「中庸」に説かれているように誠は天の道である。これを

 

誠にするは人の道である。天は人なくしてその功を成すこと

 

ができない。造化を翼けて万物を化育し、万世のために

 

太平を開くのは人間の本分でs流。そこで造化は独り人間を

 

以ってその「明」としている。人間は理性を以ってその

 

「明」としている。もはや人間は他の動物のように無明に

 

生きることはできない。衝動に支配されて盲目的に動くこと

 

は許されない。天びんの明徳を明らかにし、人間の進むべき

 

道について学ばねばやまぬ。

 

 

 

 

 

ー安岡正篤

 

 

 

 人間はどんな場合にでも、人の行為を何の疑いもなく、

 

そのままに受けることが、何よりも大切だと、私は思う。

 

 

 

 

 

 人間お生きて行く生涯の目的は、人様々である。お金を貯

 

めることの好きな人間は、何をおいてもお金を貯めるし、事

 

業家は事業の上の計画を錬るであろうし、科学者は科学の研

 

究に熱中する。

 

 それらのものの中にあって、私はどういう風の吹き回しか

 

自分の好きだと思う仕事をして、しかも毎日、同じ机の前に

 

坐ってその日の仕事を済ますことができる。そして、もし、

 

私に能力がありさえすれば、人の心を動かすようなことを書

 

くこともできる。何という幸福か、と思うのである。

 

 

 

 

 

 病気が治った時、必ず思い出す言葉がある。いつかテレビ

 

を見ていた時に、俳優の小沢昭一さんが言っていた「仕合わ

 

せなるは、ささやかなるが極上」という言葉だ。「そうだ。

 

ああ本当だ。全くその通りだ」と私は思う。

 

 

 

 

 

ー宇野千代

 尋常小学校3、4年のことだった。その日は天長節で

 

学校では式があった。おふくろはかすりの着物の上に、

 

新しい青い色の帯を締めてくれた。私は得意になって

 

学校へ行ったが、実はそれは母の帯だった。仲間はそれと

 

知って、「やーい、お前の帯は女の帯だ」とさんざん私を

 

いじめた。私は泣いて家に帰った。

 

 そのとき以来、私は考えた。色に男の色と女の色の区別

 

があるのはおかしい。人間は自分の個性で行くべきで、

 

色とか格好とかに左右されるべきではない。今でもその

 

考えに変わりなく、いま私が赤いシャツを着たり、勝手な

 

格好をしているのも、こう言う考え方からである。こう

 

いった勇気・決断が持てなくてはいいデザインはできない。

 

 

 

 

 

ー本田宗一郎

 自分で自分にかける暗示ほど、恐るべきものはありませ

 

ん。それは人生の道筋を変える力があるのです。

 

 

 

 

 お洒落な人は年を取らないと言われるのも、心が生き生き

 

している、いつも前婿であるところに、その理由を見つける

 

ことができます。

 

 お洒落に決まりはありません。あなた流のおしゃれを発見

 

して愉しむことです。

 

 

 

 

 

ー宇野千代

 

 

 「色即是空、空即是色」これが日本人の哲学のエッセンス

 

だ。だから、日本には曖昧さがあるんですよ。ノーかイエス

 

かでは言えないものを、日本人は理解できるんだ。曖昧さと

 

いうのは、ちょうどたそがれ時だね、1日のうちの昼であり

 

夜でもある。

 

 イエスかノーかで全てを割り切るというのでは世界が狭く

 

なる。曖昧さの効用は、行き詰まらないということです。

 

ほうぼうにつながって、どこにおいても発展の余地を持って

 

いるんです。

 

 技術屋にも曖昧さが必要な時もある。それを悪用したらい

 

かんが、うまく使うと人間は非常にスムーズになるんです

 

ね。

 

 

 

 

 

ー本田宗一郎