笑いがない。怒りがない。涙がない。

腸の中までに晴天を吸い込むような爆笑もなければ、

声を震わせるような激昂もない。

徹底的に去勢された人と平和から逃れてきた旅人は、

ここニューオーリンズで蘇った。

生臭い叫びがあった。みずみずしい混沌があった。

人間が人間であった。

声が声であった。

ずうっと人間でいくなら、魂に酔い、

魂で酔うことだ。魂が。

(開高健)

 

男にとって、最大の休息は、子供に還る時。