父親に本音を話せた夏…「海のはじまり」第8話 | 連ドラについてじっくり語るブログ

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記事の遅れを取り戻すために2話まとめての記事を続けていますが、今週月曜日に放送されたのは9話ではなく、特別編だったので8話単独の記事にします。





フジテレビ  月曜21時(8/19放送分)

「海のはじまり」第8話


主演…目黒蓮

脚本…生方美久

演出…風間太樹




お約束の冒頭シーン。今回は大学時代の水季(古川琴音)と夏(目黒蓮)。




夏が父親譲りのカメラで水季を撮っています。これまでも度々、夏がフィルムで現像する昔ながらのカメラにこだわっているさまは描かれていましたが、父親からもらった物だったのは初耳でした。

聞き漏らしてましたかね??




今、熱心に夏が海を撮っているのは、レンズを通して、海の中に水季を見ているんだろうなというのがより強く感じられました。




海の「父親」になるという自覚が強まりつつある夏は、3歳の時に両親が離婚して以来会っていない父親の基春(田中哲司)に会ってみたくなり、連絡をとります。




海を連れて喫茶店で待ち合わせると、そこに基春が現れます。

父親らしいことを夏にしてあげてない基春は、罪悪感や後ろめたさがあるのか、およそ感動的な再会とはかけ離れた態度で接してきます。




夏を怒らせたその言動をネットニュースなどではクズな父親最低!とか視聴者からは怒りの声が、とか取り上げられてましたが、





私めはひねくれて、わざと相手を怒らせるようなことを言うタイプの人間を多く見てきたので、この父親もそうなんだろうなと思って見ていました。




大抵、そういう人に限って、根は繊細でとても優しいんですよね。

田中哲司はそういう複雑な性格の基春を、実に自然かつナイーブに演じていましたね。




夏を怒らせたことを悔やんだ基春は、夏が現れるであろう写真館に足を運び、伝言を頼んでいました。




夏と基春は再び、今度は2人きりで釣り堀で会って話をします。




ここからの一連の親子の会話は脚本、演出、演技の三位一体で作り上げた名シーンでしたね。




まずグッと来たのは、基春が幼い時の夏がどんな子だったかを語り、毎日変わるその顔や姿を残しておきたいとカメラを買ったことを話し、





夏が今も大事にしているそのカメラを渡したら、ファインダーをのぞき、大人になった夏を見て基春がついグッと来てしまうくだり。




夏がいとおしそうに海を撮っているように、基春も撮っていたんだろうなというのが容易に思い浮かべられて、冒頭からのフリがここにつながる実に巧みな脚本でした。




そして、カメラを夏に戻すと、ここはダメだと基春を釣る場所を変えるべく歩きだします。



歩く基春と、それを追いかける夏。

そこからの会話がまた良かったですね。

喫茶店に会った時と違い、言葉に毒が減った基春はよく父親になる気になったなと夏に言います。





俺だったら無理だ、責任感があるのは俺の子っぽくないなどと言う基春に、いつしか夏は本音を吐き出し始めるのです。




「面倒くさいことになったって思ったんです」

「おろしたと思ってたから、生きてたってわかってホッとしたけど、でもただ自分の罪悪感から解放されただけで」



背中を向けたまま「面倒くさいよな」と同調してくれる基春。



3年も付き合ってて結婚も考えていたのに、タイミングは最悪だったこと。



知らなかったことを責めてくる人もいたこと。



夏の本音が止まりません。

「隠されてたっていうのも被害者だけどな」

この基春みたいな言葉を夏に言えた人は実はいなかったんですよね。



みんな自分より悲しそうで、ツラそうで、それでいて優しいから何も言えなかった、




自分だって悲しいのに悲しそうにできなかった、




嫌いになって別れたわけじゃない人がそのまま1回も会えずに死んで、子どものことも病気も何も知らないまま死んで…




誰にも言えなかった本音を、長らく会っていなかった父親にだけは言えたという皮肉さ。

関わってない人だからこそ言えることってありますよね。




しんどくなったら連絡してこいと、やっと基春は父親らしいことを言ってくれます。




本音を話してくれたこと、自分がはけ口になれた喜びがあったんでしょうね。




なぜ子どもがいたのに別れたのかというデリケートな質問にも正直に答えてくれました。

子育てを趣味の1つみたいにしていた自分に気づいたから…って、この人らしい理由だなと。





誰もがちゃんとした親になれるわけではないんですよね。





私めは夏が帰った家で優しく迎えてくれる義父(林泰文)や母親(西田尚美)の笑顔がやけにウソくさく見えてしまいました。優しくていい人なんですけどね。





さて、父親になる覚悟ができた夏に比べて気がかりなのは弥生(有村架純)ですね。




海がつけているネックレスを鉄棒をやるなら外したほうが、と言ってあげたのに、夏がやめて!それは水季の遺灰が入ってるから…って言われた時の弥生の心境って…。




夏が海を認知したら渡すようにって言われてた水季からの手紙を朱音(大竹しのぶ)が出してきましたけど、その中に夏の恋人あてのものがあり、それは弥生に渡されました。何が書かれているのか気になりますね。




誰にも言えない本音を弥生も津野(池松壮亮)に吐き出せたらいいのに、と思ってしまいます。




さて、目黒蓮の体調不良が報じられましたが、この8話の演技とかはホントに演じきるのがしんどかったと思います。




田中哲司を相手にしっかり渡りあって、一歩も引かなかった好演に拍手をおくります。




8話の評価は…8