尋常小学校3、4年のことだった。その日は天長節で
学校では式があった。おふくろはかすりの着物の上に、
新しい青い色の帯を締めてくれた。私は得意になって
学校へ行ったが、実はそれは母の帯だった。仲間はそれと
知って、「やーい、お前の帯は女の帯だ」とさんざん私を
いじめた。私は泣いて家に帰った。
そのとき以来、私は考えた。色に男の色と女の色の区別
があるのはおかしい。人間は自分の個性で行くべきで、
色とか格好とかに左右されるべきではない。今でもその
考えに変わりなく、いま私が赤いシャツを着たり、勝手な
格好をしているのも、こう言う考え方からである。こう
いった勇気・決断が持てなくてはいいデザインはできない。
ー本田宗一郎