私めは生前は立川談志の落語が正直あまり好きではありませんでした。
皮肉な芸風でなかなか素直に落語を話してくれないようなところがありましたからね。
しかし、不思議なもので亡くなって、改めていろいろ見てみると、あ~やはりスゴい落語家だったんだな…
だったら生きている内にもっと見ておくんだったなと悔やんだのです。
…で、その喪失感を埋めるように、これまで聞いたことのない弟子の志の輔や志らくの落語を聞くようになりました。
志の輔も志らくも、このドラマの主人公の談春も今や独演会のチケットがなかなか手に入らない落語界きっての人気者です。
志の輔や志らくの落語を聞いて私めは正直驚きました。彼らの落語の中に談志がしっかりと生き続けていたからです。
談春の落語はまだ聞いたことはありませんが、恐らく彼の落語もそうなのでしょう。
3人のタイプは違うのになぜ談志の芸は彼らそれぞれの中に脈々と生き続けているのか…
前置きが長くなりましたが、このドラマを見てそれがとても良く分かった気がします。
12月28日 TBS 21時~
「赤めだか」
主演…二宮和也
脚本…八津弘幸
演出…タカハタ秀太
まず、このドラマで素晴らしかったのは、ビートたけしという強烈な個性が演じているのに、ドラマが進むにつれ、たけしが談志に見えてきたということです。
談志と親交が深かったたけしだからこそなんでしょうが、ちょっとした仕草を真似ていて、それが変にモノマネめいてなく…
たけしが身近で見続けていた談志を自然と自分の中に取り込んで演じているようでした。
そんなたけしの談志と、二宮和也はじめ、香川照之、北村有起哉、新井浩文、濱田岳、宮川大輔ら芸達者な弟子たちとで繰り広げられる師弟愛の物語は、
いかにも談志らしいぶっきらぼうで口うるさいが細やかな愛情と、ベタつかない粋さに溢れたエピソードばかりで…
師弟愛というテーマでは傑出したドラマになっていました。
談志という人をよく知らなかった人も、あ~こういう人だったのかとよく分かったと思います。
談志への良い追悼になりました。
二つ目のお披露目の舞台で、弟子たちに「とりあえず売れてこい!」と声をかけるくだりには心打たれました。
二宮和也は普通の少年が落語の世界にのめりこんでいくさまを、丹念に演じてやはりこの人うまいな~と感心しましたし、
もっとすごいのは入門の時から天才的に上手かったという志らくの落語を再現してみせた濱田岳の演技で、
この人のポテンシャルの高さに改めて舌を巻きました。
ダンカン役の柄本時生が、たけし演じる談志にたけしのところへ行きたいとお願いするシーンは不思議な感じで、洒落てましたね。
あと、リリー・フランキーがいかにも嫌味な評論家を憎々しく演じていて、こういう役をやらせると上手いな~とこちらも感心しました。
録画したものをこの先もたまに見て談志を偲ぶドラマにしたいと思います。
このドラマの評価は…