脚本の宮藤官九郎や磯山プロデューサーがこの作品で最も言いたかったのは最終回のミュージカルシーンでみんなが歌った「寛容になりましょう~」ってことなんでしょうね。
私めもつくづく日頃痛感していることで、昭和も令和も良し悪しありますが、結局は寛容であってほしいし、少々のことは大目に見てほしいと強く思います。
TBS 金曜22時
「不適切にもほどがある!」最終回
主演…阿部サダヲ
脚本…宮藤官九郎
演出…金子文紀
このドラマをどう終わらせるのか、とても気になっていましたが、なるほどそう終わらせたか…とニヤリとさせられる終わり方でした。
スペシャルドラマか、劇場版で続きを見られる含みを残した終わり方でしたね。
さて、最終回ではバス型タイムマシン最後の一往復となり、市郎(阿部サダヲ)はパワハラの汚名を着せられ傷心の渚(仲里依紗)を伴い、昭和に戻ります。
「すきゃんだる」でナポリタンを食べながら、純子(河合優実)は渚を励ましてくれるのですが、この母娘のシーンにはグッと来ましたね。
大丈夫だよ、渚は…とつい呼び捨てにされ、渚は幼い頃に純子に連れられ、この店でナポリタンを食べたことを思い出します。
口のまわりについたケチャップを渚の名前の由来となったキョンキョンの「渚のはいから人魚」を歌いながら拭ってもらう…そんな微笑ましい場面も、もう令和では純子はいないことを思うとグッと来てしまうのでした。
昭和に戻り、職場にも復帰した市郎は、令和でアップデートされたために、昭和の不寛容さに違和感を覚えるようになってしまっています。
例えば校長(赤堀雅秋)の女装趣味がバレたら保護者が学校に押しかけ、校長に辞職を迫ります。
市郎は多様性が認められてきた令和を経験してきたので、個人的な趣味の何が悪いのかと不思議になり、憤りすら覚えます。
教師たちの飲み会でお酌をさせられる女性教師にもそんなことする必要無いと言うし、
野球部ではケツバットをする鬼の小川だったのが、仏の小川になり水もマメに補給しろと言うのでした。
小川の変わりようがおかしかったですね。
卒業式で生徒たちに未来は楽しいぞ!と語って聞かせるのもタイムスリップした市郎ならではの言葉でした。
市郎の粋なはからいというか、いたずらインプットで渚と秋津(磯村勇斗)はマッチングアプリでお互い相性がめちゃくちゃいいってことになり、付き合うことに。
マッチ先輩と純子の恋は子どもたちに引き継がれたってわけですね。
キヨシ(坂元愛登)が家に足しげく通って
仲良くなった不登校の佐高くんは、何かカギになる人物なんだろうなと思っていましたが、
令和では富豪になっていて、キヨシのためになりたいと井上(三宅弘城)に資金提供してくれて、タイムマシンならぬタイムトンネルを開発させてくれたのでした。
大人になった佐高役は元男闘呼組の成田昭次で痩せこけていて誰だか分かりませんでした。
しかし、キヨシ少年が別れぎわに佐高に語った学校とはどんな所かの持論は、すごく説得力がありましたね。
このドラマはかなり強いメッセージ性がありながら、それをエンタメとしてうまくコーティングして、楽しめてかつ考えさせられて…というクドカンの到達点とも呼ぶべき傑作になりました。
最終回の評価は…8