イギリスに来て、私はこれ程に偏食…というのが正しいのか、食の範囲が狭い…というのが正しいのか、世の中にある食に対して無知…というのが正しいのか分からんが、とにかく食べる物の種類の少なさの多い人間に、こんなに会った事がなかった。
食べて嫌いというよりも、食べたこともないが、食べることもないし、今の食の種類で満足です、困りませんし試そうとも思いません…という感覚じゃないかと見ていて思う。

私の17年以上付き合いのある友人も、恐ろしいまでの食音痴で、かつ典型的な超保守的食感覚を持つ人である。
先日もランチを食べに出掛けた。
カーライルだから、どこに行こうがメニューは同じであるも、ちょっと頑張っているカフェで、カーライル民が喜ぶ100年前から変わらぬメニューではあるが、洒落たアレンジをちょっと頑張ってます感が感じられるカフェである。
私はローストビーフバゲットサンドイッチを頼んだ。
他はハンバーガー、サンドイッチ、野菜スープとパン、フィッシュ&チップス…など、メニューを見ずとも頼めるいつもの内容ではあるも、カーライルにおいて、ローストビーフのバゲットを置いているカフェはあまり無い。
だから私はそれにした。

友人は「食べれるもんが無いわ…」とメニューを見ながら言った。
あんたが、このカフェ指定してんで…
店員を呼び「ソーセージとチップス(プライドポテトの意)ありませんか?」と聞いた。
店員さんは「聞いてきます」と言い去った。
結局、出来た。
出てきたのは、ただ素焼きしたソーセージにチップスだけ。
友人は「ソーセージしか食べへんからさ、私…」と言い、そのソースも何もない乾いた食べ物を完食した。
私のバゲットはブルーチーズとローストビーフ、飴色玉ねぎが挟んであり、美味しかった。

外食しても食べるものが結局同じであるが、しかし外食する偏食なイギリス人。
そのためか、どこのパブに行ってもメニューは100年前から同じである。
冒険したメニューを置いても、誰も頼まないのだと、パブのキッチンでシェフをしている人は全員そう言う。

知り合いのシェフに、パスタを得意とする人がいる。
ある時、働いていたパブである月だけ試しにイギリス人大好きメニュー「ラザニア」「パスタボロネーゼ」を外し、自分の得意な茄子のアラビアータ、プッタネスカ、ボンゴレビアンコを出したいと提案。
やってみたが、アラビアータが1回出ただけで、連日客から「ボロネーゼは無いんか?出来へんのか?」と言われまくり、カーライルでシェフをすることに飽き飽きしたという話がある。
だから、どこに行っても同じメニューで、イタリアンレストランに行ってさえ、ボンゴレもペスカトーレも、いわしのパスタもない。
何故なら、注文が入らないからである。

イタリアに旅行してもボロネーゼを食べる頑なさのイギリス人と、日本人同様、何でも味わえるイギリス人の差が、私はこの国において大きすぎる気がいつもする。
人気ブログランキングへ