銭の戦争　最終回（11話）⑧韓国版とは違う結末！ある意味怖いラストだけど死なない

母の病院を訪れた富生は、母の枕元に座ると
「母さん、ホワイト化学、俺には取り戻せなかったよ。ごめんな。」と話し掛けた。
母は口を開き何か言おうとしていた。
母の口から、やっと出た言葉は「あ…り‥がとう。」
富生が十分に力を尽くしてくれたのであろう事を母は察していた。
そして「もう…いいから。」と言った。
富生と母は手を重ねあわせると、互いの目を見ながら微笑み合った。

その後、富生がホワイト化学へ行くと、
事務所では初めて作業服を着た光太郎が社員のみんなに「似合わないな光太郎君」と言って
冷やかされていた。
社員達に温かく迎え入れられて、光太郎もまた新しい人生を歩み出そうとしている。
その光景を半分開いた扉の間から覗きながら、富生は安心し微笑むと声は掛けずにそのまま立ち去った。

その後、富生は新しい会社に就職した未央を昼休みに呼び出した。
未央が来ると、新しい会社での調子はどうかと尋ね、未央が元気で頑張っている事を知った。
「色々、ありがとね。桃子ちゃんにもお礼、言っといて。」と富生が言うと、
未央はこれまでの富生の無茶ぶりを改めてボヤき「で、これからどうすんの？」と尋ねた。

「いやあ…さあ、ねぇ～金貸しは続けるかも。赤松とは違うやり方で。」と答えた富生。
そして周囲を見回して
「世の中にはさあ、たかだか借金くらいで死ぬバカがまだまだ大勢いるから。」と言う。
たまたまかもしれないが未央の視界にも、なんだか冴えない顔でしょぼくれている風な人が何人か入った。
「まぁ500円がいいなら、それもアリかもね。」と言うと、未央は「あっ！」と小さく叫び時計を見て
「休憩時間終わっちゃう」と言って急いで会社へ戻ろうとした。

富生は「未央。」と呼び止めると振り向いた未央をいきなり抱き締めた。
しばらく愛しそうに抱擁すると、富生は未央の両肩を持ち顔を見て「じゃあね」と言った。
一瞬、別れを告げられているのかと思った未央は「えっ？」と声を洩らすが
「ほら、仕事！」と富生に言われ
「今夜は私が美味しいもの作るから３人でお祝いしよ。ねっ！」と約束を取りつけようとする。
でも、富生は、それには何も答えずに「ほら、行かないと遅れるよ。」と未央を促すのだった。

そう言われて頷き10歩ほど、歩き出したところで、彼の目に別れの気配が漂っていたような気持ちに囚われ
未央が振り向くと、もうそこには富生はいなかった。

不安にかられ未央がその日、会社が引けてから慌てて家へ帰り、慌てて富生の部屋を明けると、
そこに彼の私物はなく綺麗に片付いていた。

しばし茫然とした後、追ってきた洋が「未央…」と声を掛けると
「酷いよ！こんなの。いきなりいなくなるなんて」と怒り出した。

洋は「白石君はようやく色んな事から自由になれたんだ。喜んであげよう。」と言う。
すねた顔のままの未央は、洋が「御飯もうすぐ出来るから」と台所へ去ってから、
机の上に置かれたあのスタンプノートとスタンプを見つける。
ノートは最後のページまでスタンプで埋め尽くされており、
最後に「ありがとう！」の文字と500円玉をかたどった絵が書き込まれていた。
未央はそのノートを胸に抱いて声を上げて泣いた。

その夜、富生は父が死んだ場所で夜を明かすと、
持って来た花束を、父が発見された場所に供え、父が死ぬために削って尖らせたキャッシュカードの残骸を、
朝陽に輝く海へ向かって投げ捨てた。

その数時間後、紅谷は行きつけの喫茶店て富生から預かったと言う封筒を、
その喫茶店のウエイトレスから受け取った。
中には現金が19万円入っていた。
いつか紅谷が無期限で富生に貸した10万は「倍にして返せ」と言っておいたから
１万円足りないな…と紅谷が考えていると、
中に「残りの1万はまだ借りときます。」という富生の手紙が入っていた。
紅谷はそれを読んで思わず笑みを零す。

留置所の中の赤松は寝転びながら、まだまだ懲りていないという顔付きをしており、
梢はバリバリと会社経営の仕事に励んでいた。
未央は貯金箱代わりにしている空き瓶に500円玉を入れて微笑む。

富生は鞄ひとつを持ち、何処かへ旅立って行こうとしている。
ふと歩みを止めて、ポケットから一万円札を出すと、それを太陽の光に翳して見た。

そして、どれくらいの時が過ぎただろうか？
富生は、赤松のあれにそっくりな隠し金庫を持ち、
その中に、やはり赤松と同じように２０億ほともあろうかという大金を貯めて
赤松と同じように札の匂いを嗅いでうっとりとしていた。

銭の戦争　最終回（11話）　終わり――。

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