このドラマって堤幸彦が演出する回とそうでない回がやはり違うんですよね。力量の差というか…
今回は特にそれを感じましたね。
脚本も良かったですが、演出で更に面白くするテクニックが隅々に見受けられました。
TBS 木曜21時
「ヤメゴク~ヤクザやめて頂きます~」第9話
主演…大島優子
脚本…櫻井武晴
演出…堤幸彦
まず今回堤演出で感心したのは画面の色構成。
組ぐるみ足抜けしようとする水田(金すんら)率いる水千組がみな黒。
その水田をつぶしにかかる兄弟分の入山(中野英雄)率いる浅間組が赤、同じく青峰(長江秀和)率いる武尊組が青、
この3者が争うところへ乗り込む麦秋(大島優子)が黒ずくめ、そして裏切りかけた水田を庇って盾になる橘(遠藤憲一)は白ずくめ。
まるで黒澤明の映画を見るような乱闘シーンのワクワク感、
そして、水田と麦秋はどちらも血のつながりのない橘の子という皮肉を、鮮やかに描いた白と黒の対照。
ハッタリのきいた演出がドラマチックな展開を盛り上げました。
その他、一つ一つはあげませんがカメラアングルが堤幸彦らしい凝り方をしているカットが随所に見受けられました。
麦秋の3年間は何だったのか?という辛辣な現実の重さを、小さい体で受け止める過酷さを大島優子が歯をくいしばって演じていて…
それは痛ましくも切ないものでした。
母親(名取裕子)ももうちょっと前に言えなかったんですかね。
そして、たぶんそうだろうなと思っていた水田組お抱えの顔を見せないディーラーは、やはり佐野(勝地涼)でした。
佐野は最後に大金をつぎこませて大損失を与えようとしているようです。
麦秋の肩をつかみながら意味深な話をするシーンは、佐野という男の無気味さをよく出していて勝地涼出色の演技でした。
橘の兄貴分役で石橋蓮司が出てましたが、中野英雄といい、この人といい、ホントにヤクザの役がよく似合いますね。
今まであまり触れてませんでしたが、ふざけるところとシリアスなところのバランスをよく心得ている北村一輝と田中哲司の好助演も作品のクオリティーを上げるのに大きな貢献をしています。
おそらく録画率の高い作品なんでしょうが、視聴率をそのまま評価とされてしまうのは残念でなりません。
見てもいない人ほど平気で批判したりしますからね。
今回の評価は…