「作物の多様性」って、すごく大切なものなんですって。

なぜなら、多様性によって、気候変動や菌病の流行があっても、
一部の作物は生き残れる可能性があるから。


例えば、海外の例ですが、インドとインドネシアで、水田がウイルスにやられた時、
6000種以上のお米のほとんどがダメになったのに、
うち一種だけが耐えてくれたそうです。
アイルランドでは、菌病でジャガイモがほぼ全滅した時は、
栽培されていたジャガイモは一種だけだったそうです。


「種子と食をめぐる世界と日本」資料より。

 

日本には、お米が300種以上ある。

かつては、800種を超えるお米の品種が登録されていたそうですが、
現在は、実際に作っているお米は、その半分以下になってる。

まだお百姓さんという家族農業が主流だった時代、
各地域で、その土地土地で栽培されていたお米は、
その土地の土や水、気候に適応するように、お百姓さんが作ってきました。

同じ種類のお米でも、その土地に適するように育ったお米は、
元の品種とは、また違った品種になるそうです。
お百姓さん達は何代にも渡って、その土地土地のお米の「種子」を守ってきました。


国がお米を守る 「種子法」

ところが、戦後の食糧難を経て、日本の食料自給率の向上と、
日本の主要作物を守る為に「種子法」が制定されました。
それまで、各地域でお百姓さん達が守ってきた「種子」を、
国が管理(各都道府県に専門機関を設け)守るようにしたのです。

お米の「種子」の品種・品質を守り伝えていく「種を作る作業」というのは専門知識を要し、
また、かなり大変な作業だそうで、4~10年がかりで仕上げていくそうです。
それを地域単位の機関に集約してやるわけですから、全ての品種を守る事は困難。

当然、品種が限られてきてしまうわけで・・・

とはいえ、見方を変えると、
「種子法」がある事によって、300種だけでも守られてきたという事。

ですが、その種子法は、平成30年4月1日、廃止されました。
国の理由(言い訳)は「民間(企業)が農業に参加し、農業を活性化させる為」

国が種子を守る事を放棄し民間企業に委ねると、どうなるか?
利益重視だから、守る品種は人気種だけになり、
「種を作る作業」は更に集約され、品種が減ります。

モンサントのような多国籍企業が、世界の種子会社を買収している事は
前回②で書きました。そして、日本のお米にも進出しています。


ちなみに、お米は「種子法」によって、その「種子」が守られてきましたが、
悲しい事に、ほとんどの野菜は・・・
今や、日本の野菜の種子の9割を海外の種子会社から輸入しているそうです。
それらは全てF1品種※だそうです。
 
※ハイブリッド種で、その品質は一代限りしか保たれません。
つまり、同じ品質の作物を作る為には毎回、種子会社から種を買うしかない。


日本のお米が、野菜と同じ運命をたどりかねない・・・。


多国籍企業が狙う日本の農業主権

既に日本では、多国籍企業(化学大手3社)が独自のブランド米を作っています。

日本モンサント・・・「とねのめぐみ」
住 友 化 学・・・「つくばSD」
三 井 化 学・・・「みつひかり」


これらは、穂の量が、従来のお米より大量に実る米だそうです。
コンビニのおにぎりや、外食チェーンで使用されているそうです。

ちなみに、これらはGMOではありません。F1だそうです。



↑従来のお米と「みつひかり」の穂の大きさ比較

 

これら化学大手3社の米の「種子」の権利は企業側にあります。
しかも、収穫された米は、全て企業側の所有物になるので、
農家が勝手に販売したり、誰かに分けてあげる事も許されません。

企業の指示通りの栽培方法、指示通りの農薬・肥料の使用が義務付けられます。
栽培期間中に監査も入ります。
農家は栽培を企業から委託されるのみで完全に管理される。
新しい農業のスタイルと言えば、そうなのかもしれないけど。

 

この3社の米屋は、「なんでうちの米を使わないのぉ~?」と、 

せっせと売り込んで歩いているらしいですけど、

こんな大きな穂の米を収穫するには、大型のコンバインが必要になってくる。
しかも、国が管理してきた種子に比べ、企業の種子は高額な為、
小規模農家には向いていません。 ~参考「日本のお米が消える」~

このような多国籍企業による 「農薬使用が前提の工業型農業」

ばかりになってしまったら・・・

・種子(野菜・穀物)の多様性が失われ、食糧危機に対応できない。

・除草剤や農薬とセットで大規模に生産し環境を大きく破壊する。

・その作物は、農薬まみれで栄養価が極めて低い。

・農地拡大で森林がどんどん失われて行き、農薬等の為に
 微生物のいない弱い土ばかりになって行く。


弱い土では、持続的な農業はできません。

 

世界中で「土」が減少している。
 

これはかなり深刻な状態らしく、国連は土壌の持続的な利用・保全を目指して、
2015年から2024年までを「国際土壌の10年」と定めました。

また、環境を大きく破壊してきた工業型農業を見直し、
国連は、2019年から2028年までを「家族農業の10年」と定めました。

今、世界はオーガニックに向けて動いています。
欧州はもちろんロシアも。お隣の韓国、中国も。
GMO大国である米国まで、スーパーにオーガニックが溢れているそうです。

これらは、農薬ありきの工業型農業が失敗であった事を世界が認め、
農業のあり方を考えなおしたという事です。


で、・・・日本は??

思い切り世界と逆行してるんですけど。

行き場を失った工業型(化学企業型と言おうか)農業に両手を広げて、
国民にほとんど内緒で勝手にウエルカムしちゃってるという・・・

キモ過ぎる。


ところで、「オーガニックは必ず無農薬というわけではない」と指摘する人がいますが、



 

オーガニックは(有機栽培)ですから、
「有機物」を微生物によって「無機物」に分解してもらわないと、
植物は養分(無機物)を吸収できません。
大切な微生物たちを殺さないよう、土壌環境を壊さないよう、
作物が養分を十分に吸収できるようにと、

可能な限り化学的なものを使用せずに栽培します。
農薬にも化学的でない天然由来のものがあります。
オーガニックが環境に優しいとは、そういう事です。


世界規模でオーガニックを見直し、様々な環境を守っていく方向に動いている。

アグロエコロジー、一筋の光。

私達の体の中の「地球」を守り、「私達が住む星」も守る事に繋がっていく。

これからの10年間で、世界はどう変わっていくのだろう?

私達日本人に出来る事って、何だろう・・・



~参考~

●「種子法?自分に関係なくない?」という人に伝えたい、
「米」の「タネ」の作られ方と種子法の影響
http://bigissue-online.jp/archives/1071425214.html

●種子法廃止で日本の「種子」が外資に乗っ取られる。
https://biz-journal.jp/2018/12/post_26051.html

●アグロエコロジーって?
https://earthjournal.jp/environment/7427/