2024年までに国家安全条例制定 香港行政長官 | 中国情報ジャーナル ディープな香港・中国・台湾

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2024年までに国家安全条例制定 香港行政長官
取締拡大、統制強化へ 国安法で既に基本法骨抜き


香港政府トップの李家超行政長官は1月17日、国家への反逆行為を取り締まる香港基本法(ミニ憲法)23条を立法化する「国家安全条例」の制定を遅くとも2024年までに制定すると明らかにした。すでに香港国家安全維持法(国安法)が2020年6月末に制定され、同条例が施行されれば取り締まりの範囲が拡大し、統制がさらに厳しくなる。

 

▲2023年1月17日、香港で李家超行政長官は鄭雁雄・中央駐香港連絡弁公室(中連弁)主任と会談した


2023年内にコロナ制限撤廃

 

▲2023年1月17日に行われた香港紙「香港商報」との李家超香港行政長官の単独インタビュー


香港警察出身の李家超行政長官は、2019年の大規模な反政府デモでは治安機関トップの保安局長としてデモ阻止のために催涙ガスを発射したり、若者を多数逮捕。民主派の取り締まりを主導した強硬派として知られる。


1月17日の中国系香港紙「香港商報」との単独インタビュー(←動画)で李家超行政長官は、遅くとも2024年までには香港基本法23条を立法化するように法整備し、中国本土と香港の税関を通常状態に回復させ、今年中にマスク着用義務を含め、コロナ防疫制限を撤廃できるように目指すことを表明した。

 

▲香港警察出身で保安局長も歴任した民主派取り締まりの強硬派として知られる李家超行政長官


香港基本法23条を立法化する国家安全条例案の具体的内容としては、外国代理人を使った偽装組織、新型メディア、最新の科学技術を駆使してスパイ活動を行うことを厳しく監視し、阻止することで取り締まり拡大を行う。海外組織と結託したスパイ活動を阻止することに特化した香港版のスパイ防止法の条例化ということになり、少しでも当局から疑いを持たれれば拘束され、処罰される。


李行政長官は、国家安全リスク管理について「すでに保安局、司法局に研究リサーチを指示し、今年下半期には第二段階の法的整備を終えたい」とし、来年には第三段階(最終段階)を完成させ、施行する構えだ。とくに「国家安全に関わるフェイクニュースに関して偽装メディアを使って政治目的を達成するためにマネーロンダリングを行う行為を徹底阻止する内容」と強調している。

 

▲アジア金融フォーラムで講演する李家超行政長官

 

▲香港基本法の詳細な解説が印刷された小冊子(中国語版と英語版)
 

一国二制度は、一国の中で中国の共産主義、旧英国の民主主義の両制度を共存させる鄧小平氏が提案した制度で、1997年7月から返還後の50年間にわたり香港に外交と防衛を除く「高度な自治」を保障する。旧ポルトガル領だったマカオでも1999年12月以降、適応されている。その制度の根幹となっているのが香港基本法であり、マカオ基本法だ。
 

香港基本法23条は政治活動や言論の自由を制限する「国家安全条例」の制定を求めた条項だ。香港政府と立法会は、1997年の中国返還で失効した英国植民地時代の法律に代わる治安法制の制定と成立を義務付けられていて、23条自体が国家への反逆行為などを禁じる法整備を香港政府に求めている。

 


 

香港市民の猛烈な反発のために、これまで国家安全条例案は中途で阻止されてきたが、返還後25年前後を境に一国二制度の「二制度」よりも「一国」を最優先する中国政府が一挙に香港での反体制的な言動を取り締まる香港国家安全維持法(国安法)を20年に制定した。香港の民主派や英国を含む欧米各国は「(1984年の)英中共同声明を反故(ほご)にし、一国二制度を骨抜きにした」と猛反発。国安法施行後は、民主派は法規制で身動きが取れず、条例整備を醸成する環境を整え、条例案策定は秒読み段階になっていた。
 

「香港は、いまだ香港基本法23条が定める立法を完成させていない」(中国国務院香港マカオ事務弁公室)と認めており、香港政府は03年に「国家安全条例」案の制定を目指したが、50万人規模の大規模デモが起きたため断念し、董建華初代行政長官(当時)が任期途中で退任した経緯がある。

 

▲林鄭月娥行政長官(当時)は香港基本法の啓蒙に前向きだが、任期一期で退任。全国政治協商会議(政協)副主席にもならないままだ
 

2019年6月、「逃亡犯条例」案改正をめぐり200万人参加(主催者発表)の大規模デモが起こり、林鄭月娥行政長官(当時)が撤回表明。中国政府は20年6月に香港の国家安全維持法(国安法)を制定し、昨年10月、林鄭行政長官も国家安全条例を制定する意向を表明し、任期一期で退任している。

