「腐女子…」はゲイであることに葛藤し苦悩する少年のヒリヒリした痛みを感じる作品であったのに対して、
こちらはゲイであることを受けいれて生きてきた中年の二人が、得がたいパートナーを得て幸せを感じる姿が描かれ、中年ならではの人生の深さをしみじみ感じさせてくれる作品でした。
テレビ東京 金曜24時12分
「きのう何食べた?」最終回
主演…西島秀俊、内野聖陽
脚本…安達奈緒子
演出…中江和仁
正月、シロさん(西島秀俊)の実家に行き、両親と会うことになったケンジ(内野聖陽)。
スーツにネクタイ姿でガチガチのケンジ。
どうなることやら…でしたが、シロさんと母親(梶芽衣子)が台所に行き、二人きりになったケンジとシロさんの父親(田山涼成)がシロさんの学生の頃の写真を見るシーンが良かったですね。
どんな子だったのかを父親に聞きながら、ケンジは少年時代のシロさんの思いを憶測し、両親にせめて喜んでもらおうと一生懸命に勉強し、弁護士になったんじゅないか…という。
一人で生きていくために美容師になったケンジだからこそ分かるんですね。
父親もそうだったのかと聞き入っていて、シロさんを理解してるケンジならではの言葉に、良いパートナーを得たなと思ったに違いありません。
出された料理の美味しさについついいつものオネェ口調の感想を言ったら、母親が目を丸くして部屋を出て行ってしまうのも笑いました。
母親にとって、ゲイカップルはどちらかが女装してるものと思っていたようで、ひげ面のケンジは男でシロさんが女と思ってしまっていたら、オネェ口調になりシロさんが女装ではないと安心したらしいのです。
微笑ましい親心でしたね。
この両親もだんだんに二人のことを理解していくんでしょう。
そして、最終回の白眉はシロさんのケンジへのこのセリフ。
「食いもん、油と糖を控えてさ、薄味にして、腹八分目で…長生きしような、俺たち」
まさに料理を通して二人の関係をつづってきたこのドラマならではの愛の言葉。
中年ゲイカップルならではの言葉で、しみじみと胸を打たれました。
今まで嫌がっていた二人でカフェへ行くのも、シロさんはやっと応じてくれました。
「お前が幸せを感じるなら、これからはカフェぐらい何度でも付き合うよ!」
このセリフもケンジへの殺し文句でしたね。
ラストのアドリブまじりの料理シーンまで、二人きりの演技をたっぷり見せてくれた最終回でした。
「幸せ」とは何かを最後まで考えさせてくれる愛すべき傑作でした。
最終回の評価は…