2004年2月にテレビ放送が開始されて以来、広く愛されている『プリキュア』シリーズ。その14作目となる『キラキラ☆プリキュアアラモード』の劇場版最新作『映画キラキラ☆プリキュアアラモード パリッと!想い出のミルフィーユ!』は、こどもたちに絶大な人気があるキュアパルフェことキラ星シエルが天才パティシエと呼ばれるようになった過去に迫るストーリー。

 

本作で、天才パティシエ・ シエルのパリ修行時代の師匠・ジャン=ピエール・ジルベルスタインの声を務めるのが歌舞伎俳優の尾上松也。『モアナと伝説の海』(2016)以来、2度目の声優挑戦となる彼に、本作への思い、声の仕事の難しさについて、そして松也自身の"スイーツ愛"について語ってもらった。

 

 

■ジルベルスタインは、「スイーツに対して真っ直ぐな男」

 

ーー『映画プリキュア』シリーズは23作目となりますが、今回出演することが決まった時のお気持ちをお聞かせください。

 

松也:僕は『セーラームーン』や『ママレード・ボーイ』など、アニメーションを見ながら育ってきた世代ですので、『プリキュア』のような人気のある作品に出演させていただけると決まったときは非常に光栄でした。僕が演じるキャラクターを見ながら、お子さんたちが楽しんで成長してくださるということは夢がありますし、とてもやりがいを感じますね。

 

 

ーー今回、松也さんが声を務めたジャン=ピエール・ジルベルスタインは、シエル(キラリン)が師匠と仰ぐパティシエです。どのようなキャラクターだと捉えて演じられましたか?

 

松也:とにかくスイーツを愛している男で、スイーツのことしか頭にない。一見、常軌を逸しすぎているくらいのスイーツ愛に見えるんですけど、逆にそれが、スイーツと真っ直ぐに向き合っていると感じることができるキャラクターだと思います。

 

©2017 映画キラキラ☆プリキュアアラモード製作委員会 (ショートVer.)©2017PAMC

 

ーー演じる上では、どのようなことを心がけましたか?

 

松也:ジルベルスタインは確実に変人ではあるんですけど(笑)、根底にはスイーツに対する真っ直ぐな気持ちがある。彼の本質を分かっていない方からしたら、イラッとしてしまう部分もあるのかもしれないのですが、実直にスイーツに対する真っ直ぐさを演じることによって、本当は良いヤツなんだということが伝われば…と思って演じました。

 

 

ーースイーツに対する情熱ゆえに、"作り手"として少しキツい言葉になってしまう場面もあるキャラクターですよね。

 

松也:普段のジルベルスタインはクールというか、自分の物差しではかった世界の中でしか生きていない男なので、自分の考えに相反するものごとには、少し強めだったり冷たかったりする。ですが、スイーツのことになると急に激情的になって感情的になるんです。そういったギャップが見える部分では、声のトーンなどで違いをだすように意識しました。

 

 

■声優へ興味を持ったきっかけは"山寺宏一"

 

 

ーー普段は歌舞伎の舞台や映画・テレビドラマなどのお芝居が中心かと思うのですが、声だけでのお芝居となると、役へのアプローチの仕方なども変わってくるのでしょうか?

 

松也:役を掴んで演じるという部分では根本は一緒だと思うのですが、舞台や映像は自分の身体も使って表現するところを、声優は声のみで表現する。そこは大きな違いです。僕はまだ声の出演は2作目なので偉そうなことは言えないですけど、声優の場合は声色のテクニックとして、そのキャラクターのビジュアルや環境に合わせて声を作ることが必要なのかなと思います。

 

 

ーーアニメの世界にとって「声」というのは、キャラクターを作り上げていくうえでの、最終的な仕上げのようなものになりますもんね。

 

松也:声が入ることで命が入りますからね。そういった意味では、声の重要さというのは、何を演ずるよりも大切なことだと感じます。

 

 

ーー前作の映画『モアナと伝説の海』のアフレコ現場と比べての違いなどはありましたか?

 

松也:『モアナと伝説の海』の場合は、本国の声優さんが演じて出来上がった作品に僕たちが合わせるので、共通のニュアンスがあったり、秒数などもシビアに、「ここからここまで」と決まっていました。『プリキュア~』ではありがたいことに、スタッフの皆さんが僕の気持ちを汲んでくださって、とてもやりやすい環境を作っていただきました。

 

 

ーーそうだったのですね。2回の経験を通して、「声優ってやっぱり難しいな」と感じた部分があれば教えてください。

 

松也:今回は他のキャラクターの声も聴きながらやらせていただけたので感覚的にもやりやすかったんですけど、声優さんの現場というのは、必ずしも他のキャラクターとの掛け合いができるわけではないと思うんです。無音の中、時間が来たら喋りだして、その決まった秒数の中でセリフを言うことだってある。まったく相手がいない状況で演技をするというのは、やはり声優さんならではですし、大変なことだなと感じました。

 

 

ーーちなみに、松也さんは『モアナと伝説の海』以前から声優に興味があったとのことですが、興味を持つきっかけは何だったのでしょう?

