野球とかスポーツって、何でもそうなんだけど、
良いピッチャーや
すごいバッターがいても、
周りの守備がへなちょこだと、
勝てないでしょ。
バレエもそうなんだよね。
いい舞台は全員で作る。
全員バレエね。
勝ち負けは関係ないけど。
たとえものすごく踊れる主役が
1人で頑張っても
そのほかの回りの出演者が
何の仕事もしなければ、
なんだか訳の分からない
つまらない舞台になってしまうのですよ。
「眠れる森の美女」の全幕バレエで
考えてみましょうね。
私のバレエ観がひっくり返された~牧阿佐美バレヱ団「眠れる森の美女」鑑賞
まずは、プロローグ。
王国の姫が誕生したお祝い。
乳母たちが
赤ちゃんを抱いて登場します。
あの赤ちゃんは、
言ってしまえば
ただの人形。
きれいなおべべを着させてもらっている
お顔がプラスチックのお人形。
でもね、
まずは、乳母が
ものすごい笑顔で、
大事そうにその人形を抱っこして、
「みんなに愛されている姫ですよ~
本当におかわいいんですぅ」
ってマイムをしながら登場して
そのお祝いの席に招待されている貴族達が
「私たちも見せて頂いて良いですか?」
「まあ、なんてかわいいんでしょう」
「こっちまで幸せになります~」
って、やって、
それを見ている王様は
満足そうな顔をしているし、
王妃も
身分的に乳母に任せているけど、
かわいくてしょうが無い
って愛情ダダ漏れのマイムをするし、
それを受けて、
妖精達も
かわいい姫のために、
色んな力を授けましょう、
と、踊りを踊ります。
ただの人形に向かって。
でも、それを見ている私たち観客は、
そこに寝ている小さな姫は
とーってもかわいくて、
みんなに愛されているんだなあ
と感じて
一緒に幸せな気持ちになるのです。
ただの人形なのに。
はたまた
悪の妖精カラボスについても。
姫の誕生のお祝いの席に
呼んでもらえなかったことを
めちゃくちゃ怒りながら登場します。
もし、登場したカラボスの
周りの人たちが
しれ~っとしていたら、
恐ろしいカラボスじゃ無くて、
ただのクレーマーおじさん(おばさん)
にしか見えないじゃん
でも、
「カラボスが怒ってお城に向かっています」
と知らせを受けたお城にいる人たちが、
オロオロしたり
恐怖におののき震えたりするので、
私たち観客は
「カラボスって、この国の人たちにとって
きっと怖い存在、
怒らせちゃいけない存在なのね」
と理解して、
一緒にハラハラドキドキするのです。
そして、1幕。
16歳になった姫がいよいよ登場します。
そりゃ、上手な人が
美しく、はつらつとした踊りをしますもん、
観客も、素敵~
って気持ちになります。
さらにそこでも、
登場前に期待に膨らんだまなざしでいる
お客達や、
姫が踊り出すと
うっとりとしながらサポートする
各国の王子
それに反応する
国王夫妻やお客達。
キラキラした姫の踊りが
その周りの反応によって、
ますます輝きを増すのです。
ちなみに、
どの舞台でも、
真ん中でソロで踊っているダンサーは、
とっても孤独なんだそうです。
そんなとき、
周りの人たちが
「いいぞー素敵ー」
「いけー、頑張れー」
なんて気持ちやマイムで
パワーを送ってあげると、
そのパワーを受け取って、
ますますいいパワーで踊れるそうです。
逆に、真ん中のダンサーが、
周りの登場人物に、
パワーを振りまいてくれるのを、
周りにいる人は感じます。
(私も実際にビンビンと感じました)
そういうものが相乗パワーになって
舞台の外(観客席)にまで
伝わってきて、
観客はそれを感じるのです。
わたしはそんな舞台がいい舞台だと思っています。
こんな感じの見方をすると、
バレエの舞台は
もっと楽しめるんじゃないかなぁ
と思います。