 

▲初代行政長官の董建華氏(右)は長年、全国政治協商会議(政協)副主席だったが、今年引退。梁振英元行政長官は政協副主席を続ける意向
 

香港では行政長官が国家安全条例案を出そうとすると、市民の反発で支持率が下がり、任期途中での退任や一期だけで退任するなど、行政長官がスケープゴードや捨て駒のようになって民主化を阻止、中国化されていく動きだ。

 

▲7月1日の香港返還記念式典での林鄭月娥行政長官(当時=右)

 

その代わり、行政長官は退任後、全国政治協商会議(政協)副主席という名誉ポストに就くことが多く、親中派である董建華氏、梁振英氏は同ポストに就いている。しかし、今年の全国政治協商会議では、長年、同ポストだった董建華氏は名簿から外れ、退任したばかりの林鄭月娥氏もリスト入りしていない。

 

▲香港の小学生の説明を聞く林鄭月娥行政長官(当時)

 

▲香港の小中学生たち。愛国教育が強化され、今後、「愛国者治港(愛国者が香港を治める)」がますます推進される

 

国家安全法制が整備されれば、中国政府が目指すのは、香港の青少年の憲法や基本法に対する教育を強化し、国家意識と愛国精神を高める愛国教育の推進だ。反中、反共の〝牙〟を抜き、中国への従順な忠誠心を取り込む青少年教育、市民教育で総仕上げを目指しているが、香港市民の面従腹背、他国への移民は増え続ける傾向が続く。

 

香港国家安全維持法をめぐる主な動き

【2019年】

6月9日 「逃亡犯条例」改正案をめぐり大規模な反政府デモ
8月30日 デモ参加者を扇動したなどの容疑で黄之鋒氏や周庭さんを逮捕(同日中に釈放)
11月24日 区議会選挙が行われ、民主派が圧勝。議席は8割超

【2020年】

6月30日 香港国家安全維持法施行
7月1日 デモの際に香港独立の旗などを所持した10人を国安法違反容疑で逮捕。同法施行後、初の逮捕
7月21日 抗議活動でデモのスローガン「光復香港 時代革命」を主張した区議会議員を国安法違反容疑で逮捕
7月29日 香港の独立を訴えた政治団体「学生動源」香港本部の元代表ら4人を国安法違反容疑で逮捕
8月1日 米国籍の民主活動家ら香港出身で外国在住の6人を国安法違反容疑で指名手配したことが明らかに
8月10日 民主派重鎮でリンゴ日報創業者の黎智英氏、周庭さんを国安法違反容疑で逮捕(12日までに釈放)
10月27日 米総領事館に亡命を求めようとした活動家を国安法違反容疑で逮捕
11月11日 中国全国人民代表大会の決定を受け、香港政府が民主派議員4人の資格?奪(はくだつ)。ほかの民主派議員15人も抗議の一斉辞職を表明
12月2日 無許可のデモを組織し参加者を扇動した罪で、周庭さん、黄之鋒氏らに実刑判決
12月11日 黎氏を国安法違反の罪で起訴

【2021年】

1月6日 元議員ら民主派53人を国安法違反の疑いで逮捕
2月28日 立法会選挙に向けた予備選に参加した民主派元議員ら47人を国安法違反の罪で起訴
3月30日 中国の全国人民代表大会常務委員会が民主派を排除する選挙制度改変案を可決。「愛国者」と認められなければ立候補できない仕組みに
4月16日 未許可デモの組織などの公安条例違反罪で黎氏に実刑判決
5月27日 香港の立法会が選挙制度改変の条例案を可決

6月4日 コーズウェイベイで例年行われてきた天安門事件の犠牲者を追悼するキャンドル集会がコロナ対策を理由に2年連続の中止

6月9日 大規模デモから2年が過ぎ、海外の香港人らは世界22の国・地域で抗議活動を展開

6月11日 国安法に基づき、映画に対する新たな検閲基準の導入を発表

6月12日 7ヶ月間服役していた民主活動家の周庭(アグネス・チョウ)氏が出所
9月19日 行政長官の選出などを担う選挙委員会の選挙
12月19日 香港立法会選挙

【2022年】

3月27日 香港行政長官選挙で
警察出身の李家超氏が当選、新行政長官に

6月30日 習近平中国国家主席夫婦が香港入り

7月1日 中国返還25周年の記念行事で習近平中国国家主席が講演

 

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【香港立法会選挙2016 連載インタビュー 香港「自治」の行方 第1回~第10回】

 

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