黒沢清監督が、劇作家の前川知大氏が主宰する劇団「イキウメ」の人気舞台にほれ込み、映画化した『散歩する侵略者』は、地球を侵略するために人間から"概念"を奪い歩く「侵略者」たちと、それを阻止しようとする人類の様子をサスペンス、アクション、コメディ、ラブストーリーといった要素で重奏的に描いた作品。

 

長澤まさみ、松田龍平、長谷川博己など豪華キャスト陣の中で、侵略者に体を乗っ取られた女子高生・立花あきらを演じたのが女優の恒松祐里。黒沢監督も「大物女優の素質がある」と太鼓判を押す恒松に、「侵略者」という難しい役へのアプローチの方法や撮影中のエピソード、女優としての今後のビジョンなどを聞いてきた。

 

 

■役作りをする中で、人間の面白さに気づいた

 

――本作で恒松さんは「侵略者」という難しい役柄を演じられましたが、最初にお話をいただいたときの印象はいかがでしたか?

 

恒松:普段、人間の女の子を演じるときには、周囲に似ている人を見つけて仕草とか癖を参考にすることが多いんです。でも、今回演じた「あきら」は地球じゃないところから来た子。現実のどこにもいないし、最初はどんな人物かまったく想像がつきませんでした。

 

(C) 2017『散歩する侵略者』製作委員会

 

――では、普通の女の子を演じるときとは違う方法で役作りをしたのでしょうか?

 

恒松:いつもとは違う視点で人間観察するようにしました。初めて人間を見るような感じで「人ってこういう考え方をするんだ」とか「面白くなくても笑ったりするんだ」とか考えてみたり。そういう目で見ているうちに、生まれたときから根付いてきた人間ならではのルールや性質が改めて分かってきて、面白かったです。

 

 

――人間観察をしていく中で、とくに面白いな~と思った人間の習性はありましたか?

 

恒松:電車の中で人の動きを見ていると、眠そうなのに仕事中だからと眠気を我慢しているサラリーマンの方がいらっしゃって。あきらだったら眠かったら寝ちゃうけど、人間にはいろんな理由があって思ったままに行動はできないんだなぁって思いました(笑)。

 

 

■完成作に「頭の中が侵略されました(笑)」

 

 

――黒沢監督からは、どういった演技指導がありましたか?

 

恒松:私は、アクションシーンでは、敵を倒すから怖い顔をしたほうがいいのかなと思って表情を作っていたんです。そうしたら、監督からは「もう少し楽しそうに笑いながらアクションして」って言われて…。

 

 

――というのは?

 

恒松:まさに役作りに通じる部分なんですけど、あきらは心の中で「人間ってこういうものなんだ。あ、これくらいの力で吹っ飛んじゃうような生き物なんだ~」と、好奇心を持ちながら敵を倒しているんです。「殴ったら痛いんだ」とか、「怪我をしちゃうんだ」とか。監督にそう言われてからは、実験をするように、楽しみながらアクションするように意識しました。

 

 

 

――なるほど。お話を聞いていると、すんなりと「侵略者」という役柄を自分のものにされたような印象ですが、苦労点はありませんでしたか?

 

恒松:普通の女の子を演じるときは、1つ1つの行動に理由があるから、その子のバックボーンとかセリフの言い方を考えながら演じているんですけど、あきらは瞬間に起こった出来事に対して本能で反応するので、ある意味、気持ちを作るのにはあまり苦労しませんでした。ただ、アクションシーンの練習のときに、ひじにこぶしくらいの大きなあざが出来てしまったのは困りましたね(笑)。

 

 

――それは大きなあざですね!大丈夫でしたか?

 

恒松:ネットであざの治し方を調べたら、叩くといいって書いてあったのでお風呂に入りながら毎日30分くらい叩いていました(笑)。あとは、爪楊枝を束ねてトントン叩くという方法も試したり…そのおかげか、本番にはすっかりあざは消えていました!

 

 

――本番に影響がなくてよかったです(笑)。改めて、完成作品を観た感想を教えてください。

 

恒松:つくづくあきらって不思議な子だなと思いました(笑)。

 

 

ーー(笑)。

 

恒松:あとは、映画を全部見終わったあとに、街を歩いている人が全員、侵略者に見えちゃいました。どの人もどの人も、あの人は人間じゃないかもしれないって気がしてきて…私の頭の中が侵略されていましたね(笑)。それくらい心に残る作品になっていると思います。

 

 

 

■次に挑戦したいのは「舞台」

 

 

――本作の「侵略者」という役もそうですが、様々な役をこなしていく中で、女優としての新たなビジョンなどは出てきましたか?

 

恒松:女優のお仕事の楽しさは、自分じゃないいろんな人になれること。なので、とにかく色んな役をやってみたいです。

 

 

――いま、とくに挑戦してみたい役柄はありますか?

 

恒松:役ではないんですけど、舞台を見るのがすごく好きなので、私も舞台に立ってみたいなと思います。

 

 

――それは何故でしょう?

 

恒松:その場その場で毎回生きられることが面白そうだなぁと感じていて。あとは目の前に見てくれる人がいるのも緊張感があっていいんだろうなと。とくに、ミュージカルが好きなんで、いつか挑戦してみたいです。

 

 

――もし、舞台に立つならどんな役で?

 

恒松:恋に悩んでいるかわいい女の子の役とか、演じてみたいですね!

 

Photography=Mayuko Yamaguchi
Interview=Ameba

 

 

映画『散歩する侵略者』は、9月9日(土)より全国ロードショー。

 

(C) 2017『散歩する侵略者』製作委員会

 

 

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