野党統一候補、困難か 台湾総統選
期限迫りギリギリの攻防
党利党略で各党思惑、まとまらず
2024年1月13日投開票の台湾総統選まで3カ月を切った。政権継続を狙う与党・民進党の頼清徳副総統(64)に対し、8年ぶりの政権交代を目指す最大野党・国民党の侯友宜・新北市長(66)、第三勢力となる台湾民衆党の柯文哲・前台北市長(64)、無所属の鴻海(ホンハイ)精密工業創業者・郭台銘氏(72)が野党統一候補を調整できないまま挑むならば政権批判票分散、漁夫の利を得る与党優勢の構図となりそうだ。
与党、漁夫の利なら優勢 中国の圧力、与党に有利
政権批判票分散なら野党不利
▲左から国民党の侯友宜氏、民進党の頼清徳氏、無所属の郭台銘氏、民衆党の柯文哲氏
現時点では、蔡英文政権の路線を引き継く与党・民進党の頼清徳氏が野党各党の候補より一歩リードを保っている。最大の焦点は、支持率が伸び悩む国民党の侯友宜氏が他の野党候補と共闘して野党統一候補が結成できるか。実現できれば一気に野党有利の形勢に逆転できるが各党の思惑があり、まとまらない。
台湾メディア「三立テレビ」が10月1~3日に行った最新世論調査結果によると、支持率で与党・民進党の頼清徳氏が30.9%とトップ。第3党・台湾民衆党の柯文哲氏が24.2%で続き、最大野党・国民党の侯友宜氏は17.8%で3位に甘んじている。無所属の郭台銘氏は11.6%で単独では勝機がない。
無所属での立候補に必要な署名の中央選挙委員会への提出期限が11月2日で郭陣営は提出準備を進める一方、表向きは国民党、民衆党との連携を模索しているが本気度は薄い。野党各党は連立して統一候補で臨めば優勢になるが、一筋縄ではいかず、各党の事情が違いすぎて困難だ。11月20~24日の中央選挙委員会への立候補届の提出が行われれば、野党分裂のまま総統選本番に突入することになる。
▲表向きは良好な関係を見せる国民党の侯友宜氏(左)と台湾民衆党の柯文哲氏
10月14日、国民党の侯陣営と民衆党の柯陣営が初めて幹部会談を行い、統一候補の選定方法について、野党連合支持者を有権者とする予備選で決める案が国民党側から出されたが、民衆党は世論調査優先を求めて難色。短期間に実現できる可能性は薄く、話し合いの継続だけは続けるスタンスだ。二回目の会談を17日に設定したが、双方の都合で流れ、難航している。
▲10月14日、国民党の侯友宜候補の選対委員長の金薄聡氏(左)と台湾民衆党の柯文哲選対委員長の黄珊珊氏(右)
国民党も民衆党も、統一候補を選ぶ場合、総統候補を相手に譲ることなく牽制ばかり。国民党は8年ぶりの政権奪還に向け、70年以上かけて培ってきた堅い地方組織票があり、総統選と同日に投開票される立法委員選(113議席=現有議席は民進党68、国民党38、民衆党5、時代力量3、台湾基進1)で巻き返しを狙う。
一方、民衆党は「野党候補で最多支持を獲得している」と柯氏人気をアピール。民進党と国民党の二大政党を批判して支持率を伸ばしてきた柯氏は両党に不満を持つ第三党として無党派中間層の獲得を目指しており、国民党とは政治信条が合わない。19年に発足した若い政党のため地方基盤が不安定で総統選での協力が立法委選にマイナスに働く懸念も透ける。
台湾の菱メディアによる総統選の最新世論調査(10月10~13日実施)では、民進党の頼氏が42.6%でトップ。民衆党の柯氏が24.9%、国民党の侯氏は22.3%、無所属の郭氏は5.9%。中国に対して統一でも独立でもない現状維持を望む無党派層は野党一本化が困難との雲行き、一国二制度を骨抜きにされた香港の中国化、台湾周辺での中国軍の度重なる軍事演習などの圧力を見て、与野党の差は開く傾向だ。
▲左から与党・民進党の頼清徳氏、台湾民衆党の柯文哲氏、国民党の侯友宜氏、無所属の郭台銘氏
2000年の総統選以来、民進党が政権を取る情勢は必ず敵対政党の分裂、弱体化による漁夫の利で勝機を確実にものにしてきた。今回も野党が一本化できず、政権批判票が分散されたままなら、これまで8年ごとに政権交代を繰り返してきた台湾では、中国の統一工作が強まる中、盤石な親米親日路線を継続するか、親中香港化の道を選ぶか、長期政権への警戒感、緊張感が高まりそうだ。
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