蜜のあわれ/室生犀星♪ | YARDBIRD SUITE

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~チャーリー・パーカーの思い出~

惚れた相手が猫だったらば、どれほどいいだろう。傍目を気にせずその名を呼び、頬をすり寄せる彼女を膝に乗せ、やさしく頭を撫でる。「とても気持ちがいいわ。もっと撫ぜて」「うん。ほんとにきみは可愛いね」「あら、そんなの当り前でしょ。だってあたしは猫なのよ」「そうだ、当たり前だ。きみは猫だから」「あたし、お腹が空いてるの」「ああ、ごめんごめん」「この餌は嫌いよ。このあいだ買ってくれた柔らかいのがいいの」「そうか。じゃあ明日買って来よう」「明日じゃなくていま食べたいの。買って来て」「でも、もう遅いし。雨も降ってるし」「あたしって可愛い?」「ああ、可愛いよ」「どれくらい可愛い?」「地球上で一番可愛い」「ほんとに?」「ほんとだよ」「じゃあ買って来て」「うーん」「そのかわり今夜は一緒に寝てあげるから」「ほんとに?」「寒いからおふとんに入りたいの」

 

室生犀星「蜜のあわれ」は映画化され、姉妹編のような「火の魚」はTVドラマになっている。どんな話かって?ともあれまずは読んで欲しい♪