こんにちは。

母の短歌にようこそ。

 

 

 

先日、長野県に行き、御射鹿池を訪れました。

ここは、東山魁夷の代表作の一つである『緑響く』のモチーフになった所だそうです。透明な水面に映し出される森林の美しさに感動すると共に、この幻想的な光景を見ていると、今にも真っ白な馬が木々の間から現れて来るような錯覚さえ覚えました。

 

 

 

 

さて、今日も前回に引き続き、母の「父との別れ」の歌を中心に紹介させて頂きます。

母の短歌ノートには父との別れについて詠んだものが沢山あり、どの歌をこのブログに載せて良いか分からないのですが、素人ながら私の心に響いたものをいくつか書かせて頂きます。

ほとんどの歌が古希の前後に詠まれたものだと思います。

 

 

 

ひとりとは

他には聞こゆる

音のなく

湯舟に落つる

蛇口の水滴

 

 

 

 

一人にても

生きねばならぬ

七草の

粥に入れんと

畑の菜を摘む

 

 

 

 

 

 

記憶の中の

人となりゆく

亡夫に向き

生くるしるしの

悩みを語る

 

 

 

 

亡き夫に

語るよすがと

宵ごとに

位置定まれる

星と向き合う

 

 

 

宵ごとに

位置定まれる

星ひとつ

君と向き合う

安らぎにおり

 

 

 

 

 

夫在りし

時も聞きたり

とめどなき

春雨の音を

夜半に目覚めて

 

 

 

 

 

 

咲き初めし

水仙と黄菊

備えたる

夫の遺影に

ほほえみを見る

 

 

 

 

 

 

連れ添う人

亡くせる我に

届き来し

ひらがな幼く

短き便り

 

 

「大好きなおばあちゃんが一人だから。」と娘もよく手紙を書いていました。

 

 

 

 

 

 

 

切れぎれに

白く立ちくる

波頭

九十九里浜は

君と来た浜

 

 

九十九里浜・・・千葉県の太平洋沿岸に面する砂浜海岸。

そう言えばありました!浜辺に二人が立つモノクロの写真。婚約時代の写真でした。

母がこの歌を詠んだのは70歳代。どの歌もそうですが、娘としては、胸がつまります。

 

 

今日も最後までお付き合い下さり有難うございました。

 

*御射鹿池とピカチュウの写真以外はお借りしたものを使わせて頂いております。