 

松也:母がディズニーアニメーションを好きで、小さい頃から一緒に見ていたのが大きいですね。特に影響を受けたのは、山寺宏一さん。声優は、声色を変えればいいというものでもないと思うんですけど、前回のマウイでも、今回のジルベルスタインでも、僕はキャラクターの後ろに”尾上松也”が見えたくないという想いがあって。山寺さんはまさにそういった声優さん。名前を聞かなければわからないような声色のバリエーションとテクニックを持っていらっしゃるので、素晴らしいなと思いました。

 

 

ーー確かに。山寺さんの声のバリエーションの豊富さには驚かされますよね。とくに印象的だったキャラクターなどはいますか?

 

松也:(『アラジン』に登場する)ジーニーが大好きでずっとマネをしていました。ジーニーは歌う曲の中でもいろいろな声色を使い分けてますからね。あれが声優に興味を持った一番のきっかけかもしれません。

 

 

■「スイーツ界での地位に期待しています(笑)」

 

ーー今回のパティシエ役の他にも、ドラマ『さぼリーマン甘太朗』(2017)など、松也さんの「スイーツ好き」という一面が活かされたお仕事が増えてきているような気がします。

 

松也:いろいろなところで甘いものが好きだと公言していた結果が『さぼリーマン甘太朗』に繋がりました。今回も、たまたまスイーツがテーマになっている『プリキュア』ということでめぐり逢いを感じています。これがさらに後押しをしてくれることで、より“甘いもの=尾上松也”というイメージになればいいな、と。スイーツ界での地位が向上するんじゃないかと期待しています(笑)。

 

 

ーー(笑)。松也さんご自身で、スイーツを作られたりもするんですか?

 

松也:最近はほとんど食べる専門ですけど、一時期は好きが高じて自分で作っていた時期もありました。ベイクドチーズケーキやガトーショコラ、ババロアも。メロンショートケーキも作りましたけど、出来は酷かったですね(笑)。

 

 

ーー本格的ですね。その中でも得意なスイーツは?

 

松也:ベイクドチーズケーキですかね。みなさんに振舞ったら「ウソだ、こんなの作れるわけがない」と言われるくらい美味しくできました。我ながら、あれはお店に出せるレベルだったと思っています(笑)。

 

 

■歌舞伎に恩返しができたら・・

 

ーー松也さんはジャンルを問わず、幅広くお仕事をされていますが、今後の目標などはありますか?

 

松也:実は、そんなに考えはなくて。とにかく自分がやりたいと思ったことはやっていますし、やってみたいのと同時に、やったらどの位できるのかという好奇心もあります。それが結果的には、役者として、表現する人として、いろいろなジャンルの方と関わることによって自分の中の引き出しは確実に増えていくことになっているのかな、と。

そしていろいろなことに挑戦することで、自分の幅も広げて自分自身のことも少しでも多くの方に知っていただくのと同時に、歌舞伎に興味を持っていただけたらいいなということは、常に思っています。僕はここまで俳優として育てて貰ったのは歌舞伎のおかげだというのが根本にありますので、少しでも歌舞伎に恩返しができたらいいなと思いますね。

 

 

ーー最後に作品を観てくださるみなさんにメッセージをお願いします。

 

松也:仲間と共に戦うこの映画で、僕は仲間の大切さをとても感じました。ジルベルスタインは孤独に闘ってきた男ですが、この映画を通して仲間の力を認めざるおえないところがありましたし、僕自身も自分のプライベートや仕事をしていくうえで、仲間から受ける刺激は大きなエネルギーになっています。やはり人は一人だけでは生きていけないんだということを、映画を通じて感じていただけたら嬉しいなと思います。そして、『プリキュア』ファンの皆さんにも、ジルベルスタインというキャラクターが愛されるようになったらいいなと思います。

 

 

Photography=板橋淳一
Interview=Ameba

 

■尾上松也オフィシャルブログ

 

 

【作品情報】

 

 

<STORY>

スイーツの本場・パリで開催される世界パティシエコンテストに出場が決定したキラキラパティスリーメンバー! しかしシエルが急にスイーツづくりも、プリキュアの変身もうまくいかなくなり絶不調になってしまう!不安を抱えつつもコンテスト前夜祭のパーティーに向かういちかたちは個性的でひとくせありそうなパティシエ・ジャン=ピエール・ジルベルスタインと、妖精に似ている不思議な女の子・クックに出会う。

インパクトの強い2人にとまどういちかたちだったが、なんとジャン=ピエールはシエルの<パリ修行時代の師匠>だということが発覚する! 久しぶりの再開だが、「頼れるのは自分の力のみ!」という信念を持つジャン=ピエールは仲良くスイーツづくりをするシエルの姿に落胆する。落ち込むシエルを元気づけるため、いちかはジャン=ピエールに初めてつくってもらったというシエルの想い出のスイーツ【ミルフィーユ】をみんなでつくることをキラッとひらめく! しかし、次々とコンテスト出場のパティシエを襲う謎の巨大スイーツが出現し、さらにパリの街がスイーツになってしまい…!?はたしてパリの街もコンテストも、どうなってしまうのか?? そして天才パティシエは復活できるのか…??

 

声の出演:美山加恋 福原遥 村中知 藤田咲 森なな子 水瀬いのり かないみか / 悠木碧 

 

ゲスト声優:尾上松也

 

公式サイト:http://precure-movie.com/

 

 

『映画キラキラ☆プリキュアアラモード パリッと!想い出のミルフィーユ!』は、10月28日(土)ロードショー