黒沢清監督が、劇作家の前川知大氏が主宰する劇団「イキウメ」の人気舞台にほれ込み、映画化した『散歩する侵略者』は、地球を侵略するために人間から"概念"を奪い歩く「侵略者」たちと、それを阻止しようとする人類の様子をサスペンス、アクション、コメディ、ラブストーリーといった要素で重奏的に描いた作品。
本作で、長谷川博己演じるジャーナリストの桜井を"ガイド"に任命し、地球の侵略を企む侵略者の天野役を演じたのが俳優の高杉真宙。『PとJK』、『ReLIFE リライフ』、『想影』、『逆光の頃』、『トリガール!』、そして『散歩する侵略者』と、この1年だけで6本の映画に出演という、今まさに勢いのある役者の1人である高杉に、撮影中のエピソードからプライベート、そして役者という仕事への思いを聞いてきた。
■人間に近い「侵略者」を演じる難しさ
ーー今回は、「侵略者」という今まで演じたことのない役柄だったかと思うのですが、天野という役はどのように作り上げていきましたか?
高杉:侵略者といっても見た目は人間と変わらないので、どういった部分で侵略者らしさをみせるか、というのがとても難しかったです。天野は冒頭から当たり前のように両親の概念を奪っていたり、地球に馴染んでいたりと、3人の侵略者の中でも一番人間に近い。天野は侵略者なのか、人間なのか…というちょっとした違和感を意識しながら、作り上げていきました。
(C) 2017『散歩する侵略者』製作委員会
ーー黒沢監督からは、どういった演出を受けましたか?
高杉:「ここで振り返って、じっと見て」とか、細かく指導していただきました。そういった”ちょっと人間とは違うな”という違和感が積み重なって、人間との区切りというものができてきたんじゃないかなと思います。
ーー高杉さんご自身も、「侵略者」という役柄を楽しんで演じることができましたか?
高杉:はい。一番興味深かったのは、天野が服をしっかりと着ているところ。あきら(恒松祐里)は変な着方をしていたりするのに、天野だけはしっかりと着ているんです。「人間の服ってこんな風に着るんだ~」という好奇心から、他の人間の真似をしたんだろうなって。侵略者にもいろいろなタイプがいるというのが面白いなと思いました。
ーー天野は3人の中でも一番頭の切れるというか、真面目なキャラクターですよね。
高杉:天野は「侵略する」ということを仕事としてやっているんだと思います。悪気があって…というわけではなく、仕事を全うするという考え。ガイドには手を出さないというルールも守っていたり。そういうところは、良い奴だなと思いましたね(笑)。
■長谷川博己との共演には「安心できた」
(C) 2017『散歩する侵略者』製作委員会
ーー完成した作品をご覧になって、いかがでしたか?
高杉:SF要素もあるし、アクションもあるし、笑いもあるし、かと思ったら、愛とは何かという大きなテーマのラブストーリーでもあるし。本当にエンターテイメント性のある作品だなと思いました。黒沢監督の作品はいくつも拝見させていただいていたんですけど、その中のどれとも違う作品だなと。ただ、自分の役だけは客観視できなかったですね。
ーーそれはなぜですか?
高杉:本当にどんな風に仕上がっているのか分からなくて…ずっとドキドキしていたんです。それに黒沢監督の作品ですし、ご一緒した方も大先輩ばかりだったので。
ーー撮影中も緊張されましたか?
高杉:ずっと緊張しながら撮影していました(笑)。
ーー中でも長谷川博己さんとは、ほとんどのシーンでご一緒されていましたよね。ご一緒されてみて、いかがでしたか?
高杉:長谷川さんとのシーンはとても緊張したんですけど、なぜかリラックスして、落ち着いて演技ができたんです。長谷川さんとお芝居させていただくときは安心できるというか…ちゃんとした理由は分からないんですけど、長谷川さんの存在そのものに助けられた部分がたくさんあったと思います。
■好奇心はあるけど、「お家が大好き」
ーーちなみに、天野はいろいろなことに興味を持つ好奇心旺盛なキャラクターでしたが、高杉さんがいま興味があることは何ですか?
高杉:いまはこれといってないんですけど、お仕事で新しいことに挑戦させていただく機会が多いので、そこで新しいことを覚えるのが好きです。昨年は、スキーやクロスカントリーをやらせていただいたのが楽しかったですね。
ーーそれは継続してやられていたり?
高杉:クロスカントリーができる場所って意外と少ないんですよね。だから、他のウィンタースポーツにも挑戦してみようと思ってスノーボードに行きました。めちゃくちゃ転びましたけど(笑)。
ーーでは、今年の冬もスノーボードに?
高杉:うーん…いけたら(笑)。基本的にお家が大好きなので。
ーーインドアなのですね(笑)。
高杉:やっぱり家は快適だから、家にいるほうがラクだなって思っちゃうんですよね。どこか行くってなったら行くんですけど(笑)。
■負けず嫌いも、「パズルの1つとしてはまれたら」
ーー最後に、役者さんとしてのお話もお伺いさせてください。7月で21歳になられたとのことですが、20歳の1年間を振り返ってみてどんな年だったと思いますか?
高杉:本当に立ち止まることなく、走りぬけた1年でした。長距離走という感じ。そのおかげですごく充実した毎日だったなと思います。
ーーこの1年間で本当にたくさんの作品に出演されてきましたもんね。様々な作品を通して、改めて役者の面白さを実感したりしましたか?
高杉:何が面白い!っていうのが、実はずっと分からないんです。もちろん、いろんな人になれるというのも面白いなとは思うんですけど、それが一番の理由ではなくて…単純にお芝居が好きで。演じるということが本当に楽しいんです。
ーーそうなのですね。壁にぶちあたって「もう嫌だな」と思う瞬間があったりはしますか?
高杉:壁にぶちあたることはたくさんあります、びっくりするくらい。でも、僕は負けず嫌いなので、それが楽しい理由の1つなのかなとも思います。そういう悔しさをエンジンにしているところはあるかもしれないです。
ーー同世代の役者さんとの共演も多いかと思うのですが、そういったときは、いつも以上に燃えることも?
高杉:意識する部分はありますね。でも、自分が自分が…というよりは、良いものを作るということが一番。みんなで良いものを作るときのパズルの1つとして、自分もはまれたらいいなと思います。
ーーいまの役者としての目標はなんでしょう?
高杉:「また、一緒に仕事をしたい」と思われるような人になりたいです。この役の高杉真宙をみて、次はあの役を高杉真宙にやってほしいなと思ってもらえるような。そうするためには、どの現場でも求められているものを100%出さなきゃいけない。常に努力しなきゃなと思いながらやっていますね。
Photography=Mayuko Yamaguchi
Interview=Ameba
映画『散歩する侵略者』は、9月9日(土)より全国ロードショー。
(C) 2017『散歩する侵略者』製作委員会