このドラマを批判する方がいるのは私めも承知しています…テーマがテーマだけに。
とかく、このブログでは私めが演者の演技を賞賛することが多いので、そのドラマが描くテーマはないがしろみたいにとられている部分もあるかもしれません…
…なので、今回は演技のこともさることながら、私めがこのドラマをどう捉えているかをじっくりと書きたいと思います。
フジテレビ 木曜22時
「それでも、生きてゆく」第8話
主演…瑛太
脚本…坂元裕二
演出…宮本理江子
文哉(風間俊介)が真岐(佐藤江梨子)に「あんたなんて生まれて来なければ良かったのよ」と言われたのに逆上…
髪をつかんで頭をぶつけたために真岐は命はとりとめたものの昏睡状態になってしまいました。
文哉に会うために…
父親の駿輔(時任三郎)も、
妹を殺された洋貴(瑛太)、耕平(田中圭)兄弟も訪れる
まさに直前に起きてしまったために…
せっかく文哉の更正を信じて雇っていたのに、娘を生きる屍にされた草間(小野武彦)も…
再び息子が過ちを犯してしまった駿輔も…
その草間と同じ被害者家族同士となった深見兄弟も、病院で一堂に会することになります。
自分の娘を酷い目にあわせた男の父親に対して、草間は罵らず、平静で対応し、駿輔の分まで食べ物を買ってきたりします…
これまでにもこのドラマには度々こういうシチュエーションが出てきましたが…
加害者側と被害者側が直接に向き合ったらどんなことが起きるのか…
そんな通常ならなかなか起こり得ないことを、このドラマは残酷なまでに向き合わせ、そんな時お互いどんな言動をするのかを突き詰めて描いているのです…
こんなこと実際にはありえない…と言うこともできるし、
現実にそういう立場の人もいるのに軽々しく扱うとは不謹慎だ、悪趣味だ、と言うこともできます。
しかし、そんな扱いづらいテーマであえてありえないことを描き、人間の奥底に迫ろうとする気概を私めは、このドラマに強く感じます。
そしてそのためには、わざとらしい演技ではなく、リアルな人間のありようを演じうる実力派のキャストを集めなければならなかった…
これだけのきわどいテーマですから余程の実力者でなければ、残酷なシリアスファンタジーとも言うべき、このドラマの世界は構築できないのです。
この場合、ファンタジーという言葉はふさわしくないでしょう…
しかし、現実ではありえない状況でも、加害者側と被害者側が歩み寄り、相手を理解し、相手を愛そうとすらする…
極限で人間にはこんな感情が生まれるかもしれない…痛みと癒し…それはファンタジーではないかと思うのです…余りにシリアスな…
そんな難しい課題にこのドラマの出演者たちは、毎回果敢に挑み、演じきっています。
中でもスゴいのが文哉に殺された少女の母親響子役の大竹しのぶ。
今回は遂に文哉と直接対面することになりました…
少年院から出てきた加害者と被害者の母親が会うなんて、現実にはそうあることではありません…
しかし、そんなことが起きたらどうなるか…
静かに対応しはじめてから爆発し罵倒するまでの、大竹の演技は圧巻でした。
冷ややかな狂気でそれに対峙する風間俊介も、よくぞという演技。
しかし、この文哉をこうまでしてしまったのは何なのか…依然として気になります。
お前のせいでまた…と双葉(満島ひかり)に言った言葉の裏には何があるのでしょう…
次回は遂に文哉と洋貴が向き合うことになるようです…
誰からも何も言われない場所に二人で行きたい…という痛切な洋貴の双葉への告白が胸に響きました。
また、これまで温和に駿輔に接していた草間が、駿輔に娘の双葉が近づくのを見て豹変…
娘を返してくれ…と駿輔につかみかかるのも、このために小野武彦を起用したと思えるほど、はまりの演技でした。
人間の抑えた感情とは、ちょっとしたきっかけで爆発するんですよね…
今回の評価は…