamaguchi
Interview=Ameba

 

映画『ちょっと今から仕事やめてくる』は5月27日(土)より公開中

 

 

■福士蒼汰オフィシャルブログ