あまた存在するドラマの脚本家の中で、山田太一と並んで私めが特別にリスペクトしているのが向田邦子です。
書籍化されたシナリオやエッセイ、小説はほとんどすべて読んでいますし、
あの後、生きて元気だったらどんなドラマを書いてくれたんだろう?
きっと今のテレビ界には幻滅して書かなかったかもな?
…などといろいろ思わずにはいられない人なのです。
今回は、そんな向田邦子と黒柳徹子の交友を丁寧に描いた回でした。
このドラマの脚本の中園ミホもきっと向田邦子を敬愛しているんだろうなと分かる、秀逸な脚本でした。
NHK 土曜20時15分
「トットてれび」第5話
主演…満島ひかり
脚本…中園ミホ
演出…津田温子
向田邦子のエッセイにも出てくる黒柳徹子と留守番電話のエピソード。
最初はそれをコミカルに描きながら、ラストには飛行機事故に遭ってるとは知らずに旅行に行っているという留守番電話に吹き込むという切なく悲しいエピソードで締める…
留守番電話に集約し時制を飛ばして描いたのが成功していました。
回を追って満島ひかりの徹子っぷりもどんどん似てきているので、
人の迷惑をかえりみず、スタジオの公衆電話から何度も何度も留守番電話にしゃべり続けるところとか、いかにもな感じで楽しいシーンになりました。
ただ、今回のように時制を飛ばすと満島ひかりは童顔なので歳を取ってるのが分かりにくいのが難でした。
亡くなったあと、向田のマンションを見に行くシーンとか、もうちょっと老けてほしいんですよね。
一方、初めて登場した時からたたずまいが合ってるな~と好配役の向田役のミムラ。
今回は恋人の写真家の死や乳がんといった向田の影の部分もさりげなく描かれていて、
そんな時のふと見せる憂い顔がミムラは上手いなと思いました。
黒柳への接し方、森繁(吉田鋼太郎)への接し方、それぞれに魅力的で、惜しむらくは才気煥発なテキパキさがもう少しあればいいなとは思いました。
30分という短い尺で、ぎゅっと凝縮した短編小説の佳作のような回でした。
次回は同じように今度は渥美清(中村獅童) との交友を描くようで楽しみです。
今回の評価は…